「キリキザン」

キャッチコピー:罪人よ、生きたければ抗え

あらすじ:2001年、池袋駅付近で大量殺人事件が起きた。奇跡的に助かった人は2人だけだった。事情聴取するにもできる精神ではなかった。後日その二人は自殺した。警察はその犯人を追う手掛かりはなくなった。それから、17年がたった。中学2年の安達ヒロトは初めてできた彼女に振られていた。彼は酷く落ち込んでいた。授業中、彼女ネタでいじられるヒロト。我慢の限界を超えたヒロトは言い返そうとした時、体に激痛が走りだした。彼に何が起きたのか!?それ以降、彼は壮絶な人生を送り始める。

第1話:「皆様。おはようございます。今日の天気は曇りです。」
ニュースをつけながら朝食を作る音が聞こえる。
栗色の髪で可愛らしい恰好をした女性は階段前で大声を出す。
奈央「ヒロトぉ~!ご飯よ~!」
二階の自室で寝ているであろうヒロトに声をかける。
ヒロト「ぁ~い。」
重い体を起こし、食卓へと向かう。
黒髪に寝ぐせがついてだらしない。
母の作る目玉焼きとソーセージ。一番これが好物だ。
奈央「ねぇ、ヒロ君。」
ヒロト「なに。」
奈央「…好きな人とかいるの?」
ヒロト「べ、別に。いないよ。」
彼は一か月前にできた彼女のことを考えていた。
奈央「ふ~ん。」
「緊急速報です。2001年に池袋駅周辺で起きた1046人殺された重大な事件です。犯人が見つからないまま、調査は謎のままになっていました。しかし、当時の現場に居合わせた人物がもう一人いたと報告がありました。当時は…」
母と僕はそのニュースを黙って聞いていた。ボクはその事件はあまり知らない。物心ついた時は父はいなかった。警察官だったらしい。
学校の支度をして出かけようとした時、
奈央「ねぇ、ヒロト。」
呼び捨ては必ず真面目な話をする合図だ。
僕は玄関で立ち止まる。
奈央「…帰ったら死んだお父さんの話、しよっか。」
僕は小さく頷いて、家を出た。
下り坂を自転車で下って、線路で電車が通りすぎるのを待つ。
??「おーい、ヒロトぉ」
後ろから馴染みある声がした。友達の山城拓也だ。
小学で一番仲よしなやつだ。けど中学は違う。
ヒロト「拓也ぁ。おはよぉ。」
拓也「にょっすぅ。秋穂とうまくやってんのか。」
秋穂は僕の彼女だ。付き合って1ヵ月。
小学校5年から転校してきたから拓也も知っている。
ヒロト「うーん。ちょっとなぁ。誘っても断られるんだよね。」
拓也「もっとグイグイいけよ。秋穂の趣味とか聞いたのか?」
ヒロト「趣味かぁ。アニメとか、かな。」
拓也「女子はアニメよりドラマなんじゃないか?」
途中まで秋穂との会話デッキを相談した。
教室に着いて秋穂と話そうとしたが彼女の友達がいて話しかけづらい。
移動教室の時間、一人でいるところを話しかけた。
ヒロト「あ、あの。今日一緒に帰りたいなぁって。」
秋穂「うん。いいよ。」
やった。ついに一緒に帰れる。僕は素直に喜んだ。
放課後、緊張しながら秋穂を待った。
秋穂「ごめん。おまたせ。待った?」
ヒロト「全然!大丈夫。」
秋穂の家の近くまで自転車を押しながら色んな話をした。
僕の好きなアニメを知ってたり、秋穂の好きなものも勉強しようと思った。
秋穂「それでね、言いにくいけどさ、私たち別れよ。」
ヒロト「…え?」

