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最強兄貴、魔法少女の妹を陰ながらサポート 1話「まさか妹が魔法少女だったとは」

あらすじ

的場鋼太朗(まとばこうたろう)は偶然目撃してしまった。
妹の巴(ともえ)とその友人たちが魔法少女・レジェンドエンゼに変身して戦う姿を。
 しかし、レジェンドエンゼは苦戦し、窮地に。
 その時、鋼太朗は妖精・たぬっきーから力を授けて貰う。
 重武装の甲冑の騎士・ライガードに。
 しかし、ライガードは浄化技を使うことが出来ない。その為、フィニッシュはレジェンドエンゼに譲るしかない。
 画して、鋼太朗は正体を隠して陰ながら妹たちレジェンドエンゼの援護をする事に。
 戦いの最中、敵の正体が判明。人間の感情をなくして、自分を傷付ける存在をゼロにする事を目的とした闇坂兄妹だった。
 激闘の末、鋼太朗たちは勝利。

以下、1話本編


 的場鋼太朗(まとばこうたろう)。
精悍な体格・クールで鋭い顔立ちのという高校1年生。
彼は本日、学校帰りに本屋にでも行く予定だったのだが……。
 町中に禍々しい巨大モンスターが出現! 
大暴れして、周囲のビルや信号機を破壊していく。
 その非現実的な事実を鋼太朗はこの目に焼き付けてしまう。
「な、なんだこれは……。CGでも特撮でも無いよな」
 現実を冷静に受け入れようとする鋼太朗の前に少女4人が駆けつける。
「む! 巴……?」
 その四人の中には鋼太朗の実妹、巴もいた。
 見慣れた後姿だ。実兄が見紛うワケがない。
4人のうちの1人、元気系ツインテールヘアーの少女、雲山小春(くもやまこはる)はピンク色の魔法少女コスチュームを身に纏い、エンゼアリエスに変身を遂げる。
同じように、清純系ショートヘアー少女・海野勇魚(うみのゆうな)は水色のコスチュームの魔法少女・エンゼドルフィンへと変身。
セクシーなギャル系少女・紅鳳火(くれないあすか)は赤い魔法少女・エンゼフェニックスへと変身。
「まさか、我が妹も……」
 兄・鋼太朗の予想は的中する。
 そして、クール系美少女の的場巴(まとばともえ)が紫の戦士・エンゼサーペントに変身を遂げた。
 後ろにいた鋼太朗に見られた事など知らずに4人の魔法少女・レジェンドエンゼは巨大な敵へと飛び掛かった。
 鋼太朗は唖然と見ながらついつい呟く。
「まさか妹が魔法少女だったとはな……。あえて見なかった事にしておいてやるか」
 エンゼアリエスがステッキから浄化ビームを放つ。
「えーい! 元に戻れーっ!」
 しかし、巨大モンスターのヤミナンダには全く効いておらず。
反撃に殴り飛ばされてしまう。
「うぎゃあ!」
「エンゼアリエス!」
 エンゼドルフィンは遠くへ吹っ飛ばされたアリエスの元へ飛んでいく。
「はーん。やってくれるじゃーん。お返ししてやんよ!」
 エンゼフェニックスが突っ込む。
「今度はあたしとフェニックスで挟み撃ち……。お兄ちゃんなんか頼らなくてもあたしはやれる!」
 エンゼフェニックスとエンゼサーペントが赤と紫のエフェクトを纏って突進。
 しかし、巨大モンスター・ヤミナンダは自身を回転させて2人纏めて弾き飛ばす。
 この戦闘を鋼太朗は歯噛みをしながら見届ける。
「苦戦しているじゃないか……。しかし、一般人の俺では何も出来はしないだろうな。妹よ。しっかりしてくれ……」
 無力感に苛まれ、屈辱を拳で握りしめていたその時、「君、あの4人の誰かのお兄さんなんだね」という気の抜けた声が。
 鋼太朗は険しい顔で「誰だ?」と周囲を見回す。
 たぬきのぬいぐるみのような奇怪な存在がふわふわと宙を浮きながら横からやって来た。
「何だこのたぬきは。あの化け物の味方か? こいつぐらいなら俺でも倒せるか?」
 鋼太朗は身構える。
「ちがうよ~。オイラはたぬっきー。あの魔法少女たち・レジェンドエンゼの味方さ」
「味方? 俺に何の用だ?」
「彼女たちに力を与えたのは良いけど、ここ最近敵が強くなって困っていてねぇ。そこで戦力増強をしようかと」
「おいおい、俺にあんな恰好をしろと言うのか? 勘弁してくれ。つか、女子に当たれ」
「いやいや~。そんな放送事故やる訳ないじゃないかー」
 たぬっきーは立体映像を2種浮かべさせる。
 1つはミュージカルの王子様風の服。
もう1つは全身甲冑。いやもはやロボットのような重装甲の鎧。
「このどっちかの姿になって、君に戦って貰いたいんだ」
「なんだこのフィギアスケート選手みたいな恰好は。こんなもの、着れるか」
 1つ目の王子様風コスチュームは即、却下する。
 鋼太朗は重武装騎士の方を指さした。
「こいつでいい。顔も隠せて都合がいい。俺に力をくれ」
「それ、重たいよー? 頑丈で強くはあるし、魔力で重さは軽減されるけどさー」
「なら十分だ。こっちはガキの時から妹をおぶったりして来たんだ。鎧如きどうという事は無い」
「あっそう。じゃ、ほい!」
 鋼太朗の右腕にブレスレットが装着される。
「真ん中のボタンを押してねー。もう1回押せば変身解除。左右のボタンで武器を出せるよー」
「そうか。分かった」
 鋼太朗は変身ブレスの変身ボタンを押す。
 すると瞬く間に全身を白銀の鋼鉄の鎧が纏っていった。



