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東芝グランドコンサート2022 2022.3.3 愛知公演 感想

愛知県芸術劇場
ガエタノ・デスピオーサ指揮
ジャパン・ナショナル・オーケストラ特別編成

◆ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」
 ソリスト:村治佳織
◆メンデルスゾーン「交響曲第4番」イ長調
 作品90「イタリア」
◆ショパン「ピアノ協奏曲第1番 ホ短調」
 ソリスト:反田恭平


○オーケストラについて
オーボエがAの音を出してからチューングをする。
そのわずか2秒で、このオーケストラの音程の正確さ、音色の美しさ、全体のサウンドのバランスの良さがわかり、曲が始まる前から「あーー(悶え)😍」と、腰砕けになっていました。

何なら、このチューニングの音をCDで出してくれたら買います、と思うぐらいでした。私は開始2秒でこの楽団にメロメロになりました😍

私がショパンコンクール後、聴きに行った楽団の中で(N響含む)1番上手い!音がいい!と思いました。JNOメンバーさすが!のところもあれば、パートまるまる助演の方で上手い!というところもありました。JNOメンバーがゼロのパートでJNOメンバーならどんな感じだったんだろうか、聴いてみたかったなというところもありました。

管楽器それぞれのソロが上手いのはもちろん、今回はオーケストラにおける弦楽器の素晴らしさを教えてもらった気がします。

弦楽器、これだけの人数がいて16分音符までくっきりはっきりそろっているし、音楽の世界感を表す音色のレパートリーも豊富でした。コントラバスは4本だったにも関わらず、1本1本が鳴っていたので、支えがしっかりしていたのも良いサウンドの必須。
特に全音符 タイ 全音符のようなロングトーンが、しっかり生きた音になっていたところに心惹かれました。

全体的に私が1番気に入ったところを上げると、指揮者が指示を出してから反応するのではなく、ほぼ指揮者と同時か、指揮者の少し先に仕掛けるぐらいの「表現」の自主性、主体性がすごかったです。それはそれは気持ち良いほど。
リハーサルですぐに指揮者の意図を自分のものにしている人たちが集まっているのだな、と思いました☺️

そして「アンサンブル」が素晴らしい。
2重奏、3重奏、4重奏・・・のアンサンブルの集合してできたものがオーケストラ。
曲中、時には一緒に合わせる人に体を向けながら、「ここは、自分たちのパートと、このパートが合わせるんだ」という思いがとても伝わってきました。

管楽器の弦楽器との合わせ方もとても勉強になりました。基本、弦楽器は弦楽器で合わせて、そこに管楽器が合わせていくという形ができあがっていたように感じました。

音の輪郭が弱い弦楽器に、オーボエやクラリネット1本加わることで輪郭がよりしっかりしますし、フルートのヴィブラートがふわっとかぶるだけで全体の音色がキラキラと輝きました。

他にも、私が好感を持てたところは、ソリストの紹介で拍手をする時に、全員きちんと手を使って拍手をすることろです。
ソリストが紹介された時に、指揮者の合図で立ちながらも、同じパートの隣の人を「この人もすごかったよ」と「こちらも、こちらも」というゼスチャーをしていて微笑ましかったです☺️

譜めくりが音楽を壊していないこと。
楽器を構える時に音楽を壊していないこと。
自分が休みの時に音楽を壊してないこと。

この3点は、とても当たり前のことながら、実はとても難しく、オーケストラ全体の印象となります。
この楽団はこの3点が完璧でした。

超個人的には、オーボエの賛助で入っていた静岡交響楽団の篠原さんの音にすっかり惚れ込んでしまいました。個人的にチェックチェック😍


○ロドリーゴ「アランフェス協奏曲」

1楽章の一番ワクワクするところは、6/8拍子のまま、2拍子、3拍子が入り乱れるリズムのおもしろさですよね。私は高校時代ウエスト・サイド・ストーリーの「アメリカ」を「トマトトマトカキカキカキ」と頭の中で読んで練習するよう先輩からの伝統を引き継ぎました😁

その小気味よいリズムの中を村治さんのスパニッシュスケールが走る!!
カッコいい!しか言いようがない!!
よし。言おう。

カッコいい!!

