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ばふっ!

私はキノコ全般が苦手だ。

そう言うと、人は
「椎茸も?松茸は?エノキは?ポルチーニとかも?しめじは?あとほらフクロダケとか」
などとキノコの種類を思いつく限り羅列して確認したがるのは何故なのか。
そんな時私は大阪生まれでも無いのに
「だからァ、全般イヤやーゆうとるやんけッ!」と関西弁で啖呵を切りたくなる。

40年以上前、両親に「ススムの味覚はまだ子供だからね。大人になったらきっと好きになるよ」と言われたが、初老?に入りつつある現在、子供の時よりさらにキノコが嫌いになった事を実感している。

何がそんなに嫌なのか。
まず姿かたち。椎茸の裏側の放射線状に
伸びるヒダを見るだけで身震いする。
そして匂い。子供の頃学校から帰宅して母が干し椎茸で出汁を取ったりしてると「うっ」と一気に気分が悪くなったものだ。

また、木などに寄生して養分を吸入するイメージ、繁殖するべく夜な夜な胞子を放出するところを想像すると「ばふっ!」という効果音まで聴こえて来そうで、軽く悪寒がする。

最近の結婚式•披露宴招待状の返信用葉書には苦手な食材、アレルギーを記入するスペースがあるので、正直に書く(レストランで注文時にキノコが苦手と言うと、承知しました、アレルギーですか?と聞かれ、最初は答えるのが恥ずかしかったものだが、今は堂々と「いいえ。アレルギーではなく、嫌悪です」と言い切る事が出来るようになった)。
披露宴では、私は他の元門下生たちとワイワイやりたいのが本心だがそうもいかず、大体「恩師など、新郎新婦に近い、エライ人たちのテーブル」に案内される事が多い。そしてメインコースの前になると「キノコの苦手な青柳様には他の食材をご用意致しました」と恭しく一人だけ特別仕様の料理を提供され、他のエライ人たちの失笑を買う事になるのだ(それか、お嫌いなんですか?エノキも?マツタケも?のパターン)。

中には人生の半分は損してるよォ!
とカンタンに言い放つ人がいる。これは一体、どういう根拠に拠るデータなのだろう。
「何を基準に50%? 生きる喜びの半分はそもそもキノコで出来てたの?」と詰め寄りたくなるが、めんどくさいのでアハハ、と嗤って流すのが常だ。

一昔前に九州に演奏に行った時、青柳さんがキノコ嫌いなのは最高の椎茸を食べた事が無いからですよ!
ぜひ一度でいいから試してください、と音楽好きの椎茸栽培所を営む人から石焼きを勧められた事があった。「マツタケより高級品なんです!」石焼きにして食べましょう、とその方のパッション(これがまた実に良い方で)に押され、ひとかけ食べてみたら、その夜に発熱した。
これをアレルギーと言うのかは分からない。身体が非常に強い拒否反応を起こしたのだろう。そしてこの方の椎茸は本当に上級品で、私を圧倒するほど強力で濃厚なエキスが詰まったものだったのだろうと今は解釈している。

アレルギーでは無いんですが、
パクチーが苦手で‥
納豆がちょっと‥

恥ずかしそうに答える人に大いに親近感を覚える。間違っても、
「えー!フォーに山盛りパクチー美味しいじゃん」などと無駄な質問は返さない。人は、嫌いなものは嫌いなのだ。無理強いは何の得も特も為さない。


‥延々とこの話を続けてもオチは無いので、
秋の韓国のコンクールに審査に行ったら昼、夜ほぼ全ての料理にキノコが入っており、帰国時には2キロ痩せた事を綴って、今日はこの話題はおしまいとする。

(写真はソウルの街並み。行き来が自由になったら真っ先に親友に会いに行きたい!)


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