信号を守る日本人と守らないフランス人~交通規則に対する日欧の違い

日本人はなぜ信号は守るのに横断歩道で止まる車が少ないのか?

2021年8月のJAF調査によれば、歩行者が渡ろうとしている横断歩道で一時停止した車の比率は全国平均30.6%、停止率トップ3は長野(85.2%)、静岡(63.8%)、山梨(51.9%)。ワーストは岡山(10.3%)、東京(12.1%)、青森(14.0%)だった。

逆に海外に住んで気が付くのが、歩行者が信号を守る国とそうでない国があることだ。特にヨーロッパでは、例えば日本と同じく信号をかたくなに守るドイツやイギリスと、車が来ないことを自分で判断して赤信号でも道を渡ってしまう、ラテン系のフランスやイタリアの間で歩行者の行動に大きな違いがある。アメリカでもニューヨークなどは基本的に信号を守らない国に入るだろう。


日本で明らかに車が来ないのに律義に信号が変わるのをじっと待つ人を置いて道路を渡るのは罪悪感を感じるものだ。


では、なぜフランス人歩行者は信号を守らないのだろう?フランスでは合理性を重んじ、リスクテイクは自己判断で行うとの考え方が基本にあるからだろう。車が来ないのに信号が変わるのををただひたすらじっと待つのは合理的でないし、リスクのあるなしは自分で判断するのが大人の考え方である。中には車とぎりぎりですれ違いながらも決して走らず悠然と道を渡るマダムなどを目にすこともある。


これは本当に危なくはないのだろうか?自分の経験では、歩行者が走ると車も歩行者横断のスピードを判断して速度を上げて突っ込んでくるので実はリスクは高くなる。確かにゆっくり歩いている歩行者にスピードを上げて突っ込んでくる車は見たことがない。


これは何を意味するのか?実は、車のドライバーは常に、歩行者は信号のシグナルや横断歩道の有無にかかわらず、道を渡ってくるものだとの認識している。だから常に前方に無意識の注意を払い、歩行者の行動に対応できるようにしている。だからこそ、歩行者による無謀とも思える道路横断は実は長い間に培われた暗黙の了解があるがゆえに、こちらが思うほど危なくないのだ。


これと真逆なのが日本である。日本では誰もが信号を守るというルールが厳然とあり、皆がそれを律義に守っている。日本人は信号はそれを守るものという考え方がしみ込んでおり、ルールを状況に応じて守るべきか否かの判断はしないのである。状況によってはルールを守ることが不合理であるという判断をするフランス人とは180度違うのである。これは、日本で信号を無視して道路を渡るときにはリスクがとても高いことを意味する。車は、歩行者が赤信号で渡ってくることを全く予想していないので、フルスピードで交叉点に侵入する。横断歩道のない道を渡るときも同じ状況である。したがって、歩行者は車のドライバーが自分を予期していないというリスクを十分踏まえたうえで、道を渡らないと危ないのである。外国人向けにボランティアで観光ガイドをしている自分が来日観光客にまず注意するのはこのことである。


では、横断歩道で車が止まらないのはどうしてなのか?


では、なぜ日本では、信号のない横断歩道で歩行者が待っていても車は止まらないのだろうか?横断歩道で横断しようとする歩行者がいれば車は一時停止をしてその通行を妨げない、との交通規則が厳然とあるのに全国平均でも7割もの車は一時停止をしないのが実態である。また、横断歩道を横断中にも拘わらず、車が徐行のそぶりも見せずに走って近づいてくることが多々ある。これは日本に帰ってきて愛犬と散歩して日々怖いなと感じることである。先日も数えたら、実に5台の車が横断歩道を渡ろうと待っている私を無視してスピードを緩めずに通り過ぎて行った。


ルールを守る日本人は横断歩道ではどこに行ってしまうのだろうか?私なりの解釈は、車は信号がないと止まらなくていいと(勝手に)思っているドライバーが多いということであろう。信号ルールの拡大逆解釈である。規則はあるのに信号の有無でこんなに違ってしまう日本人って・・・。違いは、信号という規則を守る強制的かつ外見的な判断基準があるかないかである。逆に言えば、信号がない時にドライバーは自分で判断をするのだが、ルールを守らないドライバーは自分は急いでいる、自分が通った後で渡ればいい、無視しても罰せられることは無いなどなど都合の良い解釈をして、歩行者優先という大原則を忘れてしまうとしか思えない。車に対して歩行者は弱者で守るべき対象という教育を徹底していくしかないのだろうが、事故が起こってからでは遅いという事をドライバーは肝に銘じてほしい。ドライバーであるあなたは、歩行者でもあるのだから。


PS:横断歩道の直前、歩行者に危険がある場所(狭い道のカーブで歩道なし、など)、横断歩道なしで学童が道路を渡る場所など、道路に人工的なハンプを設置し、強制的にブレーキを踏みスピードを落とさざるを得ないようにする試みがやっと日本でも本格化しているようです。

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