しりとりゾンビの逆襲 2

 リンガーハットのイデアの中で僕たちは高校球児そっくりのゾンビ建ちに襲われていた。高校球児も200人も集まると中々恐ろしいものであった。あるものはリンガーハットの前に止まっていたアルファードを破壊しだしだし、またある者はリンガーハットの窓ガラスを金属バットで叩きつけてきた。横着そうな個体はスマホを取り出してパズドラをやり始める連中もいた。

 阿鼻叫喚の店内で俺は肉体労働者風の男性と家族連れに詰め寄られていた。

「おい!一体!これはどういったことだ!」

「いえ、皆さんはリンガーハットのイデアの一部なので落ち着いてください。」

「何わけのわからない事を言っているんだ!俺には意識だってあるぞ!俺たちは生きている!とにかく助けてくれ!」

 そうだ、この人たちはリンガーハットのイデアの一部としてこの場所に存在している。ひょっとしたら今この瞬間も現実世界のリンガーハットでこの人達の実像がちゃんぽん定食を食べているのかもしらない。

 いや、もしかしたらリンガーハットの客の平均値をとった現実世界に存在しない人間なのかもしれない。俺の前で必死に命乞いをしたり泣き叫ぶ姿は彼らに意識や感情が確かにあるようにも感じられるが、その逆に全く機械的にリンガーハットの客がゾンビに遭遇した時の平均的な行動を自動的にとっているのかもしれない。まるでゾンビの様に。

 すなわち、俺は高校球児のようなゾンビに囲まれながらリンガーハットに籠城し、ゾンビかもしれないリンガーハットの客ともめごとになっているのだ。そんなことをふと考えたのだが、肉体労働者風の男性は口角から唾を飛散させながらおれに厳しく問い詰めてきた。

「おい!どうするんだよ!?」

「いえ、僕は『しりとり』で宣言したものが出せるんです!それを使ってゾンビをたおせば僕は元の世界に戻れます!」

「いや、お前はいいかもしれないけど、俺たちはどうするんだ!?」

 そうだ!高校球児ゾンビを倒したところで、リンガーハットの人もしくはリンガーハットゾンビはどうなるのだろう!そう思案している間にも気合の入った高校球児ゾンビが窓ガラスを破壊しようとしていた。

 「トウモロコシ!」

 俺が叫ぶとイデアのトウモロコシが現れた。イデアのトウモロコシはあんまりおいしそうではなかった。スーパーで特売されてそうな弱弱しいものだった。

 「あの、こういった具合に。宣言した物を出せますので!なにか『シ』から始まる武器を使って倒しましょう!」

 「だから、お前はゾンビ倒せたらいいけど。俺たちはどうするんだ!俺たちには意識があるけど。記憶と名前がない。きっと。リンガーハットが高校球児に襲われている間のみ存在できるんだ!」

 困った。俺がリンガーハットを宣言してしまったために。複雑な事になってしまった。万事休す。そう思ったときに、レジのグェンさんが話始めた。

 「しりとりで好きなものが出せるならこの世界で裕福に暮らせばいいと思うよ!」


 あ!そうだ!地元の静岡を召喚して!そこで、好きなものを出せばいい!静岡には自衛隊もいるし、きっと高校球児ゾンビを倒してくれる!それでだめなら、カダフィ親衛隊でもだせばきっとどうにかなるに違いない!


 俺は、静岡県を宣言した。「ん」が付いたいのでイデアの静岡県の出現と共に俺は死んだ。

 高校球児ゾンビとリンガーハットの人々はイデアの静岡県で静かに余生を過ごしたそうです。

 

うーん。ドッスン