研究書評【資産運用と金融リテラシー】


各論文に対しての研究書評構成要素

①概要②内容③その下に→で疑問+展望

6月22日
隠れインデックスファンド検出のための One-class SVM出力校正法

選択理由
日本人にとって馴染みのある投資はインデックス投資である。日本では投資初心者はまず、インデックスという流れがSNS、インターネット上で主流ある。人気があるインデックス投資がある中で、インデックスに似せたアクティブファンドつまり、偽インデックスファンドが流行ることは容易に想定できる。それを是正するためには?というテーマが気になり選択した。

内容

前提
購入者に情報を伝える際に手数料が比較的安いインデックス型と公表し、運用が難しく手数料が高いアクティブ型の運用を行うとは考えにくい。このことから、本研究では公表している運用方針がインデックス型のファンドについては公表された運用 方針に偽りはなく、実際の運用方針もインデックス型 であると仮定する。この場合、公表された運用方針が インデックス型であるファンドに関しては正解ラベルが付与されたデータを用いることになるため、先行研究で使用した k-means 法とは異なる手法を検討する必要がある。

k-means 法についての分かりやすい説明
https://m.youtube.com/watch?v=8yptHd0JDlw
人間が正解を与えずに分析する方法
→つまり、何度もやることで正解がバラバラになる。人間が望んでる答えが導き出されるとは限らない

Oneーclass SVMの説明
https://m.youtube.com/watch?v=v5Ed_DJenNQ&pp=ygUgb25lIGNsYXNzIHN2bSDjgo_jgYvjgorjgoTjgZnjgY8%3D

One-class SVM 出力を従来校正手法で校正した場合に結果では、隠れインデックスファンドが検出されなかった。従来校正手法を用いた場合は、提案手法を用いた 場合と比べて、隠れインデックスファンドを見過ごしてしまう可能性があり、隠れインデックスファンド検出に適していない。 One-class SVM と本研究における提案手法を用いた 場合、用いるデータ期間 を変えても実際の運用がインデックス型であるファンド群 がすべてインデックス型と判定されたことから、インデックスファンドとアクティブファンドを正しく分類できていることがわかる。籔 内らの研究 [1] では、用いる月次リターンデータの期間 を変更するとインデックスファンドとアクティブファンドを適切に分類できなかったが、One-class SVM と本研究の提案手法を組み合わせた手法を用いると、用 いる期間を変えても適切にファンドを分類ができる。 よって、籔内らの卒業研究における提案手法よりも、 One-class SVM と本研究の提案手法を組み合わせた手法のほうが有効性があると考えられる。 隠れインデックスファンドの検出を目 的とし、籔内らの研究における問題点を解決するために OCSVM を導入した。しかし、OCSVM をそのまま 使用した場合問題が生じるため、これを解決するため に OCSVM の出力校正法を新しく提案した。OCSVM と本研究の提案手法を組み合わせた手法を用いること で、隠れインデックスファンドが確認できた。加えて、 用いるデータ期間を変えても適切にファンドを適切に 分類できた。 本研究で用いたファンドデータは TOPIX をベンチ マークとするファンドのみであるため、TOPIX 以外をベンチマークとするファンドに対しても提案手法を用いて実験を行うべきであると考える
→今回の論文では内容というより、全く知識のない理系分野の分析を理解することが非常に難しかった。いずれ役に立つかもしれないが、今の段階ではまだまだ知識不足なので次回以降はもう少し堅実に調べていく。

6月15日
資産の価値と収益力 ―働く資産と働かない資産―1〜14貢
田中 弘

https://kanagawa-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=15413&item_no=1&attribute_id=18&file_no=1


