Neural DSP Technologies Quad Cortexファーストレビュー

2021年6月8日に発売されたQuad Cortexを買ったのでファーストレビューします。
実のところファーストレビューと銘打っている理由がありまして、たいていの製品って発売当初は機能が足りないことが多く、今後のバージョンアップで化けることがよくあるので、今回もあえて「ファースト」にしています。細かいところを挙げるときりがないので大きな特徴部分のみをピックアップします。

自然な音質

音質についてですが、AD/DAのサンプルレートを確認できるソースが探した限りでは見つからないのですが、USBオーディオは48kHz固定ということで、おそらく48kHzではないかと思われます。一般的に可聴範囲での印象は自然です。ただ、工場出荷時の設定でOUTPUTやヘッドフォンで音を確認したときに、音量が小さいなと感じました。
というのは、一般的なマルチエフェクターやモデラーを何台か使ったことのある方はわかると思いますが、たいていの機器はアウトプットを12時ぐらいまで上げると十分な音量を得られると思いますが、Quad Cortexに関しては全開に近いところまで上げないと音が小さく感じました。

使いやすいディスプレイ

ディスプレイがタッチパネルになっており、タブレットと同様な操作性があります。基本的にディスプレイだけですべての操作を賄えるため、余計なボタンやノブはついていません。よくあるインタフェースを採用しているのでUIも基本的には悪くはありませんが、一部のトリガーポイントは説明書を読まないとわからないと思うので、説明書を最初に読んでおくのがおすすめです。

CPUパワーが許す限り、どんなセッティングも可能

クアッドコアSHARCを使っているため処理能力は高く、4行あるディスプレイの上2行と下2行で2つずつコアを使っているということで、負荷分散も工夫でき、さらに入力出力系統が2つ設定できるので、ギターともう一つの楽器を同時にコントロールできます。この辺りはLINE6 Helixのコンセプトと同様に考えてよいと思います。

エフェクターもキャプチャーできる

売りの一つのキャプチャー機能ですが、これはアンプだけではなくエフェクターもキャプチャーできる、いわゆるMooreのGE300と同じようなキャプチャー機能です。使ってみた感じ、キャプチャーのコツがあるようなので何度かTry&Errorを繰り返してみることをお勧めします。キャプチャークオリティーとコントロールパラメーターはGE300と同等レベルと認識しています。売り文句のAIについては、キャプチャーを調整されるセグメントでよしなに使われている程度かなと思われます。今のところあまり恩恵を感じません。

プレイモードが3種類

Fractal AudioのAxe時代から音切れのない運用としてシーン機能(Helixだとスナップショット)というものがありますが、Quad Cortexもシーン機能があります。プリセットやSTOMPモード(スイッチにエフェクターの設定を割り当てる)とあわせて3つの使い方ができますが、経験上ステージではSTOMPかシーンを使うことが多いのではないでしょうか。
特に自分はシーン機能をよく使いますが、この機能を使う場合に一部をSTOMPにしたり、そういう細かい設定は現時点では実装されていないようです。どういうことかというと、基本コンセプトが似ているHelixには、上段STOMP、下段スナップショット(=シーン)というように細かく指定できる設定があり、ステージで使うときはこれがあることで曲の一瞬だけエフェクトをかけたいときなどの「ちょっと使い」に対してシーンを割り当てなくて済むので音のバリエーションを広げられるのですが、Quad Cortexに関してはシーンはシーンしか制御できないため、その「ちょっと使い」にもシーン一つ割り当てる必要があります。この制約が想像以上に窮屈。外部MIDI制御することも考えましたが、シーン機能ではパラメーターを変更するとそのまま自動保存され、もともと設定したシーンのパラメーターが上書きされてしまいます。エクスプレッションペダルでコントロールするという手段もありますが、個人的には「そういうことじゃないだろ」的な意見です。バージョンアップ時にはシーンの保存方法も選択できるようになると助かるんですが。

現時点でのまとめ

結論からいうと、DTMをする際のアンプボックスとしては十分優秀、ステージで使う用途としてはちょっと機能不足かなと感じました。
この記事を書くにあたって比較対象をちらほら挙げていますが、一番のライバルはKemperだと思われます。Kemperは有料Rigのクオリティもありますし、かなり枯れた(時間がたって十分練られたという意味)システムなので、発売されたばかりのQuad Cortexと比較することはちょっと酷かもしれません。今後のOSアップデートやReampZoneで匂わせているQuad Cortexキャプチャーのライブラリ販売次第で大きく化ける可能性は十分あります。スペック的にはそれだけのポテンシャルを持っているはずなので、今後のソフトウェアエンジニアリングでどこまで練り上げることができるかを楽しみにしています。

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