日本企業の決算短信が定型文すぎるという指摘に首がもげるほどうなずいた話
サステナビリティの世界に足を踏み入れた私が、基礎知識を身に付けるために1000日連続でnoteを更新する挑戦をしています。
チャレンジ5日目(Day5)のテーマは「英文開示」です。
1.はじめに
サステナビリティ開示の理想は日英同時だよなぁ…でもなかなか難しいんだよなぁ…などと思いながらふらふらと書店を歩いている時に出会ったのが、こちら。 井川 智洋・児玉 高直・杉渕 均 著「海外投資家ニーズを押さえた英文開示のあり方・作り方」(中央経済グループパブリッシング、2023年)です。
もともとはIRの経験が長かった私が我が意を得たり!となったのは、日本企業の決算短信や有価証券報告書には「定型文が多すぎる」という指摘(p.90~)。
まさに快刀乱麻の勢いで「定型文」だらけの短信or有報の記述にツッコミが入れられていますので、IRや財務経理ご担当の皆さま、ぜひここだけでもぜひ読んでみてくださいませ。。。
2.よくある開示(定性情報)の記述例
本書p.91~92には、「実際の決算短信をもとに意味が変わらない程度に修正した」記述が載っています。この文章のどこがダメなのか??ツッコミを入れるべき場所はどこ?? 答えを読む前に少し考えてみると楽しいですよ。
第1段落
「第1段落では事業環境について述べているが、一般的にニュートラルかやや悲観的なトーンで記述してあることが多い」(p.91より)
↑↑↑
そう、そうなんですよ…!と激しくうなずく私。多くの上場企業の決算短信等で事業環境説明って、環境がいい時、業績がいい時でも「悲観的」に書かれているんですよねぇ…。
さて、本文は下記の通りです。この記述、どこに問題があるんでしょう。
続いて、第2段落です。
第2段落
「第2段落は、企業がどのように対応したかについての記述であるが、漠然としたものが多い。」(p.91より)
↑↑↑
これも本当にその通り。いつも思うんですが「このような経済状況の下」ってまとめちゃっていいんでしょうか…。
さて、本文は下記の通りです。
本書ではさらに第3段落、第4段落と記述が続きますが、とりあえずここまでにして、第1・2段落へのツッコミを見てみましょう。
3.よくある開示(定性情報)へのツッコミ
第1段落についてはまず、
と、バッサリ。理由は、
何をしたのか?
なぜそれをしたのか?
が書いてあるのは第2段落ですが、これは「あまりにも曖昧」であるとこちらもバッサリ。ここから怒涛のツッコミが始まります。
…なんというか、もうズタボロです。
途中までは「あるある~」と笑っていた私ですが、次第に「身に覚えがありすぎる…」と申し訳なさで身が縮む思いでした。すみません。
4.よくある開示(定量情報)
さて、定性情報はツッコミどころ満載でしたが、定量情報はどうなのでしょう。実は「日本人の思考、慣用的な表現と英語ネイティブのそれらが異なるため、文章1つで微妙に印象が異なることもあり留意が必要」と著者は述べています(p.106)。
例文は下記の通りです。これもよく見かける(というかこれ以外の書き方を見たことがない…)記述なのですが、どこが問題なのでしょう。
5.よくある開示(定量情報)へのツッコミ
こちらもツッコミどころ満載でした。
p.106~107で指摘された内容を要約すると以下のようになります。
文章が長すぎる。何度か読み直さなければならない(ので困る)
受動態で書かれているため、英語に直訳すると「経営陣の意図ではなく外部環境の影響でそうなった」という印象になってしまう
各セグメントの変化率を記載して欲しい。売上高の金額を並べられてもピンとこないが、伸び率を併記することで投資家は事業規模とモメンタムを把握することができる
言われてみれば確かに!という指摘ばかりです。
特に「受動態」についての指摘は、なるほどと思いました。
サステナビリティについて記載する時にも、心にとめておいたほうが良さそうです。
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