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アルキメデスの大戦

映画のアルキメデスの大戦。実はそんなに期待してなかった。だから思いっきりハードルが低かったというのもあるけど、かなり面白かった。

永野修身と山本五十六が同じ陣営で仲も良くユーモアもありというのはちょっと新鮮。
そして平山中将がカッコいい。戦艦建造の意図が面白く深い。2段階の落ち。

あの時点で日本とアメリカが戦争に突入することを織り込めてたというのは、ちょっと先見の明がありすぎる気もするが。

工業力なんかの国力の差でアメリカと戦争したら日本は負けるというのを具体的な数字で予見することは可能。

これからは航空戦力の時代と主張して空母の建造を主張する永野修身と山本五十六。それに反対する名前は忘れたけど相手陣営の平山案を推す戦艦派。会議でそもそも兵学校時代にとか、愛人のスキャンダルで奥さんに土下座したとかぜんぜん戦艦と関係ないことで揉めたりする子供っぽい部分がある幹部たち。

巨大戦艦。これが有効かどうかは差し置いて、巨艦巨砲主義はロマン。ただただ単純にカッコいい。だから戦艦派は戦艦を推す。もちろん巨大戦艦があるというだけでそれが外国への威圧にもなるし、大日本帝国海軍や日本人の誇りになり、拠り所となる。

巨大戦艦を作るのに巨額の費用が必要なはずなのに見積もりが安すぎる。そのからくりや正しい見積もりを櫂直がやるわけで、その過程で戦艦長門を参考に巨大戦艦の設計図みたいなのを櫂直は作る。そして結果として数式で正しい建造費を算出してしまう。

最終的には平山中将が巨大戦艦の見積もりは安くしていることを認める。巨大戦艦を安く作る代わりに同じ造船所で駆逐艦を高く作ることで帳尻合わせ。

じゃあなぜ巨大戦艦が安いのか。それは建造費を公表しないといけないので、高額な戦艦を建造しているとなると、その情報が外国に脅威を与えて緊張を生むから。だからあえて安く見積もることで、外国からの警戒心を持たせずに建造してしまおうという魂胆。

櫂直は会議において巨大戦艦の設計図を見て、数字で欠陥を見つける。そして巨大戦艦の建造を断念に追い込む。

でも櫂直の作った設計図を見た平山中将が欠陥を克服した巨大戦艦を設計し、その模型を櫂直に見せる。否定のためにとはいえ、設計図を作ってしまった限りは作りたいという思いが芽生えてしまうものだという指摘に櫂直は押し黙る。

ロシア戦争の勝利で未だに浮かれている日本人。日本人は負け方を知らないからとことんやってしまう。でも象徴的な巨大浮沈戦艦が沈んだ時、日本人はハッキリと負けを意識する。そのある意味墓標的な、沈むことを前提に巨大浮沈艦を作ることが平山中将の真の狙い。そして日本を象徴する巨大戦艦だから「大和」と命名すると打ち明けられる。

それに反論できない櫂直。結果として大和は建造され就航する。観艦式を終え、大和から降りた櫂直は沈む大和に思いをはせ立派な船だと泣く。真実は言えない櫂直に、そうでしょうとも世界に冠たる軍艦と周囲の軍人は無邪気に誇らしそうに嬉しがる。この対比。

この展開は予想してなかった。

まあ大和が沈まなくても新型爆弾が2発も落とされたら日本は絶望的だけど、当時としてはさすがにそこまでは予想できない。

マンガで連載中のアルキメデスの大戦だけれど、映画は映画で綺麗にまとまっていたと思う。

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