「baseよしもと」とGAGの思い出
コロナの影響下で自宅でYouTubeを見る時間が増えた今、改めてお笑い芸人の巧みさに気付かされる。
そんな中たどり着いたのが東京よしもと所属、GAGのYouTubeチャンネルだ。
GAGの公式チャンネルにある動画、
『僕達は大阪でお笑いを教わったんだ〜baseよしもと編〜』を見て、完全に掴まれた。
私は当時baseよしもとに通うファンの1人だった。
baseよしもとは、かつての大阪若手芸人がしのぎを削る、名前の通り地下に存在したよしもとの小劇場だ。(現在はNMB48の専用劇場となっている。キャパは250人くらい。)
私が通っていた当時はワラbシステムという劇場独自の勝ち上がりシステムがあり、
ジャルジャル、かまいたち、天竺鼠
スマイル、藤崎マーケット、スーパーマラドーナ、モンスターエンジン…
そしてGAG少年楽団(現:GAG)といった合計15組が一軍メンバーとして出演していた。
当初私は藤崎マーケットの熱心なファンであったのだが、藤崎マーケットとGAGは芸歴が近いこともあって2組合同のライブを劇場で見る機会も多かった。
ここで述べたいのはGAGの特異さである。
コントやトークの端々から感じられる、ダサさ、人間味、そして哀愁…
GAGのコントは現実にいたらこの人絶対に影で色々言われてるタイプやろうな、
というキャラクターのオンパレードで
周りに合わせることが出来ない、分かりやすく変わった人と言われるような立ち回りのキャラクターがうけていた。
全てのコントにおいて一概に言える訳ではないが、コントの世界観の中で
唯一実況の立ち回りにいるのが福井さんであることが、GAGのコントが哀愁を帯びている要因かと思う。
ネタの制作者でもある福井さんのダサは、
GAG公式チャンネルでも存分に堪能することができる。
特にNSCというお笑い養成所で、
1番下のCクラスに在籍していた話はうっすら涙さえ出てくるダサさなのである。
社会人経験を経ての養成所での立ち回り、
良かれと思って西川のりお師匠に対して取った行動……などなど
グッと胸が締め付けられ
今にも雨が降りそうな、あの曇った大阪の空を思い出す。
(この話はぜひ、公式チャンネルで福井さんの口から聞いて欲しい…あの間合いとトーンはやっぱり格別です。)
ワラbシステム時のbaseよしもとは
ちょうど一昔前までバチバチに尖っていたヤンキー上がりの芸人と
ジャルジャル、銀シャリと言った安定した家庭環境を覗かせる、育ちの良いニュータイプの芸人
その両方が混ざり合った、割と異質な時代だったように思う。
そう考えると、あの中にいるGAGはハイソともヤンキー上がりともどちらとも言い難い、何というか良い意味で浮いている芸人だった。(宮戸さんが神戸大卒という飛び抜けて高学歴な点も含め。)
当時のbaseよしもとのレギュラーライブは二部構成になっていて、一部の寄席の間に必ず短いコーナーがあった。
コーナーはモノボケ、エピソードトーク、また大喜利などその時々で変わるが
そこで分かりやすくウケる芸人さんは、やはり当時ファンの中でも人気も高かったような気がする。
かまいたちの山内さん、天竺鼠の川原さんなんかは舞台上で何をしてもウケるような、そんな笑いの神が降りてきた瞬間が多々あった。
コーナーのGAGはというと
MCを任されたり何かと器用にこなす宮戸さん
一言で空気を良くも悪くも変える坂本さん
そしていつも何となく所在無さげな福井さん
まさしく三者三様の立ち回り。
ただ、当時の印象としては
コーナーで突出して爪痕を残すタイプの芸人では無かったようにも思えた。
そんな中でもどうにかこうにか奮闘する様子がやはり客席から見てもいてもおかしくて、
テレビでは見られない劇場クオリティのギャグや、内輪ノリなんかが大好きでたまらなかった。(福井さんのギャグ、劇場ではよく見たけど今もやってるのだろうか…)
そして、ここでどうしても書いておきたかったことがネタ前の出囃子と紹介VTRのことだ。
当時のbaseよしもとの芸人にはそれぞれ
出番を知らせる出囃子、それからbaseよしもとのワラbメンバー(一軍)だけに与えられる
コンビの特徴を模したオリジナルのロゴがあった。
このロゴについての思い入れも話せばかなり長くなってしまう……(芸人のロゴがプリントされた缶バッチと携帯クリーナーのガチャガチャは発売当初、早朝に買いに来ないと売り切れてしまうほどの人気っぷりだった。)
ライブでは一組ネタが終わる毎に一度暗転し、次の出番の出囃子とロゴや写真を用いた紹介VTRが流れる。
当時の出囃子はHi-STANDARDなどの、いわゆるメロコア系と言われるジャンルや
マキシマムザホルモンの楽曲など、舞台に出る際のテンションを高める曲が多かった中
GAGの出囃子はと言うと
ザ・コーラルの「Dreaming of You」
突然の洋楽、暗転中に劇場内に響くイントロの太いベース音
完全に異質だった。
ただ、この出囃子とサイケデリック風な紹介VTRは、当時中学生だった私にとって強烈に印象付けられた。
時が経ち私の興味はいつしかbaseよしもとから東京よしもと、渋谷無限大ホールの芸人へと移り変わっていく。
baseよしもとはその後一度幕を閉じ、地下を出て場所も新たに「5upよしもと」として再スタートする。
新しい世代が大阪のお笑いの最前線で切磋琢磨する
そんな最中GAG少年楽団は東京に進出するのだった。
彼らはその後2018年にコンビ名をGAGに改名するのだが、
私は"少年楽団"という、そのほんのちょっとのよく分からない嘘が
なんだか大阪っぽくて好きだったんだと、改名当時少しだけ寂しくなった
ほんの少しだけ。
ただ、活躍の場所が変わった今も
3人の絶妙なバランスは健在だ。
どことな〜く関西出身を匂わせる人間臭さがやっぱり好きだなぁなんて思ったりして、
あの頃を少し懐かしく思ったりしたのでした。
………………………………………………………
記憶はあのオロナミンCの炭酸のように
知らぬ間にどんどん蒸発してしまうし
あの当時の記録とか、10代の頃に見たものを少しでも残しておきたいなんて、今になって思ったりしている。
終わり
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