「その姿の名はライガード。どんな攻撃にも耐えられる鉄壁の戦士さ」
 ライガードとなった鋼太朗は適当に手足を動かしてみる。
「何だ。言う程重くないじゃないか」
「ただし……」
 たぬっきーが神妙な面持ちで重要な事を告げようとする。
「何だ? まさかデメリットがあるのか? 寿命削るとか勘弁してくれよ」
「いや、そういうのはない。大丈夫。だけど、ライガードは破壊と防御の力。浄化の力を持っていないんだ。だから、君はトドメを差しちゃいけない」
「何だと?」
「レジェンドエンゼは浄化技が使える。浄化で敵を倒せば、破壊された物は全て元通り。敵が暴れた事を無かった事にしてくれるのさ」
「そうか。一般人の記憶も消していたんだな。だから、巨大な化け物が出ても今までニュースになっていなかったんだ」
「その通り。SNSにも保存させないようになっているのさ」
「ふむ……。事情は分かった。俺は敵の動きを押さえ、あいつらに浄化技をキメさせろという事だな?」
「そういうこと! 物分かり良くて助かるよ」
「フッ……。昔、妹と魔法少女アニメを見たことが有ったからな……。その手の事情は大体分かる」
 任務は理解した。ライガードはコンクリートを蹴り、駆け出した。
「さて、不甲斐ない妹を助けてやるとするか」
 ライガードは気だるそうに首の骨を鳴らす。
 その蹴りで4Fぐらいあるビルを軽々と超えるジャンプをする。
「おぉ。地面蹴るだけで、このぐらい飛べるのか。なるほど。ただの武装ではないのだな」
 兄は鋼鉄の重武装騎士となり、戦禍へ身を投じる。

