見出し画像

書くことに困ったシリーズ「て」

書きたい気持ちはあるけれど、何をテーマにすればよいか悩んだときのシリーズ。五十音順に進めております。

「てんぷら」

もう20年近く経つかもしれないが以前、作家の小池真理子さんの作品を手あたり次第読み倒した時期があった。
少なくともここ10年は小池さんの作品に触れてこなかったので記憶が定かではないのだが、「冬の伽藍」だったかで主人公の女性がいい感じの関係になりそうな男性と天ぷらを食べる場面があった。

主人公も相手の男性も40代後半~50代の設定だったように思う。オトナの男女が天ぷらのお店で食事を楽しむシーンにとてつもない色香を感じた。
また別の場面では吉野の本葛のくず餅を食べる様子が書かれていて、光景やそれぞれの人物の感情の流れがありありと目に浮かぶ小池さんの才筆には憧れしかない。

くっつくかくっつかないか、まだ微妙な関係の二人が、天ぷらを食す。年齢に見合った落ち着いた食事とお店の雰囲気。素敵すぎる。
くず餅。吉野の本葛。
食べたことないけど素敵☆

どんなお店に連れていっていただけるか、どこに行くかもわからない状態での初回天ぷら、次にくず餅。惚れてまうやろ~(/ω\) 
チョコレートパフェやプリンアラモードではこうはいかんよー。(小池さんの筆力ならそれも可能なのかもしれないけど)

そんなわけで当時の私は、このシーンが憧れになってしまったのだ。
いや、恋をしたいとか道ならぬ恋への憧れなどでは決してない。単純に天ぷらに見合うオトナになりたい、と願ったのだ。

そして数年前の王様のお誕生日にその願いは叶った。
外食嫌いの王様を「ほら、天ぷらが似合う年齢をお祝いしに行こうよ」と説得し、連れ出すのに成功したのだ。

年齢を重ねるのを幸せと感じる私とは真逆の王様は、世の中から誕生日なんてなくなってしまえ!と永遠の若人として生きる方なので、「ケッ」とかなんとか言っていたが、お食事終わりには満足されていた。

素材を目の前で揚げていただき、順番に供されると(コレコレ、私の思ってたやつーヾ(≧▽≦)ノ)と、澄ました顔とはウラハラに心の中で大はしゃぎだった。

くず餅は、食わず嫌いというか、私の好みのタイプのものではないのだが、先日、吉野本葛と書かれたくず餅をみかけたので和菓子に目がない侑さんのお土産にした。
侑さんは口にしたとたん感動のため息を漏らしていた。

家で天ぷらを作っても、イメージとはかけ離れたものができあがってしまい毎度落ち込む。
もう少し洗練された大人の雰囲気を纏えるようになったら、また王様とお店に出向くとしよう。
まだまだ私の理想の天ぷら道は続く。


#天ぷら   #小池真理子
#冬の伽藍

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?