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リサーチレポート | サステナブルの本質とは? in 旭川

こんにちは。Sustainable Innovation Lab(SIL)事務局(インターン)の服部です。
この記事では、2月開催された SIL参画メンバー主催ワーケーションプログラム「Slow School Asahikawa」での学びをレポートします。

2月13日(日)から20日(日)の8日間にわたり、SILアソシエイトのSanagy株式会社・菊池佳さんが企画されたワーケーションプログラム、「Slow School in Asahikawa」が開催されました。

プログラムのテーマは「サステナブルの本質を考える」。8日間の旭川での暮らしを通じて、100年後まで残したいものは何なのか、サステナブルにどう向き合っていけばよいのかといったことについて考える場となりました。(菊池さんをはじめプログラム運営をしてくださった皆様、貴重な機会をありがとうございました!)

このプログラムにはSIL事務局の本間、服部が参加し、Next Commons Labの武井浩三さんもゲスト講師として参加しました。
※記事を書いた服部は19日(土)からの参加のため、それまでの話は本間さんへのインタビューからまとめています。

「江丹別森の学校-センス・オブ・ワンダーを取り戻す」

プログラムのスタートは江丹別の森から。
スノーシューを履いて森の中を進むと広大な雪原に出ます。自然の中で身体を動かしながら雪による静寂の中で五感を研ぎ澄ますと、普段とは違った感覚が呼び起こされます。

そしてキコリの野中さんが木を切る現場へ。雪が音を吸収し、木が切断される音だけが響くとともに、切りたての木のいい香りが漂います。

(本間)「野中さんのお話を伺い、仕事における時間軸の捉え方の違いが感じられました。『仕事の成果が出るのは100年後かもしれない。』『自分が死んだ後も森が残り続けるかどうかはわからない。だけど100年後の森を残すために、いま木を切っている。』目先の利益や生産性といった指標では測れない林業の世界に触れることで、自分自身の生活や仕事の時間軸について考えるきっかけになりました」

「旭川に暮らすように旅する」

平日はコワーキングスペースで仕事をしつつ、空き時間にはスキーに行ったりサウナに行ったりと、みなさん思い思いに過ごされていたようです。

旭川の隣町、東川町にも足を運びました。

特に印象に残っているのは北の住まい設計社。永く使うこと、自然のリズムと共に生きることを大事にした、持続可能な家具作りを行っています。地域の木材を使っている上に、破損部分のパーツのみの交換で修理ができるため、省エネかつ1つのものを永く使い続けられる。未来の子どもたちのため、地球に負荷をかけない家具作りを目指されています。

東川町は写真の町ということもあり景観もきれいで、時間の流れが穏やかに感じる、落ち着いた文化的な町でした。

「アイヌの世界と旭川の発展から考えるサステナビリティ」

19日(土)は、アイヌの聖地であり近代旭川が生まれた「北の嵐山」のガイドウォークからスタート。

アイヌの伝説の岩(ノチウ)や住居(チセ)などを見学しつつ、山を登っていきます。頂上の展望台からは旭川を一望でき、そこで旭川の歴史について伺いました。旭川の歴史は132年と、まだ新しい町。アイヌの人たちが川沿いに小規模でぽつぽつと住んでいたところから、入植・区画整理を経て現在のような街並みに変わり、人口約30万人の町になるまで、たったそれだけの時間しか経っていないのだそう。工場が建ち、住宅街ができ、お店ができ、川には水門ができ、アイヌの人たちは川沿いには住めなくなり…。132年でこれだけ変わった町は、これから100年でどのように変わっていくのでしょうか。

100年という時間は1人の人生で考えたら長いですが、町の歴史として見ると短く、しかもその短期間で様々な変化が起こりうるのだという事実は、今後の100年への希望になりそうです。

「100年後に残したいもの、とそれに向けた実践」

そして層雲峡へ移動し、武井さんの講演「新しい社会システムと経済の多様化」に参加しました。

様々な組織に幅広く関わられている武井さん。何かに取り組むときは、地球や社会にとってプラスにならないと意味がないと話します。社会にとって意味を生み出し、関わる人みんなに幸せになってほしくて、自然(じねん)経営の会社を作ったそう。そして今は「いい会社づくりからいい社会づくりへ」を目指して活動されているとのことです。

