月刊『探究』6月号

ドアノブです。
一か月に一回、何らかのテーマで書きます。
6月は人材派遣についてです。
間違いがあればご指摘ください。

テーマ:人材派遣の成り立ちと歴史概要

アメリカと日本の人材派遣の誕生の違いと歴史概要
■アメリカ
アメリカの法律事務所で病欠スタッフが出て、業務が滞る事態。1948年にエルマー・ウィンターとアレン・シャインフェルドの二人の弁護士が「必要な時に、必要な人を、必要な期間だけ派遣する」サービスとして世界初の人材派遣企業のマンパワー社設立。
➡企業目線による成立
■日本
広義の意味での人材派遣は明治時代から存在したものの、過剰な搾取により厳しく規制されていた。しかし、マンパワー社の日本進出、篠原氏のテンプスタッフ社、南部氏のテンポラリーセンター社をはじめとした企業群による労働力供給としての請負業務が普及し経済界にも受け入れられていった。その結果、バラバラであった労働者供給事業を政府の管理下に置くため統一的なルール化が行われ、1985年に労働者派遣法の成立。背景として、子育てを終えた女性の再社会進出の妨げという社会問題の是正、OA普及の流れも相まって、経済界の歓迎・労働者保護の観点から、専門職13業務限定で人材派遣が可能となった。バブル崩壊をきっかけとした1990年代に経済界の要請で規制緩和が加速。96年に専門的な26職種に緩和、99年には港湾運送・製造業・医療・建築を除いた業種で緩和。2000年に紹介予定派遣の解禁、04年には専門業務の派遣期間制限が撤廃。しかし、08年のリーマンショックをきっかけに、偽装請負、派遣切り、派遣村等の派遣労働者の立場の弱さに関する諸問題が注目され、規制強化に戻る。12年の派遣法改正では日雇い派遣の禁止、元勤務先には離職後1年以内の派遣禁止。15年には更に労働者の処遇改善の法整備が強化。26業務を廃止し、事業所・個人単位で期間制限化による、直接雇用移行への圧力。許可制で悪質な派遣会社の追い出し。派遣労働者のキャリアアップ、処遇改善の強化による派遣労働者の保護。
➡育児を終えた女性の社会復帰の観点から成立
➡戦後の新しい労働闘争。企業か正規労働者か非正規労働者のいずれを保護するのか。
➡社会・家族の在り方の変化による女性の再社会進出の後押し
人貸しの合法化。正規雇用されない人達のための雇用口。

非正規雇用としての派遣と正規雇用の比較の参考
雇用形態の違い:給与、福利厚生、雇用の安定性などの面での比較。
※東京の事務職の事例
■正社員
・給与:約500万強 賞与アリ
・福利厚生:フル
・雇用の安定性:あり
■派遣社員
・給与:350万弱 賞与無し
・福利厚生:制限 ※同一労働同一賃金の普及はあるものの、現場では完璧に浸透したとはいえない
・雇用の安定性:本人と派遣会社の努力次第
※厚生労働省の令和4年賃金構造基本統計調査の概況によると、正社員の給与を100とした場合、非正規社員は67.5となる。
メリットとデメリット:企業と労働者双方の視点からの比較。

派遣社員のリアル
月刊人材ビジネスによると、約50%程度が派遣という働き方を望んでいる
理由:派遣会社が二人三脚でキャリア・職場相談の窓口になってくれるから

派遣会社の存在意義とは
対企業:必要な期間、必要なスキルを持った人員の派遣。労働市場のレクチャー
労働者へのサポート:派遣社員に対するキャリアサポートや教育、職場への時給・休暇の交渉、人間関係の悩み相談

これからの人材派遣業
未来のトレンド:テクノロジーの進化によるスキルの変化、既存の事務職のニーズ低下、派遣ではなくBPOの普及

参考文献
・黒田真行・佐藤雄佑(2019)『採用100年史から読む人材業界の未来シナリオ』
・岡田良則(2022)『人材派遣のことならこの1冊』
・厚生労働省『令和4年賃金構造基本統計調査の概況』
13.pdf (mhlw.go.jp)
・月刊人材ビジネス6月号

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