選択理由
「カネ」に対してミクロ、マクロの両面から論じられている。尚且つ批判的な側面から本論が結論づけられている為多様な知識を習得できるため。

概要
これまで経済社会も会計学も(きっと経営学や経済学も)お金、金、株式を持つことが 「富者の証」であり、これらの価値の増加が社会の富の増加と考えてきたのではなかろうか。経済社会では「貯蓄から投資へ」という経済政策が推奨され、会計の世界では、これらの資産が利益を生む源泉であり、それらから生まれた収益(売却益、評価益)は社会の富を増やすものと理解されてきた。これらの行為は世の中に新しい価値をもたらすことはないとマクロな視点から批判的に捉えた内容である。
最終的にはそれらの資金 を「貯金」に回した方が社会に大きな貢献をするということを指摘している。

内容
ウルリケ・ヘルマンの言葉によれば、「それ(紙幣の価値)は金によってではなく、その国の国内総生産(GDP)によって保証されている」「お金には、それと引き替えに実物の製品を買うことができるだけの価値がある」ことに気が付いたのだ。
私たちが給料や商品の代価をポンド札やドル札、円札で受け取るのは、イギリス、アメリカ、 日本という国がその紙幣と交換することができる財やサービスを生産しているからである。アメリカにも日本にも、ドルや円と交換する物財やサービス(食品、衣料品、住居、運送、教育、医 療...)がなくなれば、ドル札も円札もただの紙切れになる。つまり、貨幣は、発行した国の 富・生産力(GDP といってもよい)に裏打ちされているのだ。
→この考えだと日本の経済は今後確実に衰退する。
円を稼ぐことは有意義であるとは言えないのではないか?
かといって円に対して誰も興味を持たなくなると価値の低下を進めるのではないか?
日本政府として打てる対策は積立nisaで全世界株を購入する事が本当に正しいのか?

ところで、ドイツ人もフランス人も貯蓄が大好きなようである。ドイツでは、誰もが国民、 会社、貯蓄に励んでいるという。ヘルマンはドイツ人(自身もそうであるが)のことを「特別なクルミを貯めこむばかりで誰ひとりそれを食べようとしないリスの群れ」になってしまったと嘆いている。
彼らの貯蓄好きは昔からのようで、ドイツ(フランスも)は、イギリスやアメリカと違って金融システムがあまり効率的ではなく、国民も自国の金融機関を信用していない。だから国民は マットレスの下や床板の下に現金のまま貯め込んでしまう。そのお金はめったに使われることがないので、国民の蓄えが意義のある投資に向かわなくなってしまう。国内では誰も使おうとしないので、輸出され、ドイツの蓄えは、外国へ流れ出て、アメリカのサブプライム危機やユーロ危 機を煽ったというのだ。
ヘルマンはドイツの事情を次のように解説するが、そっくりそのまま日本に当てはまる。
「個人の家計というのは生活が安定すればすぐにでも貯蓄を始めます。家を建てるためにローンを組むという家庭もあるでしょうが、全体としては預金者の方が優勢なのです。老後に備えたり、子供の教育のために積み立てをしたり、財産を遺したりしようとします。」
国民が所得を消費に回さずに貯蓄すれば、国か企業がその貯蓄を吸収(つまり、借金)しなければ経済は成り立たない。ところが、「ドイツの企業も節約するようになり、数十億規模の金融資産を築き上げその結果、企業は巨額の内部留保を抱え、もうどこに投資していいのかもわからずに」いるというのだ
→日本が借金大国と呼ばれている理由はここにあるのかもしれない
やはり、インデックス投資を促す目的がまだ見えてこない。

「貯蓄のパラドックス」
ミクロ的な視点で見ると貯蓄はいい事であるが
マクロな視点で見ると国的には良くないことがある。それを発見したのがヘルマン
いまの日本経済は、個々の企業は歴史的な最高益を享受しながら、その利益 が企業内に貯め込まれ、国民・市民・従業員に「トリクルダウン」してこない。
要因→→日本の企業がお金を貯め込む(内部留保を高める)のも要はリスクをとるだけの投資先が見つからないのだ。