そして持続可能性というものは「重なり合い」「自律分散」「循環」という自然の摂理が重なり合った結果として生まれるものであるとも話されていました。

また、そもそも経済とは人間の営みのことであり、本来は多様なもののはずで、「経済=貨幣経済」になっている今の価値観を揺り戻していきたいと武井さんは話します。

「お金はツールでしかないのに、社会関係資本や自然資本などが優先度でお金に負けてしまっている現状を何とかしたい」
「儲かるか儲からないかではなく共感をベースにしたほうが楽しい」
「何に共感するかは人によって様々で、それを受容すること=否定がないということ。貨幣経済を否定するのではなく、そこの居心地が悪いなら別のものを作っていこうという感覚」

多様な経済のあり方を尊重し、お金だけではなく自然や人との関係性も大事にできる、誰もが幸せに暮らせる理想の社会の実現に向けて、様々な場所で実践されています。

(本間)「ワーケーションの中でお話を聞いたからこそ、1週間の生活と講演がリンクしました。東京での暮らしは便利で快適だけれども、損得勘定を抜きにした人と人との繋がりをつい忘れてしまう。プログラムを通じた仲間との暮らしは、そんな人間関係資本を思い出すきっかけになりました。」

「100年後に残したい写真展」

最後のワークは、参加者の皆さんが1週間のプログラム期間中に写ルンですで撮った写真をまとめるアルバムづくり。テーマは「100年後に残したいもの」。印象的な風景や人と過ごした時間など、思い思いの光景を切り取った素敵な写真たちでした。

(本間)「樹氷など、そこにしかないもの・ここでしか見れない景色を撮りました。スマホなどで撮る写真と違ってインプットからアウトプットまでが長いため慎重に撮るので、1枚1枚により思い入れがあります」

みなさんのアルバムを見て、そういった「これを100年後まで残したい」という気持ち、未来に対する希望を100年後の人も持ち続けられているといいなと感じました。環境問題や経済問題など、世界的に社会課題が山積している時代ですが、未来に進むにつれて絶望で道が閉ざされていくのではなく、このワークで共有し合ったような希望が広がっていく100年後になっていればいいなと思いました。

翌20日には別れを惜しみつつ解散し、プログラムは幕を閉じました。

プログラムを終えて

(本間)「今回のプログラムを通して、豊かな自分に出会えた気がします。地域で起業したり、自分のやりたいことをやっている人たちを見ると、自分は人生のオーナーシップを持っているのかなという気持ちになります」

「キコリの野中さんのお話が一番印象に残っているんですが、自分の仕事に置き換えて見ると、お客さんの課題は解決しているけれど何らかの社会課題は解決しているのか?と考えてしまいました。出会ったお客さんに感謝される瞬間、やりがいはありますが、俯瞰するとこれに意味はあるのかなと思ったり、ずっとそれだけでいいのか、社会にとって良いことをできるんじゃないかと思ったりします」


「サステナブルとは」を考えると、極端に言えば人がいない方がいいということになってしまうのではと思ったりもします。しかし、今回のプログラムを通じて「私たちが何を残していきたいのか」という視点も大切にしていいのだなと感じました。

地球環境だけについて考えると、そんな悠長なことを言っている場合じゃないという話になるかもしれませんが、そもそも地球を守りたいのは、人間が育んできた文化や日常の営みを後世に引き継いでいくため、そして世代を超えて誰もが幸せに生きていけるようにするためでもあると思います。人間中心的な考え方ではありますが、地球に生きるものとして主体的に関わっていこうという姿勢とも捉えられるのではないでしょうか。

SDGsやエシカルなど持続可能性に関連するワードが広まり、意識も高まりつつある一方で、「持続可能である」という概念は理解できても、具体的な行動として日常に引き付けて考え、行動し続けるのはなかなか難しいかもしれません。何をすればいいのだろうと悩んだり、これは本当にサステイナブルなんだろうかと考えたり、流れゆく日々の中でついその意識が抜けてしまったりといったことがあると思います。

「地球のため」だと距離が遠く、他人事に思えてしまうこともあるかもしれませんが、まずは自分が守り続けたいと思えるもの、100年後に残したいものを考えてみると、「サステイナブル」がより自分事に感じられるような気がします。


Sustainable Innovation Labでは「100年後も地球と生きる」を掲げています。
人間が100年後も地球と生きることができていたら、続いている地球と暮らしの中に残っていて欲しいものは何でしょうか?

これからも考え続けていきたいと思います。



服部可奈 Sustainable Innovation Lab事務局インターン
東京外国語大学インドネシア語科4年。茨城県出身。趣味は読書とラジオ。
Next Commons Lab(NCL)の掲げる「ポスト資本主義」や、
SILの連鎖的に課題を解決するという姿勢に惹かれてインターンを開始。
現在は(株)NCLの事業運営にも関わっている。



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