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短編小説のような一節

盛岡のもりおか啄木・賢治青春館に行ったときのことです。

1階の展示を眺めて奥の階段を上ると、2階では「賢治の童話・絵本展」が開かれていました。

絵本を読めるコーナーもあったので、ちょっと休憩のつもりで、手近にあった『銀河鉄道の夜』をめくってみました。

「ではみなさんは、そういうふうに川だと言われたり、乳の流れたあとだと言われたりしていた、このぼんやりと白いものがほんとうは何かご承知ですか」

ああ、これか。読んだことないと思っていたけど、見覚えがある。

カムパネルラが手をあげました。それから四、五人手をあげました。ジョバンニも手をあげようとして、急いでそのままやめました。

ジョバンニにカムパネルラ。このあたりも見覚えがある。でも、先の話は思い出せない。

***

先生に名指しされたジョバンニは、答えられずに真っ赤になってしまう。次に指されたカムパネルラも、やはり答えられない。2人とも答えを知っているのに。

この頃ジョバンニは、仕事が辛くて学校でも調子が出ない。カムパネルラは、そんな自分を気の毒に思ってわざと答えなかったのだ。そんなことを思って涙目になる。

その様子を知ってか知らずか、先生は質問の答えを示して銀河の話を続ける。模型も見せて天の川の説明をする――

時間が来たので授業はおしまい。今日は銀河のお祭りです。

***

『銀河鉄道の夜』の冒頭の「午後の授業」の部分です。見開き2頁ちょっとでしたが、ここを読んだだけで、なんだかとっても感激してしまいました。

帰ったら続きを読んでみようか。
いや、やめておいたほうがいいかな。

盛岡のクラシカルな洋館で、短編小説のような一節を読んだお話です。

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