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(5)来るべき言葉のために

2021年1月19日の午後2時、甲州街道にて

車を走らせていた。相方が新宿のヨドバシカメラに用事があるというらしかった。ポジフィルムの現像が済んだらしい。レンタカー車のコックピットに乗り込み、甲州街道まで出てからそのまんま東へ法定速度くらいで動いていると、バックミラー越しに目視できる車たちが、何の躊躇いもないスピード感で自分たちを追い越していく。先ゆく車たちは、だいたい80%くらいの確率で同じ赤信号に足止めを喰らっている。その追い越すという行為に意味はないだろう。

「左からの追い越しがどうのこうの」とか言いたいワケではないが、あなたたちイイ加減イイ大人なんだから、いつまでマリオカート引きずってんのよと思わんでもない。この歳になって分かったことは、成人式を過ぎれば「おとな」になれるなんてことはないということ。そして、この世に生を受けて20年も生きてきた人間がこれからそう簡単に変わることなんて早々ないということ。

犬の散歩という名目で暇つぶしをしているオッサンや、団地内の広場で井戸端会議をしているオバサマたち、偉そうなスーツ姿で偉そうに振る舞うオジさんも、自分たちとそう変わりやしない。増えていくのは経験だけだ。あとはそれ等に付随する感受性の刺激くらい。

お気付きの方もいると思うが、本題は故・中平卓馬氏の写真集の名前から拝借させて頂いた。「Provoke」という日本の写真史における大きな転換点を導いた団体があったのだが、話すべきことが多すぎるので、また別の機会にさせて頂こう。最後に。おれは急がないよ。来るべき言葉のために。来るべき言葉を聞き逃さないように。

本日の一曲

MASAKI SAKAMOTO『Best In Me Feat.Yukalicious』
医学博士であり神経内科医を務めながら音楽家として活動しているMASAKI SAKAMOTO氏の「ENDOTONES」から。名盤。無駄な音がない。Youtubeにはアルバムのフルバージョンしかなかったため、そちらのリンクをどうぞ。故・レイハラカミ氏とも交流があったらしく、アルバムでいうと「opa*q」に通じるものを感じる。サウンド自体は軽くてとても聴きやすいので、ぜひご一聴を。

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