2楽章。
私はこれまで吹奏楽編曲ver.しか聴いてこなかったので、あの有名な「タララー」のメロディはホルンが吹くイメージで、本当はギターの役割かなと予想していたのですが、なんとギターがアルペジオでイングリッシュホルンのソロだったとは!今回はじめて知りました。
そして、それを引き継いでギターがそのモチーフを紡いでいくのですね。
この楽章ほど「哀愁」の言葉が似合う曲はないですよね。🍂

ギターは「メロディ」と、そのメロディの「余韻を鳴らす」構成のように感じました。「余韻」という点では日本の伝統音楽にも通じるようなものもあるように思ったり。
そして、この楽章のカデンツァ?に入る前になり続ける何とも言えない不穏なコードの連続😱

あれは何を示しているのでしょうか。これから湧き上がる激情に向けて、解決しない音が積み重なって爆発するのでしょうか。
その後、壮大に主題をトゥッティで奏でられたあと、天に昇るように美しく昇華して2楽章は閉じられました。

3楽章が一番身近な音楽の感じ?民族舞踊のような?
それにしては、3/4拍子と2/4拍子の組み合わせが複雑。複雑というより、3、3、3、3と進みたいところを3、3、2、となるので1拍ずつ早く出る感じ?それが3楽章の推進力になっているんでしょうね😆


○メンデルスゾーン「交響曲第4番イ長調」
コンサート当日、あ、この曲の予習をしていない!と気付き、にわか予習。1番に感じたことは、全楽章せわしなく、音の数が多い!

と、なんとなくベートーヴェンの運命を思い出す。これはコンサート中に気づいたのですが3連符が多いからかな、と。それがベートーヴェンの運命のモチーフを連想したのかな🤔

と、思ったら、1楽章は6/8拍子だったんですね。それが3連符に聞こえていたとは。でもなんとなく4/4の3連符のまとまりに聞こえる。そういうフレージングなのかな?
そんな、ひっきりなしに刻まれる音の鳴る曲。ちょっと長く伸ばす音が聞きたくなってくる。

2楽章でandante、3楽章でmoderato、4楽章でPresto。ゆったり眠くなるような楽章は作ってくれなかったのね💦

2楽章が唯一流れるような音楽だけど、4楽章で追い打ちをかける3連符攻撃‼️私には、この曲の良さを知るには、もっと時間がかかりそうです😅
(感想になってない…。楽団の上手さを堪能できます。と、とってつけたように書いておきます。)

3/7追記
この曲の良さを探しに、ベルリン・フィル至上主義の私は、これまたイタリア出身の指揮者シャイーの、ベルリン・フィルの「イタリア」を聞いてみた。おや。そこまでうるさく感じない。
1番の違いは後ろで鳴っている8分音符の刻みでした。この音がうるさくない。よく聞くと「タタタタタタ」ではなく「タタ タタ」ときちんと6/8に聞こえる。もちろん4楽章の3連符は「タタタタタタタタ」で、絶対に聞こえなければいけない1拍目や拍の頭以外はとても控え目。しかもそのパートを担当している人たちが、きちんと歌いメロディに合わせて抑揚をつけている。
JNOほどのメンバーがこんな基本中の基本のことをやっていないはずないのだから、きっと「聞こえないかも」ぐらいに音を抑えた方がちょうどよかったりするのかも⁉️
そしてこの曲が単純に聞こえてしまうのは、ユニゾンです‼️という主張の激しい弦楽器のユニゾン主題が多いことにあるのかも。なので色彩という点で組み合わせが少なく代わり映えがしない。ハモリやオブリガートの配合にもっと工夫が必要なのかもしれないのかな🤔
あと、今回ティンパニで入ってくださっている方の音が控え目過ぎるのも関係あるかも。もう少し打楽器のパンチが欲しいなぁ。
「これは美しい‼️」という耳に残るような代表的メロディを感じられなかったことも、あまりこの曲が好みではない理由かもしれません💦


○ショパン「ピアノ協奏曲1番」
きました‼️反田さんの登場‼️
お痩せになった?
少しほっそりしたように見えました。

まず最初に確かめるのは、今回のこのコンチェルトは「縦」か「横」か⁉️
デスピオーサマエストロは「縦」でした😚

デスピオーサマエストロの素晴らしかったことは、この曲の(味付けの薄い)弦楽器パートを、よくこうもうまく味付けをしたなぁ、ということでした。

アンコールで知ったことですが、マエストロはヴァイオリン奏者でもあるんですね。ああ、こんなに弦をまとめあげ、拾い上げるのが上手なのも、さもありなん、と思いました☺️

特徴的だったのは、弦が流れる川のごとくメロディを弾いているところに、管楽器がアウフタクトで入ってくるところを、とても丁寧に(テンポを落としてまで)入れていたところ。
「弦楽器+ピアノ」に管楽器が入ってくる、というような解釈に見えました。
「ピアノ+ホルン」や「ピアノ+ファゴット」は反田さんお任せで、うまく成り立っていたように思います。

んー。それもあってか、こちらの曲の管楽器はあれ?人が入れ替わった?(たぶん増えただけ)
と思うぐらい、ちょっとポロポロこぼれることがあり、心の中で「ショパンが無茶書くからだよね。がんばってー😖」と心の中で応援していました。