 一方、地表にはクレーターが穿たれ、レジェンドエンゼの4人はその中で倒れていた。
 ヤミナンダが接近して来て、巨大な足を上げて、4人を踏み潰そうとする。
「もう駄目だっ!」と、両眼を閉じるアリエス。
 ドルフィンも疲弊した様子で「つ、強過ぎです……」と弱音を吐露。
 立ち上がろうとするが、再び伏してしまうフェニックス。
「くっそぅ。マジで力が入んねぇし……」
 サーペントも唇を噛み締めて「クールビューティーなお姉さんになれたと思ったのに……」と、理想とのギャップに屈辱する。
 だが! その時、鋼鉄の甲冑を纏いし戦士が巨大なモンスターを突進で吹っ飛ばした。
 レジェンドエンゼの4人は信じられない光景に絶句する。
「ほぅ。思ったより軽く吹っ飛ばせたな」
 ライガードは軽く首を鳴らしてヤミナンダの方へと駆け出す。
「な、なにあれ?」
 アリエスは謎の騎士を不思議そうに眺める。
「ロ、ロボットでしょうか?」
「流石に人間が中に入っているんじゃね?」
 などと、ドルフィンとフェニックスが憶測を立てる。
 エンゼサーペントだけは首を鳴らす動作を見て、ハッとなる。
 兄・鋼太朗の癖でよく首を鳴らしていた事を……。
「えっ……? そんなまさか。首を鳴らすなんて誰でもやる事かぁ」
 ライガードはまずは相手の腹のド真ん中へと拳を叩き込む。
 ヤミナンダは悶え苦しむ。
「殴ればこのぐらいのダメージか……。面白い。次は蹴りを試すか」
 チラと後方のレジェンドエンゼ達を見やる。
「あいつらの回復の時間稼ぎにもなるし、一石二鳥だ。巨大怪物には実験台になって貰おう」
 今度は回し蹴りを放つ。しかし、今度は腕で防御される。
 反動でライガードは吹っ飛び、ビルの上へと一旦避難。
「反撃したか。向こうもまぁまぁ知性はあるようだな」
 ブレスを見やるライガード。
「武器か……。試してみるか」
 まずは左のボタンをタッチ。すると、ライフルが転送される。
「おっ? イイのがあるじゃないか」
 ライガードはライフルを手にし、銃口をヤミナンダへ向ける。
 数発足元へ連射! ヤミナンダはダメージを受け、転げる。
「いいじゃないか。このままトドメ……」
 周辺を見渡す。どこもかしこもヤミナンダとの戦闘で破壊された建造物や路面が目立つ。
「元に戻さないと拙いか……」
 今度はレジェンドエンゼ達の方を確認。彼女たちは未だに呆然と静観していた。
「おいこら! お前らさっさと立ち上がれよ……。浄化はお前ら鹿出来ないのだろーが! ……って、ここで言っても聞こえないか。仕方ない。近くへ行って話すか」
 駆け出そうと一歩踏み出すが、ふと止める。
「おっと! 正体が俺だとバレるは拙い。適当に口調を作っておくか」
 ライガードはレジェンドエンゼ達の前へ飛び降りる。
「何をしているでゴザル。敵が倒れて身動き取れないうちに、さっさと浄化技を見舞うのでゴザル」
「ゴ、ゴザル?」
 そこが引っ掛かるかエンゼアリエスよ。
「西洋に騎士みたいな姿でミスマッチですね……」
 エンゼドルフィンもツッコミを入れてしまう。
「やかましい。さっさとトドメを差せ……でゴザル。拙者は浄化技を使えぬからな」
 そう言い残して、ライガードはジャンプして姿を消した。

 4人共、時間火星で貰った分、体力は回復。
 立ち上がり、4人合同の浄化技を放つ。
4人は声を揃えて、「癒しの力を一つに! ハートフル~ハリケーン!」と、技名を叫んで光のシャワーをヤミナンダへ浴びせて、浄化。
ヤミナンダは信号機へと元に姿に戻り、他の破損した建物も元の状態へと修復していく。
魔法少女モノのお約束ながら、実に不思議な事が起こった。
 この様子を遠くのビルの屋上からライガードも眺めている。
「おぉ。本当にも修復されていやがる……。摩訶不思議だなぁ」
 ライガードは地平に降りて、変身解除。
鋼太朗は軽く首を鳴らし、一息つく。
「ふぅ……」
 さて、本屋にでも行くかと思い、ほにゃへと向かっていたが、聞き覚えのある声が。
「あ! お兄ちゃん!」
「ゲッ、巴……。奇遇だな」
 ジトーとした目つきで睨みながら、さっきまで紫の魔法少女に変身していた妹・巴は兄・鋼太朗に詰め寄る。
「さっきまで何していた?」
余所余所しい素振りで兄は「ん? あぁ、本屋で雑誌の立ち読みをしていたんだ……」と、答える。
 これに対し、妹は生意気そうに鼻で笑う。
「フッ、呑気なものね。何も知らないなんて……」
「ん? 何だそりゃあ」
 事情を知っているから今だからこそ、先程の戦いの事を示唆しているのだなと察するが、こちらはあえて知らないフリを貫く兄貴である。
「ま、不甲斐ないお兄ちゃんとは違ってあたし、何でもできる大人のクールビューティーな女なんだから」
 などとほざきながら、モデルのようなポーズを取って恰好付ける巴だった。
「フッ、そうか。じゃあな」
 子供の戯言だなと軽く鼻で笑って、兄は姿を消すのだった。

