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最強兄貴、魔法少女の妹を陰ながらサポート 2話「いきなり! レジェンドエンゼ全滅の危機?」

巴たちの通う女子校の中等部。現在は昼休憩で魔法少女レジェンドエンゼの4人は机を隣り合わせて、昼食を取りながら会話をしていた。
「ねぇみんな。あの騎士の正体、何者だと思う? あれは白馬の王子様! 金髪碧眼の外国人のイケメンだと思うなー。きゃは!」
 ニヤニヤと妄想に耽るのはエンゼアリエス=ピンクの変身前、小春。
「いいえ。あんな重武装で軽やかに動ける人間なんてあり得ませんよ。あれはロボット。そうに違いありません」
 青の魔法少女・エンゼドルフィンに変身する勇魚は人間ではないと推測する。
「いいや。あれはただの不細工だね。運動神経良いだけのゴリラ男だっつーの」
 小春は不服そうに「そんなこと無いよー」と口を尖らせる。
「あれだけ動けて強い。つまり、戦いに余裕がある。それなのに顔を隠す。人前で見せたくないような不細工意外に考えられないっしょ」
「まぁ、それも一理ありますよね。強くて顔に自身が有るなら、邪魔くさい兜被る必要ないと思いますし」
 勇魚の同調を受け、鳳火は「でしょー?」としたり顔を決める。
 そんな中、気まずそうな顔で沈黙をするのは紫の魔法少女・エンゼサーペントに変身する少女の巴。
「巴ちんはどう?」
 小春に話を振られ、巴は慌てた様子で「い、今の所は何とも言えないかなー。アハハ……」と、濁した。
 その一方、脳内で巴は一人呟き、推測する。
(い、言えない……。あの謎の騎士がウチのお兄ちゃんかもしれないって……)
 謎の騎士(ライガード)の戦闘や仕草の事を食事しながら、思い起こす。
(背格好は近い。だけど、似た背恰好の人なんて幾らでもいる。だから、根拠にはならない。あの時、近くにいた。でも、単なる偶然説もある。今の所は証拠がないんだよね)
 兄の事を疑うも、冷静に考えると証拠がないという結論に達し、巴は長い髪をシャンポーのCMのようにわざとらしく靡かせる。
「……フッ、クールビューティーで大人の女の巴ちゃんは浅はかな断定はしないもーんだ」
「ですよね。巴さんの言う通り、現時点では判断材料に欠けます」
 不服そうに小春は悄然。
「まぁ、そりゃそうだけどぉ~」
「ま、変な期待はしない方がイイっしょ~。実は敵かもしれないし」
「フッ、鳳火の言う通りだよ」
 巴はクールぶって恰好付ける。
 逆に心の中では(アレがお兄ちゃんだったら困るよ……。いつまでもお兄ちゃんに助けられている甘ったれって事になるじゃない……)
 頭の中でふと思い出す昔の姿。
 それは5歳ぐらいの巴が泣きながら兄・鋼太朗におぶって貰った時の事……。
「今度はあの得体のしれない騎士に助けられる前に倒そうよ」
巴の提案に鳳火は不敵に笑んで「さーんせい! さっすが巴! いよっ! クールビューティー」と、茶化す。
「そうですね」
「今迄も4人で頑張って来たもんね! 確かにあの騎士は気になるけど、これからも4人でやっていこうね!」
 と、小春がピンクの戦士らしく、場を〆た。
 4人の絆と使命感が一層強まった。
 強い決意を胸に、巴は拳を篤く握る。
(泣き虫で甘えん坊だった妹キャラは卒業したんだ。今のあたしはクールビューティーな大人の女なんだ)……と、己に言い聞かせながら。
 
 その後、時間が有れば鋼太朗はライガードへ変身してはスペックのテスト、戦闘訓練を自主的に行った。
 夕方。山の中にて、大木を5本ほど大剣で一気に真っ二つにする。
「ふぅ。切れ味はこんなものか……」
 剣先を地に刺して、手を休める。
「威力はスゴイが、如何せん重い。キャリバーはほいほい振り回せる代物ではないな」
 ライガードの姿から鋼太朗の姿へと変身解除。近くの自転車へ乗って、山を下った。
 逆風を受けながら、ブレーキを適度に掛けて下り道をすいすい降りていく。
「山の上の高校に通うのはしんどいだけだったが、性能のテストをやる場所としては都合良いな。今後もトレーニング場所にしておくか……」
 と、考えながら自宅を目指す鋼太朗であった。
 その時、変身ブレスからたぬっきーの声が。
「大変だ! ヤミナンダが現れた!」
 変身ブレスに敵の位置を示す地図が出現する。
「ここか、よし分かった。任せろ」
 鋼太朗は気険しい面持ちとなった。
 すぐさま自転車を止めて、周囲を見回し、変身。
 自転車を軽々と担いで大ジャンプ。
 長距離をあっという間に移動して、自宅に自転車と勉強道具など入った鞄を置き、即座に目的地へと赴くのであった。