1楽章。
あのショパコンで聞いた反田さんのコンチェルト😭
でも、だいぶ変わっていたように思います。
配信と生音の違いなのかもしれません。

1楽章は、全体にせつなさ2割増し。胸がきゅうっとなりそうなメロディはゆったり、そして速いパッセージは、よりさらりと風が通りすぎるように軽く速く。
さらに緩急の幅がついたような気がします。

長調と短調の細かな移り変わりの部分なども、しっかり時間をとって、ぐっと気持ちを入れていたように思います。

2楽章
2楽章の弦楽器群の始まりとても素敵でした。細い糸のような、それでも前へ流れる前奏。
しかし、反田さんが入ってきて、これがもうビックリ‼️

その弦よりも、より弱く、より美しい音で始まったのです。

え!?え!?

一瞬でどこに連れていかれたんですか!?

別世界に連れていかれました。

反音の不思議は、より弱く、より小さな音ほど、自分の近くで聞こえるんです。
まるで、耳を通さず、頭蓋骨の骨伝導か、もしくはそのまま脳に届けられているのか、という具合に…

2楽章は始まってすぐに「昔の幸せだった頃の思い出」というイメージが浮かびました。

紗幕1枚かかった向こうの世界。
回想シーンなどで出てくる、輪郭が鮮明でない白いもやがかかったような世界。
1つ時空を別のところにつなげたような世界。

その世界の中へ。
会場の誰もが。観客も、楽団員も、指揮者さえも。
とても美しく1番幸せだった頃に連れていかれたのです😭

反田さんの音が鳴っている間も。音がゆるやかになってふわりと消えて無音になって時も。

ここにいる会場の全員がきっと今同じことを感じている。

そんな気がしました。

短調になったところは、心に波がざわざわとたちました。
ホルンの持続音もどこから聞こえてくる音なのか。
現実の世界なのか、別の世界なのか。
ファゴット、そう!そこからヴィブラートをかけて欲しいという最高のタイミングでした。(でもかなり力が入っているのでもっと音を抜いてー)

そこを全部越えて、2楽章ラスト。

もっと遠くに。もっと美しく。反田さんが最後の1音を鳴らした時には、会場は現実から1番遠い世界に連れていかれました。
すぐには戻って来れないほどに。

反田さんが鍵盤からゆっくり手を離し、ハンカチで汗をぬぐって、みんながやっと詰めていた息を吐きました。

3楽章
3楽章が1番、生で聴いて印象が変わった楽章です。反田さんの弾き方にも少し変化があったかも⁉️
これも、配信と生音の差が大きいのかもしれません。

私は3楽章ももっと溌剌で元気いっぱいなイメージがあったのですが、私の中のイメージより、3楽章は軽く可愛く、なめらかで穏やかになるところがたくさんありました。

たとえば、最初の主題も、途中に出てくる副主題(ショパコンの挿入映像によく使われていたメロディ)も、3回の繰り返しで成り立っていますが、3回目はやさしく柔らかくなのですね。
楽譜を確認したら後半の方は、3回目はスタッカートもついておらず、全スラーになっていたりします。

主 題
副 主 題

私の頭の中では、3回とも元気溌剌に弾いていたイメージがありました。(きっと他のファイナリストの方のイメージもあるかも⁉️)
反田さんは、1回目、2回目、3回目。と段階をつけるので、2回目の楽譜にスタッカートがついていても、音をつなげて弾いていました。そして楽譜を見ると3回目は「dolciss.」がついている箇所までありました。
反田さんは楽譜にとても忠実に。特に繰り返しで主題が出てくる場面での意味づけを、本当に細かくされる方だなぁと、改めて感服致しました😭

ラストクライマックスも、もっと迫力あるようなイメージが私の中にありましたが、あくまでもショパンの「f」。そこに反田さんは印象的なアクセントだけを際立たせて、とても柔らかくて広がりのある「f」をつくってらっしゃいました。

フライング拍手。やっちゃいましたよね😌
やらずにいられませんよね😌
ここまでが3楽章😌

アンコールは超高速の猫のワルツ。(その中でも「そこまでやりますか⁉️」という「p」の部分は、楽団のみなさんも、にやにやをこらえながら息を詰めて聞いてらっしゃるのがわかりました😚👍)

2曲目は椅子に座るやいなやのエチュード10-1でした。
海くーーーん‼️
2曲も弾いてくれたのは「弾きたくなっちゃった」んだそうです☺️

ラストは反田さん、村治さん。そして、2人に入れて欲しくなったマエストロが楽団の方のヴァイオリンを拝借してトリオでピアソラの曲。「Ave Maria」でした。

それでは。取り留めなく(読み返すとだいぶひどい)長々とした文章を読んでいただき、ありがとうございました。


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