ショートショート「猫が卵を温める」
その猫は、ミケという名前だった。ミケには生まれつき、子供を
生む能力が無かった。生物としては致命的ともいえるその自分
の特徴を、ミケは知らなかったし、またその飼い主である家族達も知ら
なかった。ただミケは、「なんか違う……」、と感じていた。
ある日ミケは、近くの柿の木の上で、一匹のスズメをしとめた。
そのときミケは、その木の上で、ある妙な物体を発見した。それ
は藁の中にうずもれた、小さな白くて丸いもの。1,2,3……、
4個のスズメの卵だった。
ミケの心に、何かピンとくる