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「Black Olympic」企画書

キャッチコピー

楽園(地獄)へようこそ

あらすじ

新国Z。
”世界の支配者”とも揶揄される起業家が、大国”A”の強力な後ろ盾のもと作り上げたこの国は、およそ12年で今やあらゆる娯楽を主要産業とした世界でも類を見ない人間の楽園へと変貌を遂げていた。
そんな中、衰退国となった”J”の中央行政機関で働く枝折楓は突如”Z”への赴任を命じられる。
赴任当日、楓が目の当たりにしたのは、超巨大スタジアムにて日夜、世界中の民衆を虜にする興行”Black Olympic”だった。
唯一、”観客を萎えさせないこと”以外あらゆることが許される狂気の遊戯場に、今までの常識と倫理観が揺さぶられる楓だが、そこで選手として生きるルカとの出会いで彼女の未来は変わっていく。

第1話のストーリー

衰退国”J”で職人として働く親方こと小武豊四郎。
今日もトラックで現場に向かいながら若手の田口と週末のレースの予想で話に花が咲く。
親方が気になっているのは元”J”出身の登録がある青年だ。
着々と予選を勝ち抜き、ビッグタイトルを冠するレースに出場が決定した。
それを話すと、田口は一瞬驚きつつも、すぐに見込みはないとあっさり。
「――でもそいつ、相当のワケアリっスよね~」
一方、田口は親方に最近は”ジミニアル”というAIを使ったレースの予測が流行りだということ、そのAIが次のレースで選出したのは義足の選手であることを親方に勧めるのであった。
「おう、そいつ見たことあるな、義足のやつだろ?」
駄弁るのも飽きてきた頃、すっかりさびれてしまったこの国の様子を見ながら田口はぼやく。
「店も施設もスッカスカ、どこもかしこもボッロボロ……国の賢いやつらってのは何考えてるんですかねー」

同日、国の中央行政機関で枝折楓は室長に呼び出されていた。
「枝折君、悪いんだけどちょっと”Z”に行ってきてくんない?」
突如告げられた”とりあえず”1週間の新国Zへの視察研修と上の者たちの下卑た思惑に辟易する楓。しかしそれに従うしかない自分と大急ぎで支度を整えないといけないせわしなさに楓は悲憤するしかなかったのであった。
「あんの狸どもがッ――いつか潰す!」

「ようこそ楽園へ~」
入国審査を終え、新国”Z”に何とか到着した楓は、さっそく日夜”Black Olympic”が行われているスタジアムへ向かう。当初はその空気を比較的楽しめていた楓だが、メインイベントとして行われている”RPS(リアルプレイヤーシューティング)”や”コロッセオ”にて行われる非日常の現実を目の当たりにし、今まで培ってきた何かが根底から覆されてしまう。

そんな中、その日最大のイベント”若獅子杯”のファンファーレが鳴り響く。
熱狂に覆われるスタジアム内。
正気を保ちつつ、これを最後にその日は帰ろうと思っていた楓。その眼には、歓声に応えながら出てくるいずれも個性的で実力者揃いの選手たちが写っており、プレイヤーとして生きる青年ルカもその中に含まれていた。

第2話以降のストーリー

スポンサーのロゴを身体中に刻む者。
頭を弄った痕のある者。
いかにも野生的な者。
両脚が義足の者。
等々。
そしてその中に、浅黒の肌に銀髪が目を引く青年ルカは立っていた。
「さぁ!皆様お待ちかね!本日とうとうメインレースのお時間です――」

各々紹介される選手たちはそれぞれ歓声に応え、また独自のカメラパフォーマンスを行う。そこに実況の煽りも相まってかスタジアム内のボルテージは最高潮に達する。

そして全世界のファンが注目する中、”若獅子杯 200Mスプリント”は始まった。
超人的な反応で一斉に走り出す選手たち。各々が個々の全てを絞り出さんとする中、ルカが大方の予想を翻し神懸かり的な走りを魅せる。
そして……
「――ッ第5回!」
「若獅子杯を制したのはッ!」
「弱冠17歳!新星!ルカ・レイドウッ!だぁぁあああありゃあああぁ……ッッッしゃぁあああああッ!」

興奮する実況と観客をよそに悠然と両手をひろげ勝利をアピールするルカ。しかしその表情(かお)は冷静沈着であり喜びは見えなかった。
楓はルカの走りとその表情を見て、自分の中で何かが変わり始めていることを感じるのであった。

一方、自宅でレースを観ていた親方(小武豊四郎)は応援と称してルカに賭け、見事大穴を的中し呆然としていた。
「――当たっ……ちゃった?」

第3話(構想)

レース結果 ⑬-⑫-⑧。
大波乱の結末となった”第5回 若獅子杯”にスタジアムは悲鳴、怒声、歓声でつつまれる。
レースの結果を知らせるアナウンスが自宅のテレビから流れる中、スマホを握りしめ親方(小武豊四郎)は咆哮していた。
「――んどりゃぁぁぁぁああああああ!」

望まぬ死を迎えた選手もいる中、断続的に流され続けるハイライトに狂気ともいえるほど沸きに沸くスタジアム。
その中を”Z”の国旗を広げ悠然と歩くルカを呆然として見る二人の女がいた。楓と、どこか決して裕福には見えないところのひと部屋にいる少女である。二人はただ呟くのであった。
「――キレイ」
「――お兄ちゃん……」

インタビュー等を終え、控室に戻ったルカ。
離れて暮らす妹弟たちとのメッセージのやり取りをしていると隣のレーンで走った義足の青年ルーベンが訪ねてくる。
「ニヤついて珍しいなチャンピオン、――オンナとヤル約束でもしたか?」

軽い談笑を交わした二人。レース中に亡くなった選手のことをルーベンがあげ、再度のタイトル出場を互いに誓いあうように約束し、長いようで一瞬の一日は幕を閉じたのだった。
「お前は壊れるなよジャンキー野郎――」
「――お前もな、ルーベン」

その頃、勝利で狂ったように咆哮をあげていた親方は姉さん女房の奥さんと愛らしい娘ちーちゃんのおかげで落ち着きを取り戻していた。
しかし突如舞い込んできた大金に興奮が治まるわけはなく親方は一晩、その金をどう使うかで悩むことになったのであった。
(興奮して寝むれん……)

第4話(構想)

翌朝、親方こと小武豊四郎は奥さんに”Z”に家族で旅行に行かないかと提案する。
押し問答はあったものの、奥さんの賛同を得て親方は舞い上がる。
会社、若手の田口にも旅行の件を伝え、小武一家の”Z”への旅行は正式に決まった。
一方、田口。親方の旅行中は鬼の”川田班”に入れられることが分かり、がっくりと跪き頭を垂れるのであった。
「地獄だ……ここは地獄なんだぁあああ――」

舞台は変わり”Z”
翌朝になっても楓は昨晩の狂気ともいえる熱気にあてられたままで仕事に手がつかなくなっていた。
”J”にいるときは嫌悪感すら抱いていた”Z”の施策にまんまと乗せられているのを自覚しつつも、選手たちの生き物としての輝きの前に楓の心は変化の兆しを見せていた。

ルカが目を覚ます。そこは普段なら縁もゆかりもないホテルの豪華な一室だった。
昨晩の偉業からスポンサーの好意で特別なホテルでの一泊となったのだ。
ルカはひとり、誰かに語りかける。
「――おはようジミー、今日はなんか予定あったっけ?」


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