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「備えゲー」が好きだと気付いたはなし。

最近サブノーティカというゲームを遊んだ。
海に囲まれた未知の惑星に不時着し、そこで採取できる資源や生き物を糧にサバイブしながら、脱出方法を探るというゲームだ。

探索や建築要素が大好きなので、序盤から大はしゃぎ。新たな道具を製作し、装備をアップグレードし、孤独でありながらも無駄に美を意識した拠点を築いた。
楽しさ速度は既に時速90km近くに達していた。


物語の真相を探るために拠点から離れる機会も増え、往復移動にストレスを感じ始めた頃、あるアイデアが浮かぶ。
「拠点をもう一つ築けば良いのでは?」
そういえばゲーム内に拠点を2つ作ってはいけませんとは誰にも言われていない。

俺は比較的安全かつ、資源が豊富で、未開の地にアクセスしやすい候補地をいくつか絞り、精査し、決定した。
俺は新たな拠点を築く為の準備を始めた。
建築する設備の優先順位を決め、脳内でシミュレーションし、食糧や建材をカバンや探索艇のストレージに詰め込んだ。
楽しさ速度を計測したところ、時速250kmを記録した。


第二の拠点を築き、物語の推進力が高まる。
巨大な潜水艦を建造し、物語の真相に近づくためさらに海の深くへと潜ってゆく。
そこでは新たな発見に溢れていたが、同時に想像以上に深く、広く、危険に満ちていた。
長旅の末行き着いた空間、底にぽっかりと空いた巨大な穴。
この穴の先にどれほどの脅威が待ち受けているのだろうか。
既に満身創痍、俺は恐れをなし引き返した。

俺は備えた。
深海で何が起こっても対処出来るよう、あらゆる装備をカバンに詰めた。
どれほどの長旅になろうともこの生命を維持できるよう、潜水艦のロッカーを食糧や動力バッテリーでいっぱいにした。
あらゆる事態を想定し、準備した。
後に計測され判明したこの瞬間の楽しさ速度は、時速920kmを超えていたという。


俺は全てを終わらせる時だと悟り、発進した。
前回の探索時に設置しておいたビーコンの信号と記憶を頼りに深く深くへと潜り、再び巨大な穴の前に辿り着くとーーー今も刻々と潜水艦の電力は消費され、生命維持の代謝が行われている現実に急かされるようにーーー間を置かずして飛び込んだ。

海底のさらに下は、この世の地獄だった。
有毒のガスが海水に溶け込み沈澱していた。巨大な捕食者が泳ぎ回り、海底火山が乱立していた。
地獄の門をくぐった俺は、生きた心地のしないままゆっくりと進み続け、ようやく精神の息継ぎが出来る空間に辿り着いた。
そこは巨大捕食者が卵を産み、無事に孵す場所。故に周囲に外敵はおらず安全だった。
また、海水に含まれる栄養分にも富み、この空間にだけ静かな生態系が出来ていた。
このさらに先、どれほど深くまで進むかは分からない。
食糧や電力は今も確実に減り続け、進退の判断を迫られた時、あるアイデアが浮かぶ。

「ここに、、、拠点を築けるのでは、、」

ゲーム内に拠点を3つ作ってはいけませんとは誰にも言われていない。
俺は周囲を観察し、ここで採取出来る資源を把握した。発電は海底火山の地熱で行える。
食用となる魚も、、、いる。
俺は長く険しい地獄の洞窟を引き返し、もう一度ここに戻ってくると決意した。迷いはなかった。

このあと、極上の準備体験が俺を待っているから


俺は第二拠点に戻ってくると、すぐに思考した。
安易に往復出来るルートではない。
一度に運搬できる量には限りがある。
現地で採取出来る資源、環境を最大限活用する。
これらを念頭に、そしてこれまでの経験を糧に、俺は史上最大の準備に取り掛かった。
俺はサブノーティカの面白さの本質は「備え」にあると確信した。

ーーこの瞬間、楽しさ速度は光速のおよそ1000分の一、時速1080000kmに達したーー



思えばモンスターハンターでも、強力なモンスター討伐に出発する前の入念な準備期間は、モンスターとの死闘と同等の充足感があった。

発売前の謎に包まれたデス・ストランディングのゲーム性を、小島監督がステージ上でプレイ映像と共に「備えが重要なゲームだ」と解説し、「これは俺のためのゲームだ」と思った。実際にそうであった。

俺は、自分がゲームにおいて探索や建築に最も楽しさを感じる人間だと思っていた。実際にはウヘウヘ楽しんでいるのだが、実はそれらにいつも必ず付随する「備え」にこそ、最上の楽しさを感じていたのかもしれないと、サブノーティカによって気付かされたというはなし。
あ、物語もめっちゃ良かったっすマジで。
サブノーティカ2もそのうちやろーっと!

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