 中学高校一貫の女子高。そこの中等部の寮に巴は暮らしている。
 エンゼフェニックスの鳳火と同室である。
 先に帰っていた鳳火に巴は「ただいま」と言って、靴を脱いだ。
「おかえりーゼ~♪ ちゅーか、あの後どこ寄っていたワケ?」
「あぁ。兄を見かけたから……。呑気に立ち読みしていただらしない兄をしっかり者の妹として説教してやっていたのよ」
「へぇ~。兄さんいるだぁ。何歳差?」
「高1。中二のあたしらとは2学年上」
「いいなぁ~。甘え放題じゃん」
「え~全然優しくないよ~。自分の事は自分でやれってタイプだし」
「ウチは弟いるけど、生意気でねぇ~」
「え~。弟、イイじゃん。自由にこき使えるし。兄だったら、『女なんかの言う事なんか誰が聞くか』って突っぱねるもん」
「確かに弟はパシリに使えるけどさぁ、ポンコツだよ? 買って来るよう頼んだスイーツ、間違えるバカだし」
巴は「まぁ、男の人ってスイーツの正式名とか疎いもんね……」と苦笑。

 一方、帰路を歩む鋼太朗の進路方向にしれっとたぬっきーが現れる。
「またひょっこり出て来やがったな」
「君にはまだ色々と話したい事があってね」
「ほぅ。だが、あいつらの近くにいなくていいのか?」
「居心地悪いんだ……。自分以外が女の子の空間は」
 妙に本音の籠った声のトーンで、たぬっきーは吐露する。
「妹が女友達を家に連れて来た時の感覚だな。途端に我が家が狭苦しく感じたものだ」
 男同士、通ずるものがあり、シンパシーを感じる鋼太朗とたぬっきーであった。
「まぁいい。お前には聞きたい事も有るからな。俺の部屋に来い」
 鋼太朗は普通に玄関から一軒家の自宅へと帰る。
 たぬっきーは2Fにある鋼太朗の部屋の窓を開けて貰い、そこから部屋へと入った。
 妖精のたぬっきーはこれまでの経緯を語った。
「ふむ。なるほど。お前の世界を謎の暗黒生命体が侵略し、こっちの世界へお前は逃亡。暗黒生命体と戦ってくれる人間を探す。持って来た変身アイテムを配る……と」
「ま、そうなるね」
「敵の正体は分からないのか?」
たぬっきーは首を左右へ振って「今の所は僕にもさっぱり」と応答。
「何もかもは知らないのか……。お前自身は戦わない以上は今後、情報収集はしっかりやれよ」
「あはは……。面目ない。もちろん日ごろは情報収集しているとも」
「頼むぜ。で、レジェンドエンゼだったか。そちらの情報も欲しい」
 たぬっきーは「オッケー」と、気の抜けた返事をして複数の立体映像を浮かび上がらせる。
 4人の変身前と変身後の画像であった。
「君の妹さんはどれ?」
 鋼太朗は「こいつ、紫に変身する奴だ」と、言いながら妹の画像を指差す。
「エンゼサーペント。巴ちゃんかぁ。クールな感じが似ているね」
「そうか? 俺は冷めているだけさ」
「でも、一緒に暮らしていないんだね」
「あいつは中学から女子校に通い、そこの寮生活をするようになった。だから、あいつが中学生になってからは殆ど会っていない」
「そっかぁ~」
「当然、あいつの交友関係も全く知らん。他の魔法少女はあいつの友達なのか?」
「そうとも。皆、同じ女子校の同級生だよ」
「ほぅ。同級生か……」
 アリエス、ドルフィン、フェニックスの3人の変身前と変身後の姿を眺める。
「赤い奴。エンゼフェニックス、紅鳳火? ……か。こいつも中学2年か。派手なギャルっぽい風貌から年上かと思った」
「でも、妹さんよりおっぱい小さいよー」
渋い顔をしながら、鋼太朗は「何でそんな事知っているんだ?」と、問う。
「選考の際、キャラ・ビジュアルバランスを考えてスリーサイズも調べておいたのさ!」
魔法少女の妹を持つ兄貴は「なんだそりゃ……」と呆れる。