第2話
奈央は鼻歌を歌いながら夕飯の支度をしている。
『ガキに話していいのか』
奈央「うるさいわね。…もう時間がないのよ。」
『そうだな』
玄関を開ける音がする。
奈央「おかえり。」
かわいい息子の顔をみると、両目に涙が浮かんでいた。
ヒロト「母さん。」
奈央「どうしたの!」
ヒロト「別に、何でもないよ。でも、ごめん。
ご飯いい。」
奈央「ちょ、ちょっと?ヒロト!」
そのまま二階の自室に上がってしまった。
奈央「ん~、どうしようかしら。」
『女の臭いがした』
奈央「へー、やっぱ好きな子いたのかぁ。じゃぁ振られたのかしら。」
『人間という雑種は分からん』
奈央「ふふ、面白いわよ?」
ーー「母さんが誰かと話してる?いやどうでもいい。頭痛がする。胸が痛い。なんで、なんでだよ。これからだったのに。くそっ…畜生…ちく…しょ…ぅ」
(夢)
秋穂「もう別れよっか。」
ヒロト「え?」
秋穂「いやぁ、もういっかなぁって。それにさ、君。匂うね。」
秋穂が僕の近くに来て、クンクンと嗅ぐ。
ヒロト「なっ!ちょ、ちょっと!」
秋穂「はぁぁ、私の好きな匂いぃ。でももっとおいしくなりそう。
だから別れるの。君を辛い辛い気持ちにさせてどん底に堕として、君の力を解放させるの。」
ヒロト「はぁ?な、なに言ってるか」
秋穂「そのうちわかるよ。キリキザン。」
ヒロト「キリキザン?」
秋穂「じゃあね、あたしのキリキザン。」
胸をおされ、そのまま落下していく。
ヒロト「待って!別れたくないよ!秋穂!秋…!」
ーー
「秋穂!」
そこは自分の部屋の天井。夢か。
「うっ!」頭痛がまだ収まらない。むしろ、悪化してる気がする。
スマホをみる。2時47分。変な時間に起きてしまった。
トイレに行く。一階はまだ明かりがついていた。
ヒロト「まだ母さん起きてんかな。」
覗き込むように一階をみる。その瞬間、おぞましい何かを感じ取る。
『ダレ?』
悪寒がして身動きが取れない。
ヒロト「ぼ、僕だよ。ヒロト、ヒロトだよ。」
声を震わせながら言う。
すると、母が顔を見せて微笑む。
奈央「あら、起きちゃったの。ごはん食べる?学校で何があったか聞かせてよ。」
深夜の3時。親子二人で食卓を囲むのは初めてだ。
僕は学校であったことを話した。
奈央「そっか、振られちゃったんだ。辛かったね。」
スープを飲もうとする。ゆったりとスープの油が『弱っ』という文字に
変わっていく。
しかし、ヒロトはそれに気づいていなかった。
彼は頭痛がする中、別のことを考えていた。
夢で秋穂に言われた「キリキザン」とは何か。
奈央「なぁに、考え込んで。母さんに言ってみなさい。」
ヒロト「キリキザンって、何?」
『ガキ!それをどこで知ったぁ!』
ヒロト「ひっ!」
奈央「ちょっと!ヴァンちゃん!だめでしょ。」
ヒロトはおびえている。
奈央「ごめんね。ヒロ君。怖かったよね。ごめんねぇ。」
ヒロトは怯えて眠れなかった。朝になっても頭痛も増す一方で、何か力も増すような気がしていた。
ヒロト「母さん、今日学校休んでいい?」
奈央「行きなさい!根気よ、勉強しなさい。バカ息子。」
ヒロトはあまりの暴言に唖然になった。
ヒロト「別にそんな言い方しなくても。」
学校の準備をしてぐったりして出ていった。
奈央「あら、学校行ったの?休めって言ったのに。」
洗濯物を干して帰ってきた奈央はヒロトがいないことに気づいた。
『ガキはいないお前と会話していたかのようだったが。怪しいな。昨日のキリキザンというのも。』
奈央「...そう。怪しいし、心配ね。」
『かすかにヤツの臭いを感じた。解放が近いのかもしれん』
奈央「それはまずいわね。ちょっと乗り込もうかしら。」

第3話
幼稚園児「ばーかばーか、女に振られて弱ってるぅ。」
通りすがりの主婦「あなた、死ねば?楽になるわよ?」
ランニングの人「君は何もかも諦めた方がいいよ。」
ヒロトはなぜこんな暴言を言われるのかわからなかった。
逆に他人から見ると、とても体調が悪そうな少年に見えたのだ。
まるで何かに呪われているかのように。
話しかけようとしても話しかけられないのだ。
声が出ないというか悪寒がするというか。
ギリギリ学校に到着したころは授業開始のチャイムだった。
担任「おい、早く席につけよ。」
ヒロト「すいません。」
授業中の黒板も教科書の文字も自分に対する悪口を書いてるように見えてきた。
ヒロトはだんだん腹が立ってきた。何もしてないのに。
とおる国語の時間。
先生「秋の季節にちなんで俳句を考えましょう。」
ウザイ生徒「秋?秋穂ってことかぁ?」
生徒「あははははっ」
ウザイ生徒2「タカちゃん、やばっ!そんないじってやんなよぉ。」
ヒロトは我慢の限界だった。
色んな暴言や感情がどんどん流れてくる。頭が勝ち割れそうだった。
ガタン!
ヒロト「うぅぅ、…してやる。…ろしてやる。殺してやる!」
ウザイ生徒「お前、ヒロトふざけ…」
その生徒は動かなくなった。暫くすると、倒れて血を吐き出した。
ヒロト「うがぁぁぁぁぁあ!!」
ーーぷつんーー
ヒロト「はっ!」
気づいたときにはもう教室中が血だらけだった。
ヒロト「...ぼ、ぼくが殺したのか。み、みんなを」
秋穂「ずいぶん暴れたねぇ。」
秋穂は教卓に座っていた。
ヒロト「あ、秋穂。これは、僕がやったのか。」
秋穂「そうよ。君がみんな殺したの。キリキザン。」
ヒロト「...う、うえ、おぇぇぇえ」
あまりの現状に耐え切れず嘔吐する。
ヒロト「そんな、僕はただ苦しくて。皆んな悪口を。何もしてないのに。」
秋穂「そう。君は何もしてない。でも、なんでそんなに苦しいのか?それはね、君の精神を壊すのが解放条件だったの。」
泣き崩れているヒロトに近づく。
秋穂「まぁいいや。じゃあ、極上のごちそうをいただきまぁす。ばいばーい、ヒロト君。」






#週刊少年マガジン原作大賞


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?