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最強兄貴、魔法少女の妹を陰ながらサポート 3話「妹の友達に好かれても正直困る」

夕方の公園にて、ヤミナンダが出現!
 そこへ駆けつけるライガードだったが……。
「ん? どういう事だ?」
 ヤミナンダと交戦しているのが青い魔法少女・エンゼドルフィン単独だったのだ。
「確か、生理最終日でムラムラしていた娘だ。おっと! プライベートな事だ。忘れてやらねば……」
 キャリバーでヤミナンダの攻撃を弾いて、エンゼドルフィンの元へ着地する。
「味方の3人はどうしたでゴザル?」
 ドルフィンは目を逸らし、気まずそうに説明する。
「じ、実は……。私以外、補修を受けていまして……」
 まさかの補習授業による参戦不可!
 鉄仮面の中で鋼太朗は苦々しい顔で絶句する。
(よりによって補修かーっ。妹よ。優等生に成れとは言わんが、せめて補修はギリギリ回避しろよ……)
 戦いに集中し、冷静に打開策を考える。
(だが、いないものは仕方ない。この娘と俺でどうにかするしかあるまい……)
「お主一人で浄化技は可能か?」
「出来ますけど、4人合同技より弱いですよ?」
「ならば、拙者がギリギリまで敵を弱らせれば浄化出来そうでゴザルな」
 ライガードは右腕を突き出し、右腕装甲に内蔵したガトリングを展開。
 ガトリングは回転し、銃口から火を噴く。
 ヤミナンダはベンチを掴み上げ、投擲して反撃する。
「フン。無駄だ!」
 浄化すればベンチも元通りになるから、壊しても良いやな精神で心置きなくガトリングを向けて粉砕を試みる。
 目論見通り、破砕!
 ――だがしかし、その破片がエンゼドルフィンの腿へぶつかり、怪我させてしまう。
「あぁっ! 痛っ!」
 ドルフィンは負傷箇所の太腿を押さえて苦悶する。
「くっ! しまった!」
 ライガードはヤミナンダの片足を掴み、上空へ。ヤミナンダを逆さまにして頭部から地面へと叩き込んだ。
「よし! しばらくは動けまい」
 すぐさま、エンゼドルフィンをお姫様だっこして戦場から一旦、離脱をするのだった。
 この時、ドルフィンは少しドキッとするも、重要な事に気付く。
(あれ? 鼓動がある? それに呼吸も……。ロボットじゃなくて人間……?)
 謎の仮面騎士に抱きかかえられる事で呼吸や心臓の音が聞こえるのだった。

 同じ時間。女子校中等部教室にて、6人ほどの生徒が補習授業を受けている。
その中に小春・鳳火。そして、巴がいた。
 小春は羊の夢でも見ているのかと言うぐらいにうとうとと眠る。
 鳳火は「理科とかさっぱりピーマンだし」と音を上げていた。
 巴は渋い顔でシャープペンを動かす。
 内心、(お兄ちゃんなら要点掻い摘んで分かりやすく教えてくれたのになぁ)とぼやくが、
 首を左右へ振って(あー駄目だっ! お兄ちゃんの助けを必要としない自立した大人の女になるんだから!)と、自分に言い聞かせて勉強に集中する巴であった。

 戦場となっていた公園から少し離れた場所にある公民館の裏側。
 そこにライガードとエンゼドルフィンは避難していた。
「すまぬでゴザル」
 頭を下げる鉄仮面重武装騎士。
「いえ、いいんです。避けられなかった私も悪いですし」
 ドルフィンは謙遜して首を左右へ振った。
「あのー。私の正体、誰にもバラしませんよね?」
「無論でゴザル」
 心の中では(もう既にこっちは知っているからな)と呟く。
 エンゼドルフィンは変身解除。勇魚に戻った。
 勇魚の制服のポケットからハンカチやティッシュ・絆創膏を取り出していき、応急処置をしていく。
「ほう。準備が良いでゴザルな」
「あのー。仮面、取らないんですか?」
「え?」
「だってほら、被ったままじゃあ息苦しいじゃないですか。それに蒸れますし」
「あ、あー。う~む……」
 どう返答すべきか、非常に困惑する。
(この娘、俺の顔知らないよな? 少なくとも俺は直接顔を合した覚えは無い。だが、巴が持っている写真などで俺の顔を知っている可能性はあるかもしれない……。やはり、素顔を見せる訳にはいかないな)
「そ、それは出来ぬでゴザルよ……」
「どうしてですか? 健康を害してまで顔を見せられない理由って何ですか?」
 まじまじと見つめてくる勇魚。
 その真っ直ぐな瞳が余計に鋼太朗兄ちゃんを苦しませる。
「えーっとその……」
 どうする? どうする? 言い訳・屁理屈を脳から振り絞る。
「せ、拙者は不細工でゴザルよ。お主のような麗しい少女には見ない方がいいグロテスクな顔なのでゴザル……」
(これでどうだ? 不細工なら見たいと思わなくなるだろう?)
 こうでも言えば、引き下がってくれると確信していた。だが……。
「私、気にしませんよ?」
「え?」
 顔を赤くし、デレデレした様子で彼女は喜々と語り出す。
「守ってくれる人・力持ちな人・お姫様抱っこしてくれる人が好みなんです……。男らしくて逞しい人なら、顔の美醜は気にしません!」
(う、嘘だろおいーっ!)
 え? 俺、この娘のタイプの人間だと思われたのかよ!
 勘弁してくれと鋼太朗は心の中で叫んだ。
「嘘でゴザルよ~。女子は皆、イケメンが好きなのでゴザろう?」
 茶化して煙に撒こうと試みる。
「私、女みたいな顔でなよなよ・チャラチャラした男、嫌いなんですよ」
 物凄く本気で・低いトーンで嫌悪たっぷり込めて勇魚はそう宣言した。
「私をお姫様抱っこ出来ないような細くて弱い男は嫌いなんですよ~。逆に力持ちで頼りになる人ならどんな醜い顔でも愛せます!」
 大人しい清純系かと思いきや、結構肉食系。ぐいぐい食い下がって来るではないか。
 これには鋼太朗も気圧されてしまう。
(うわ、火に油を注いでしまったか……。しかし、妹の友達なんかを恋人に出来るかよ。兄弟と友達が恋人になる。自分がその立場だと居心地悪くて敵わん)
 何とかこの場の流れを変えなくては。
 そうだ! 大事なことを忘れていたとライガードは立ち上がる。
「そろそろ敵が再起するかもしれんでゴザル。では、お先に!」
 地を軽く蹴り上げて、弧を描いて飛んでいく重武装騎士だった。
「あっ! もぅ!」
 逃げられて悔しがる勇魚だが、ぽーっと硬骨な顔に変わる。
「でも、格好いい……。仮病使ってお姫様だっこして貰おうかな~」
 などと下心を出すが、おっと! いけないと、髪を揺らして首を振る。
「いやいや、今日は私一人なんです。真面目に戦わなきゃ!」
 変身コンパクトを構え、エンゼドルフィンへと変身。
 ジャンプし、敵地へと戻りに行く。

