見出し画像

企画のスタート33

 アニメ制作工程で一般の方々が一番理解しにくいのがダビング作業ではないでしょうか。
作画とか撮影とかアフレコなどはわかりやすいのですが、ダビング作業は少人数でスタジオにこもる仕事なだけに、その重要さに比べてオモテに出にくいものがあります。今でこそ機材の進化もあり、アフレコもダビングも時間が短縮されてますが、「シティーハンター」の頃は30分アニメ1話につき、アフレコ4時間ダビング6時間、とかかかったものです。
 そのダビング作業とはアフレコ後の映像に、音楽や音響効果を加えるもの。アフレコによって、声優がキャラクターに命が吹き込んだ映像そのものに、さらに生気を与える作業…なんですが、上手く言えてないか。音楽や効果音を加えるだけでこんなにも映像がパワーを得るのか、ということを表現したいのですが。
 その音楽も事前の念密な打ち合わせにより、作品の世界観を構築しキャラクターを浮き立たせる楽曲ができてます。さらにキャラクターが動くたびに必然的に音が付随してそれがさらにキャラクターを生かせていく。考えてみれば当然のことなんですが、原画動画背景そして特殊効果などの映像部分と音響部分は、車の両輪のようにまるで同レベルで作品を支えているんですね。
 冴羽獠が息づく新宿の街の雰囲気から、彼が持つダークな一面そしてモッコリな一面。これらは映像と演技や音楽・効果が入ると見事に奥行きまで表現されます。ダビングはそれを最初に確認できる作業で、その仕上がりは魔法にかかったような気にさせます。
 ボクがこだわった今回のポイントはもちろん「GET WILD」の使い方。実はこの曲のイントロは意外に長い事がわかっていました。大切なのはイントロの出るきっかけとそこに重なる冴羽獠のセリフ。こだま兼嗣監督は、悪者の車が燃えて事件を解決させた後、次の獠とヒロインの2ショットでイントロを始めます。そして主人公のセリフが決まり、こーゆー風にこの楽曲は使うんだよ、と視聴者に教え込むような理想的なかかり方。後に「止めて引く」と言われたED演出カメラワークも含めて、何度見ても心震える作品が出来たのです。というわけでこの第1話のダビング作業、7時間くらいかかったんじゃなかったかな。
 写真はまだ載せてなかった「半妖の夜叉姫」高橋留美子先生が描いたキャラクターの対比絵です。この時点でもう3人が息づいてますね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?