6年3組のカードバブルとその崩壊 その1

これは今から20年前、私が小学生だった頃に起きた真実のエピソードである。

小学校と玩具について

私が通っていた小学校は既製品の玩具等を学校に持ち込むのは禁止されていた。たとえば、ハイパーヨーヨーやミニ四駆、たまごっちなどはそれらに該当するわけである。そして、それらの規制を搔い潜るかのように彗星の如く現れたのがバトル鉛筆である。それらは「文房具なのか?玩具なのか?」と議論を学校の先生や保護者に巻き起こした末に、ちゃんと削って鉛筆としての機能が発揮できるならば使用という落としどころになったのである。余談ではあるが、バトル鉛筆はどうやっても鉛筆として使えないボス用の鉛筆がある。ボス用鉛筆はトーテムポールが作れそうなほどの太ささがある凶器のペンである。

遊戯王カードの勃興

私がちょうど小学5年生のころ遊戯王カードが大いに流行った、遊戯王カードについて今更語ることはしないが、私たちの時代は現在のコナミ版ではんくカードダスから購入できるバンダイ版だった。このバンダイ版の遊戯王カードは今にしてみればクソゲーなのだが、当時としては大いに画期的であった。遊戯王カードが出る以前はドラゴンボールや幽遊白書などのカードダスがあったが、戦闘力や属性が書いてあるのだが、さっぱり遊び方がわからず当時の小学生は大いに困惑した。「ああ、この集めたカードで遊べたら楽しいのにな」と当時の小学生は考えていた。はっきり言って遊べそうな風に匂わせてるのが達が悪いなぁと思っていた。

さて、このバンダイ版遊戯王カードであるが、なぜか当時の担任は保持を認めた。たぶん大きい桁の足し算引き算が苦手なクラスメイトが「ええと、3000ライフがあるところに450のダメージだから」と必死に計算しているのをみて、「まぁ、算数の勉強になるし、多分すぐあきるだろうし、まぁええやろ」ぐらいに思っていたと思う。しかし、実際のところは遊戯王カードの熱狂は徐々に過熱していき、クラスに事件が起きる。

ホーリードール紛失事件である。クラスの陰キャ(のちの不良)がホーリー・ドールというどうでもいいカードを一枚なくしたのである。そして、この陰キャがホーリードールはレアカードだからだれかに盗まれたという陰謀論をでっちあげて大問題になった。いや、正直ホーリー・ドールなんてだれも盗まんやろと思いながらも、担任にしれて大炎上案件となった。そして結局、ホーリー・ドールは陰キャのお道具箱の隅から出てくるというどうでもよい決着を見せたものの、担任から遊戯王カードの使用および所持の禁止という大麻並みの厳しい規制が惹かれるのである。

なかよし通貨の存在

この時のクラスには「なかよし通貨」というものが流通していた。この仲良し通貨を語る前に頑張りシールについて語る必要がある。

頑張りシール中毒者

私の通っていた小学校ではテストや運動会、発表会、提出物などので著しい成果があったと認められる場合担任の自主裁量により頑張りシールがもらえました。よくありがちなのは「よくできました」と書いた金のシールである。小学校1、2年生の頃は、クラスメイト含めてこのシールに対して特に思い入れを持っていなかった。しかし、ちょうど3、4年の時の担任がばらまき政治家の如くシールを配るのである。しかも、種類も多種多様であった、そうするとシールにコレクション性がうまれてシールが欲しい一心で生徒たちは一生懸命授業をこなすようになるのだが、ここでシールに中毒性が生まれるのである。すごく良いことをすると超特大金メダルシールをもらえるのだが、このシールを保有する事はクラス内で選民として扱われるのである。しかし、おそらくこのシールは単価が高いのでめったに貰えなかった。

仲良し通貨の誕生

5年生に進級した頑張りシール中毒者の僕らは、当然ながら先生に対して頑張りシールを要求した。しかし、先生はちょっと赤い感じの先生だったので「頑張りに対し金銭的価値のあるシールを要求するのは間違っている。そんなに必要ならみんなの頑張りをお金にしよう。そして、クラスで流通させユートピアを作ろう」というマルクスレーニン主義的な事を言い出したので僕らは頑張りシールの代わりに担任の先生が発行する仲良し通貨を貰うことになるのである。仮想通貨で言えば頑張りマイニングで仲良し通貨が付与されるのである。先生はとりあえず10円や50円と画用紙に大量に印刷してハサミで切ってジェネシスマイニングを行っていた。そして、初期に発行されたコインをクラス32名に対しエアドロップを行った。先生は配り終わって、こういった。「お金は保有するだけでは意味がないので市場を作りましょう」と言い、ホームルームの時間に市場が誕生した。しかし、市場で売れるものは「折り紙や画用紙で作ったもの」というルールがあった。しかし、実際のところ初期の市場では一部の女子が折り紙でこじゃれた物を作ったにすぎず、男子は自由帳に書いた落書きや山で拾ったどんぐりを売るという絶望共産社会みたいな市場が爆誕したのである。しかし、この場合の市場は商品として価値のあるものが女子の作った折り紙しか存在しないため、消費者が狂ったように折り紙を買い、一部の女子がほとんどのお金を回収したあげくその女子が購入したい価値のある物が存在しないため仲良し通貨は事実上一部の女子が作る折り紙の交換券になってしまったわけである。

しかし、先生はすぐさま学級会を開催し市場の失敗を修正します。「まず、今回の市場はなしにします。」と言いロールバックを行います。「そして市場開催をやり直す」といい、次回までにみんなもっと売るものを作ってくるようにと言います。しかし、次回の市場が開かれたときに結局一部の女子を作ったものを除きゴミの展覧会になってしまいます。しかも、こんどはドングリでなくマジックで着色した松ぼっくりを売るという地獄絵図になります。結局この市場もゴミになります。一部画用紙の裏にクラス内ゴシップを書いた紙を売るという暴挙に出た陰キャの女子もいますが、結局それは大炎上案件で即販売中止になりました。

仲良し通貨の価値をめぐって

担任はどうやっても市場において仲良し通貨の価値を担保できない事が明らかになりました。

そのため、特例条項を作成します。仲良し通貨の支払いによって、個人間における掃除当番や欠席者がでた給食のあまり分を売買可能というルールを作成したのでした。


つづく。

うーん。ドッスン