リリースで浮く軸足について①

Twitterでちょっとした物議を醸した、この件(大谷翔平投手のリリースモーションで軸足が浮く事は悪癖なのかどうか?それがトミージョン手術の原因になったのかどうか?という議論)について簡単な私見を述べたいと思います。誰かの意見を否定するものでも無ければ自分の意見こそが正しいもので有るという主張ではありません。

「リリースの動作で軸足(右投げの投手で言うなら右足です)が浮く事についての是非」

これが主題なのですが、軸足が浮いているかどうかが問題なのではなく、軸足が浮くまでの過程だったり、軸足が浮いている時の動作によって見解が変わるのではないのか?というのが個人的に思うところでして、谷田成吾さんが上げてくださっている画像を見ていただくとわかりやすいと思うのですが、この画像に載っているのは反軸脚(右投手なら左脚)の膝が180度付近まで伸びている投手がほとんどです。

これがどういう事なのかというと、「軸脚の伸展+内旋→重心移動」この連動が上手く機能した結果、反軸脚側に強い力がかかってしまうので膝を伸ばしてブレーキをかける必要が有るのだと思われます。

ピッチング動作における下半身の連動を雑に説明しますと(モデルはバーランダー投手です)、

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右脚をマウンドプレートに残す動きが起こります。

画像2

頭と上体がマウンドプレート側に寄り、右の股関節に体重がかかります。この時、右脚には「収縮したバネ」のような力が加わります。右足で地面を踏み込む事で太ももの骨(大腿骨)が股関節を押し、その反力が地面へと返っていきます。

画像3

地面に返っていった反力を利用しながら本塁側へステップします。いわゆる「地面反力」だと思います。

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右脚が強く伸びます。

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ここで左足が着地します。この時、右の股関節を内に捻るような力(内旋)も加わります。

キャプチャ56

右脚が着地する時のエネルギー(ステップのスピードが加わった体重)が着地の反動となり、左の股関節へと返っていきます。2度目の「地面反力」です。

画像7

ここまでは頭の位置が右股関節の上に有ります。

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「地面反力」によって骨盤が正面を向きます。

画像9

当たり前ですが、股関節→骨盤(仙骨+寛骨)→脊柱→胸郭の順で繋がっているので、股関節が動いて骨盤が回れば胸郭も回ります。肩甲骨が閉じられると胸郭にくっつくので胸郭が回れば上腕骨が振られることになります。

画像10

画像11

右脚が本塁側へ進めば進むほど、左膝が張られてきます。

以上が、ピッチングにおける下半身の動作です。右脚が本塁側へ進む事で左足が着地し、重心が前へと移動します。そこから更に右脚が前へ行こうとすると今度は左膝が張っていきます。

キャプチャ

リリースモーションでの両膝に注目してほしいのですが、右膝(軸脚の膝)の裏の角度が約110度、左膝(ステップ脚の膝)の裏は約180度という感じで合計では300°弱になっています。ちなみに軸足も浮いてますね。

エンジェルス入り後の大谷翔平投手を見てみますと

画像15

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両膝裏の角度は合計250度弱という感じでしょうか。

両膝の角度が合計で300度付近であるのが望ましいとされているそうで、これが200度に近いと重心が前に寄りすぎて腕の振り幅が無くなり、上体頼みの投げ方になるそうです。

白人、黒人投手に比べて左膝の張り方が甘いことからも軸足が浮いている理由は別に有るのではないかと仮定しています。

ちなみに軸足がマウンドに接地していた頃

画像15

いずれの写真も撮影角度が違うので参考程度に見て欲しいのですが、少なくともエンジェルス入りした後よりは300度に近い角度が出てそうですよね。軸足が浮くようになるまでは下半身を上手く使えていたと言えそうです。動作の質が落ちる事は故障に直結すると言われていますし、動作が変わったことによる影響(軸足が浮くようになった影響)はあったと捉えるのが自然なところではないでしょうか。

この話題については今後も追求して行きたいと思います。

参考文献:Baseball Clinic 2020年2月号 [投球フォーム評価法 P21]

写真、画像の引用元



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