「旅する」 リレーコラム① - 小林やばこ

SUSONO文化放送部リレーコラム。藤田さんからまた回って、部長やばこ(@yabaco_)が担当で書かせていただきます。今月のテーマは「旅する」。早速いきたいと思います。

タイトルは「どこに行くかよりも、人との出会いが旅である」。


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旅について書こうと思ってから、真っ先に頭に浮かんだのは、東浩紀さん著『弱いつながり 検索ワードを探す旅』だった。

本がどこかにいってしまって、うろ覚えなのだけど、その中で印象的だったのは「自分を変えるには付き合う人・仕事・住む場所のどれかを変えるしかない。でも、それはなかなか難しいから旅をして新しい検索ワード(=新しい視点)を手に入れよう」ということだった。

例えば、チェルノブイリとカタカナで検索すると悲惨な写真や情報ばかりが上がってくるが、ロシア語でチェルノブイリと調べると観光産業として少しずつ姿を取りはじめ、もうこのような惨劇を繰り返すまいという前向きな情報が出ているらしい。それは日本で普通に暮らしていたら分からないことで、旅をしてそこで新しい言葉を手に入れて初めて辿り着ける。そんなようなことが書いてあった。

確かに確かに、と頷きながら、この本を読んだのは2014年で社会人4年目の頃。大学時代は留学していてあっちこちに飛び回っていたけど、社会人になって有給なんてとる暇もなく、旅してないなぁ、と思ったことを覚えている。

普通、感化されたらすぐさま航空券を買って...となるのだけど、なぜだか動く気が起きず、結局、僕が実際に旅をしたのは2年後の2016年8月だった。

広告代理店を辞める際に、有休消化でスリランカに3週間。結論、なんで早く旅に出なかったのかと後悔した。正確に言うと、なんでもっと早く色んな人に会わなかったのか、だ。

現地の人もほとんど知らない集落で世界から集まった20人と過ごしたアーユルヴェーダの一週間。ドリンコマレーのホテルのプールで出会ったフランス海軍のアニメオタク。鉄道で一緒に暇つぶしをしたスペイン人の大学教授。昔愛知に出稼ぎに来ていたタクシーのおっちゃん。休みだったけどジェフェリー・バワの別荘を案内してくれた守衛さん。

色んなことを教えてもらって、代わりに僕もたくさんのことを教えた。それを通して、僕は新しい検索ワードを手に入れた。観光名所を訪れるより、よっぽど濃くて感動し、心に刻まれた旅だった。

つまり、僕にとっての検索ワードを探す旅は、どこに行くかや何を観るかよりも「人と出会うことが旅」なのだ。ようやく東さんの言っていた言葉が自分なりに頭に馴染んだ。2年かかった。当時はそこが納得できてなかったのだ。

そうしていざ考え直してみると、「人と出会い、新しい検索ワードを手に入れることが旅」ならば、あらゆるものが旅に思えてくる。

例えば、今は色んなコミュニティがあって、一歩踏み出せば新しい人に出会える。リモートワークが広まっていて、場所に縛られず人に会いに行ける。各地にたくさんのシェアハウスやゲストハウスがあって、滞在する場所に人がいる。人と出会うという軸に立てば、全て旅だ。海外に出なくても、東京都内にいても、旅をするように生きることができる。

もちろん、日本を出て世界を感じることは本当に大事だ。ただ、そういう視点から見ると、僕はSUSONOでも旅ができているのだ。この6ヶ月、SUSONOでたくさんの人との出会った。ここに入らなかったら起きなかったことがたくさんある。心からそれは言える。

きっと僕を含めて、年の9割以上を日本のどこか定位置で生きている人が大半だと思う。広まってるとはいえ、ノマドのような生活ができているのはまだまだ少数だ。

だからこそ、この旅をすることを考える一ヶ月に、日々の暮らしにある「人との出会い」に目を向けて過ごすのもよいのかもしれない。

きっと新しい言葉を手に入れて、まだ見ぬ世界が拓けてくる。そんな7月にできるのではないだろうか。

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最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。次週は副部長のサチコさんのコラムです!また引き続き、ご愛読くださると嬉しいです。

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