 ボンジュールという美容院付近へと到着するライガード。近くの建物の合間でたぬっきーと合流する。
「おい、どうなっている?」
「あれを見なよ」
 戦況を見やる。巨大な鋏を振るうヤミナンダ。
それを避けるだけで精いっぱいなレジェンドエンゼたち4人。
 顔を赤らめ、苦悶している様子。
「防戦一方じゃないか。この前と違って、攻撃しようともしていない」
 たぬっきはー無駄に神妙な面持ちで語り出す。
「それには深い理由があるんだ……」
「何?」
「今日は魔法少女レジェンドエンゼにとって最大のピンチな日なんだ……」
「何だ? 勿体ぶりやがって」
「実は今日って……メンバー全員の生理周期が重なっている日なんだ……」
 無駄にシリアスに告白するので、余計にライガードは気が抜け、ズッコケそうになる。
「俺は男だからさっぱり分からんが、そういう事もあるのか?」
「あぁ。フェニックスは生理初日で、今物凄くイライラしているんだ」
 確かに言われてみれば、エンゼフェニックスは憤慨しているかのように歯噛みをしているではないか。
「ドルフィンは生理最終日で、ああ見えてムラムラしているんだ。おっぱいもパッツパツに張っていて感じやすい日なんだ。昨日の夜もこっそり自家発電を……」
 ドルフィンは赤面しながら妙に色っぽく、息を切らす。
「プライベート暴露、止めてやれ!」
「ちなみに君の妹さんは生理2日目で……」
 ライガードはたぬっきーの頭を掴む。いつでも握り潰せるぞと脅すように。
「止めろ……。1番聞きたくない奴だ」
 たぬっきーはヤミナンダを睨み、わなわなと怒りの拳を握る。
「くっそぅ。皆が生理の日に現れるなんて……。スケベ狸め!」
「スケベ狸はお前だろ!」
 ライガードの仮面の中で鋼太朗は渋い顔を浮かべる。
「むむ……。要するに皆、体調不良。フルパワーを出せないという解釈で良いのだな?」
「うん。まぁ」
 魔法少女の妹を持つ兄は周囲を見渡す。
 街中、ヤミナンダの大暴れによってズタボロに建物や車が切り裂かれている。
「――だが、街に被害が既に出ている以上は浄化で元通りにして貰わんとな」
 やれやれとライガードは首をコキッと鳴らす。
「お前はあいつらにトドメの浄化技を座ったままでも打てるように準備させておけ」
「えっ?」
「のんびり座りっぱなしでも技が撃てるよう、この俺が下準備してやる」
「オッケー!」
 ライガードはコンクリートを蹴り上げ、戦地へ急行!
 たぬっきーもレジェンドエンゼ4人の元へ浮遊して行く。

 息を切らし、遂には膝をつくエンゼアリエス。
「も、もう……駄目っ」
「ちっきしょぉ~。よりによって何で皆が生理の時に来やがるし!」
 フェニックスも思うように戦えず、悔しがる。
 ドルフィンだけは心の中で(あぁ。早く帰ってオナニーしたいな)とこっそり思う。
 そんな中、ただ一人。サーペントがステッキを構えて立ち上がる。
「あたしはクールビューティーな大人の女……。完璧でカッコイイ女……。こんな所でっ!」
 と、独り言を言って自己暗示掛け、心の中では(いつまでもお兄ちゃんを頼っちゃ駄目なんだから……)と更に暗示を掛ける巴=エンゼサーペント。
 ――だが、戦闘の疲弊&不調でステッキを手から落してしまう。
 そんな事お構いなしに、敵の巨大鋏が強襲!
 もうお終いだっ! そう断念してサーペントが両眼を閉じたその時だ。
 重武装騎士のキャリバーが巨大鋏を受け止めた。
 ライガードが敵の猛攻からまたもや、レジェンドエンゼ達を守った!
「でぁりゃああああっ!」
 力一杯剣を振るい、巨大なモンスター・ヤミナンダを吹っ飛ばす。
「ふぅ。危機一髪。……でゴザったな」
 ヤミナンダは腹を天へ向けて伏した。……かと思いきや、体中からハサミをミサイルの如く、発射していく。
「何っ! こんな事も出来たのか!」
 ライガードは一旦、キャリバーを消す。そして、両足を強く踏み込み……。
「フッ、ならばアレを使うか……」
全身の装甲からハッチが開き、小型ミサイルが次々と出現・展開!
「全装甲解放! フルバースト!」
 ズダダダダ! まるで全身兵器のロボットの如く、ライガードの装甲内から小型ミサイルが次々と飛来!
 ミサイルは鋏を追尾し、撃ち落とす! 相殺していく!
 魔法少女モノから急にロボットモノになったような急展開。
 レジェンドエンゼ達は唖然とミサイル対決を眺めた。
もはや人間には見えない為、ドルフィンはつい、「やっぱりアレ、ロボットなんじゃないですか?」と口にする。
アリエスは「え~。白馬の王子様だと思ったのになぁ~」と残念がる。
 そこへふらりとたぬっきーが到着。
「皆! ぼーっとしている場合じゃないよ! 今のうちに浄化技の準備するんだ!」
「たぬっきー! 久しぶりじゃん! しばらくどこに行っていたし!」
「フェニックス! 話は後! 座ったままでいいから、浄化技の準備だ!」
 司令官妖精の命令を受け、4人は首肯。
 座ったまま、ステッキを掲げ、浄化技のシーンクエンスへと入る。
 一方でライガードの元へ迫るヤミナンダの拳。
 それを平然と受け止めた!
「フン。図体の割には大したパワーではないな」
仮面越しに兄はチラと後方を見やる。
「今だ! 撃つでゴザル!」
 光のシャワーが洪水の如く押し寄せる。
 寸前で路面を蹴り、ライガードは離脱。
「一応俺も避けておくか……」と、言い残してこのまま後退して去っていった。

 
 

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