「ちなみに君の妹さんはメンバーの中で二番目におっぱいが大きい。一番おっぱいが大きいのが青の娘、エンゼドルフィン・勇魚ちゃんだよ」
 ついついエンゼドルフィン&勇魚の胸を鋼太朗は凝視する。
 確かに一番胸の膨らみがあるなと感心した。
「そうか……。巴は2番目か。良かったな妹よ。一番貧乳のポジションにならなくて済んで。メンバー1の貧乳では辛かろう」
「ああいうプライドの高そうな娘は他のメンバーが全員自分より巨乳だったら多分、並ぶの拒否しただろうね」
 兄としてもその通りだなと、深々と頷いた。
「お前、セクハラ狸だと言われながらボコボコにされた事あるだろう?」
「大丈夫さ! スリーサイズや生理周期のチェックは彼女たちの居ない時にバッチリ済ませているからね! それに僕、透明に成れるから」
 実際に一旦、透明化し、再び戻る。
得意げにスケベ狸妖精はサムズアップをする。
「生理周期まで把握しているのか。バレたらお前、本当に殺されるぞ」
 冷静な忠告を受けるも、女子のプライベートな情報を知り尽くす変態狸妖精は罪悪感など無い真顔でこう語る。
「仕方ないんだよ。魔法少女の体調のチェックは……妖精の務めだから……」
「その主張で許されるかは疑問だがな」
 兄としてはただただ複雑。苦い顔をするしかなかった。
 たぬっきーは悟った様子で背を向け、話を続ける。
「最悪、魔法少女全員が生理の時期があるかもしれない……」
 兄と言えど、男としては未知の話。
「そんな事もあるのか?」と答えるしか無かった。
「だから……皆が生理の時は男の君に頑張って欲しいんだ」
 土偶のように両眼を細め、鋼太朗は苦々しい顔をする。
「だが、浄化は出来ないと言ったじゃないか」
「被害ゼロで勝てばいいんだよ。被害ゼロで!」
 途端にマジな低いトーンでスケベ狸妖精は圧を掛ける。
「俺にだけ求められるハードル高いな……」
「というか君、妹の生理ぐらい把握していないのかい?」
 呆れながら「知る訳ないだろ。兄弟など所詮は他人だ。そもそも、知りたくもない」と、頭を抱えた。
 鋼太朗は軽く咳払いし、
「とにかくだ。さっさと事態を片付けたい。スケベ狸、お前は黒幕を一日でも早く見つけろよ」
「分かったよ。じゃ、今日は帰るねー」
 何食わぬ様子でふわふわ浮きながらたぬっきーは窓へと向かう。
 鋼太朗は再び窓を開けようとする。
「そうだ! 君もレジェンドエンゼの生理周期、教えておこうか?」
両眼を閉じ、厳然と「気色悪いな。要らん! 知りたくもない」と拒否する兄貴だった。
人間の考えなど理解出来ないなと言わんばかりにこの狸妖精は涼しい顔で「どうしてさ?」と、不思議がる。
「自分の事はなるべく自力でどうにかしやがれ。俺は出来る範囲であいつらには出来ない事をやるまでさ……」
 そう言って、窓を開ける。
たぬっきーは「ふ~ん。兄妹ってよく分からないねぇ~」と、言い残してこの場を飛び去るのであった。

 窓を閉め、鋼太朗はため息を吐き捨てる。
「愚妹め……。厄介なことに首突っ込みやがって……」
 と、言いつつもどこか嬉し気な顔を浮かべる。
 魔法少女として戦う事で妹が成長したのだなと、しみじみ思うのだった。
「だが始めた以上は仕方あるまい。兄妹と言えど、所詮は他人。やると決めた事を止める権利はないからな」
 クールに苦笑いを浮かべ、兄は妹を支えながら戦う覚悟をするのだった。


2話 https://editor.note.com/notes/na87f7f2ec39c/edit/

3話 https://editor.note.com/notes/nb7f1c4c4160e/edit/

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