しりとりゾンビの逆襲 1

 『しりとりゾンビ』がやってきた。

   何故ゾンビなのか?何故しりとりをするのか?誰にもわからない。ただ、現実世界で『しりとりゾンビ』に捕まってしまうと概念の世界に放り込まれて、概念の世界でしりとりを武器に戦わないといけないのである。

 しりとりを武器にして戦うとはどういったことだろうか?当初は理解できず不安に思ったが、『紳士な、しりとりゾンビ』が丁寧に教えてくれた。いや、そんなに丁寧に教えてくれるなら戦う必要がないじゃないかと思ったのだが、そういった常識が通用しないのが『しりとりゾンビの怖さである』

 概念の世界で、リンゴを宣言するとイデアのリンゴが物質として現れる。銃を宣言したならイデアの銃がでてくる。このようにして、概念世界にしりとりを駆使してイデアの物質を召喚してしりとりゾンビと戦わないといけないのである。

 じゃあ、バズーカなり、ミサイルなりを召喚して戦えばいいじゃないかと思うだろうが、バズーカのイデアは実は武器そのもではなく、煙を発する緑色の大筒だったりする。すると、全く武器として役に立たない。ミサイルを読んだところで発射台、およびミサイルに従事する技術者たちが必要になってくる。

 あと決して、概念として大分類される物を宣言するべきではない、例えば武器と宣言した場合。武器のイデアに相当する概念以外の武器は決して使えないからだ、例えば、槍や日本刀はもう使えないことになる。

 なので、このしりとりゾンビと戦う際には、使い勝手が良く、それなりのッ殺傷能力を持つものを旨いこと選択して、殺傷する必要があった。

 ちなみに『しりとりゾンビ』の攻撃は『マッチョなしりとりゾンビ』が素手ぶん殴ってくるだけだそうだ。高校球児ほどの戦闘力と高校球児ほどの頭脳を持ち合わせているそうで、姿は高校球児そっくりだそうだ。概ね200体ほど襲ってくるから頑張ってね。と言われた。つまり俺は素手で殴ってくる高校球児200人と戦わなくてはいけない計算になる

 そして、私が初手に宣言してしまったのは、残念ながら「リンガーハット」だった。なぜ、リンガーハットを宣言したのかは自分でもわからない、ただとても混乱していたのだ。

 そして、何もないゾンビと私だけが存在する虚無の空間に長崎ちゃんぽんのレストランチェーンの「リンガーハット」のイデアが現れた。「○○バイパス店」と書かれた郊外型の店舗には、2世代前のアルファードと白い軽トラックが数台止められていた。俺は、とりあえずリンガーハットに駆け込む。中では土木作業員風の男性2名と小太りなファミリーがちゃんぽんを食べており、カウンターにはベトナム人留学生かと見受けられるグェンさんがレジの前にたっており、おばさん4人組の会計を受け付けているところだった。

 「あの、すみません。しりとりゾンビで、リンガーハット宣言しちゃいました。つまり、皆さんには申し訳ありませんが、ここにいる皆さんはリンガーハットのイデアの一部になりますので、すみませんが、僕と一緒に戦ってください。」

 その瞬間、店内に怒号と悲鳴が響き渡り、客は慌てて窓の外を見た。すると無数のイキった高校球児(ゾンビ)がリンガーハットのイデアを取り囲んでいた。

 つづく

うーん。ドッスン