好きな本をただただ紹介する②

今回紹介するのは伊坂幸太郎さんの『終末のフール』。

この作品は「8年後、地球に小惑星が衝突し、地球が滅亡する」と宣言されて5年が経過した仙台のある団地に住む人々が主人公の連作短編集です。

ここで少し脱線します。
この作品は8つの短編集によって構成されているのですが、各話のタイトルが興味深い。
「終末のフール」
「太陽のシール」
「籠城のビール」
「冬眠のガール」
「鋼鉄のウール」
「天体のヨール」
「演劇のオール」
「深海のポール」
お笑い好きの方ならば、某芸人さんの漫才ネタを想起するのではなかろうか。ちなみに私は2回目に読んだときに気づきました。

話を戻します。
地球が滅亡する。そんな荒唐無稽に思える題材ではあるけれど、内容はSFというよりも、残された時間で人はどう生きていくのかということを強く考えさせられる。

この作品は8つの短編集で構成されているので、8人それぞれの生き方がある。共通点があるとすれば、残された日常をとにかく大切に生きてくということだと思う。ただ、この作品の鋭いところは登場人物の中には必ずしもそうなってはいないキャラクターもいるということ。つまり、人生を諦めてしまうということ。私はその場面を読むのがとてつもなく辛かった。確かに「もう無理だよ」という感情に苛まれるのは当然であるが、「前向きに生きていこう」という話が続く中、急に「人生を諦めてしまう話」が挿入されるので、現実を思い知らされる。

自分ならどうだろう。人生を諦めてしまうのか、あるいは限りある日常を大切に生きていくのか。

読んだときの感情や自分の置かれている状況によって感想は変わってくると思うので、一年に一回は読み返したい本だなあと思う。

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