 公園ではとっくに戦闘は再開中。
 ヤミナンダがボール弾を連射! 
 対するライガードはライフルで次々とボールを打ち落としつつ接近。
 ヤミナンダ本体への攻撃もしっかり実行。着実にダメージを与えていた。
 ライガードはライフルの柄を手の甲に当てて、余裕の素振りを見せる。
「さて、どこまで追い詰めておくべきか……。弾切れまでさせておくか。しかし、こいつに弾切れという概念はあるのか……?」
 ヤミナンダが巨大な拳を振るう。
 ライガードはライフルを投げ捨てて、拳で応戦。
 いとも簡単に殴り返した。
「フッ。戦い自体は余裕で出来るな。しかし、浄化が出来ないのは致命的だ。歯痒いものだな」
 そうぼやいている中、青い魔法少女が燦然と現る!
「お陰で休憩取れました! もう大丈夫です!」
「よし! 浄化技の準備をするでゴザル。単独故、集中してフルパワーのを頼む出ゴザルよ」
「はいっ!」
 エンゼドルフィンは両眼を閉じ、集中……。
 ステッキに青い光が灯り、その青い光が膨張していく。
 その間にライガードが飛び蹴りをかましてヤミナンダを転げさせる。
「よし! 今でゴザル!」
「ホーリードルフィンシャワー!」
 イルカのエフェクトを纏った青い光がヤミンナンダを包み込み、浄化。
 公園は瞬く間に修復。
ヤミナンダもサッカーボールへと戻るのだった。
「ふぅ。終わった……でゴザル」
「待ってください!」
 ドルフィンに呼び止められ、仮面の中で渋い顔をする。
「私の結婚相手になってくれませんか?」
 真剣な面持ち。紅潮した頬。熱い視線で見つめる。それはまさに恋する乙女だった。
(おいおい。話が飛躍し過ぎ取るぞー)
「私じゃ駄目ですか? 家庭的で尽くすタイプですよ?」
 癒し系に見るが、とんでもなく肉食系ではないか。
なりふり構わないなこいつ。
(色仕掛けかよ……。しかし、俺は正体を明かす訳にも妹の友達と恋仲になる訳にもいかないんだ)
「ふむ。残念ながら拙者は……。そう! 故郷に婚約者がいるのでゴザル。故にお主と夫婦にはなれぬ。では、さらば!」
 咄嗟に思いついた言い訳を吐き捨てて、一目散に飛び去る。
 ジトーっと怪訝な眼で鉄仮面騎士を見つめる青の魔法少女。
「さっき言わなかったのにいきなり婚約者とか言い出しましたね。胡散臭い。あれは咄嗟に思いついた嘘ですね」
 女の勘、恐るべし。容易く見破られてしまうのだった。

 女子寮に帰還する勇魚。
 そこではぐったりとした小春・鳳火・巴が待っていた。
 補習授業に疲れたのだなと、勇魚は苦笑いをした。
 4人は1部屋に集まって、菓子を食べながら雑談する。
「またあの謎の騎士に助けられたかぁ」
「あの人の助力がないと勝てませんでしたよ」
「人? ロボとか言ってたじゃん?」
 鳳火の指摘を受け、しまったとぎこちない顔になる勇魚。
「いやぁ、正体は明かせないけど人間だとは教えてくれたもので……」
「へぇ~。アレ人間だったんだ。それで、他に何か知れた?」
 巴が神妙な面持ちで訊ねる。
「別世界から来たみたいで、故郷に婚約者がいるとか言っていました」
「そうなんだぁ。ちぇー彼女持ちかぁ。小春、がっかりー」
 白馬の王子様だと妄想していた小春は非常に残念に思う。
「異世界人かぁ。なら、あの重たい鎧でも軽々と動けて、強いのも納得か」
 鳳火はライガードについて異世界人だと納得する。
 巴は顎を摘まみ、渋い顔しながら「異世界人……。婚約者……」と、呟く。
 兄ではないかと疑った事も有ったが、その可能性は大幅に薄らいでいく。

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