地質学者によれば、ダイヤモンドはそれほど希少なものでもなく、『ダウ・ジョーンズ― アーウィン高級宝玉・宝石ガイド』によると、ダイヤモンドは「他の色がついた宝石よりも多く 存在しているけれど、単に希少に思われているだけ」だという。なぜ、そんな誤解がまかりとおっているのか。世界中のダイヤモンド鉱山のほとんどを支配し ているのは、南ア共和国に本拠を置くデビアス(De Beers)社だという。同社のコマーシャル、『A Diamond is Forever(ダイヤモンドは永遠の輝き)』(直訳すれば、「ダイヤモンドは永遠 に」)は、マーケティングの歴史の中でもっとも成功したキャッチコピーだという評価もある。
→ダイヤモンドが価値があると言うのは嘘で
ただの一企業による独占なのか!?

課税回避のための 1 万円札
1 万円札の流通量が増え続けているという。2018年末、102兆円というから、合計で102億枚も出回っていることになる。

金持ちも銀行離れを起こしているらしい。
最近の「 1 万円札人気」は、超低金利に嫌気がさしたからだけではなさそうである。最大の理由は、2016年の税制改正によって 財産債務調書制度が始まったことにあるらしい。年収が 2 千万円超で 3 億円以上の財産を持つ富裕層に、財産の内訳を明記した調書の提出を義務付けたのである。
相続のときに、できるだけ多くの財産を子や孫に残そうとして、申告するときに外から見えに くい現金で保有しておくという。銀行預金などを長い期間を掛けて定期的に引き出し、そのまま 自宅の金庫に保管するケースが多いという。 1 億円なら、 1 つの紙袋にはいる。 2 億円や 3 億円 でも、それほど場所もとらず、邪魔にもならない(きっと、邪魔には感じないはずだ)。しかし、もしも 1 万円札がなく、最高額の紙幣が千円札だったらだ、上で紹介したように、 1 億円で千円札が10万枚、重さ100キロにもなり、大き目の紙袋で10個、 3 億円なら30個、保管す るのに 1 部屋が必要になろう。銀行から100万円を引き出すのにも千円札で 1 千枚、 1 千万円な ら 1 億枚、 1 億円なら10億枚......途方もない分量になる。おそらく ATM は使えない。店頭で受 け取り、自宅まで運ぶのは簡単ではないし、頻繁になれば目立つ。案外、脱税の予防に役立ちそうである。
→世界の国ごとの通貨の種類ごとの数を比べて高価な紙幣が多く刷られている国は脱税率が高いのではないか?など仮説を立てて考えたい。


6月8日
個人型確定拠出年金(iDeCo)における 運用商品購入日が事前に明らかなことによる株価への影響有無

~ 投資に対する漠然とした不安に対する統計学的な視点による不安の解消 ~ 坂井 一貴 長岡大学 研究論叢 第 21 号(2023 年 3 月)

https://nagaoka-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=424&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1

選択理由・目的

これまでの研究の騙される人を救いたいと言う思いから、上手く生きるにはどうすればいいのか?という考えに変わりました。

理由は
騙される人の分析が難しい点。
→騙される状況ではさまざまな要因が絡み合っており、「心が弱い人」などといった抽象的な言葉でしか表すことができない。

研究の意義を見失った。
→例えばマルチ商法、宗教勧誘を例に挙げるとマルチ商法が良くないことであるとの授業は中学生の頃から言われている。また、宗教勧誘は大学内でも注意喚起の動画、ポスターがある。 

現在、政府が打ち出してる積立nisaのインデックスはインターネット、SNSでアメリカ銘柄、世界銘柄が打ち出されている。


内容

内容
iDeCoの毎月掛け金の口座引き落とし日から 13 営業日後に運用商品の購入が行われている。このように、特定の金融商品に対して予め購入が計画されている場合、その金融商品を先回りして 売買することで利益を得ようとする投資家は、現に一定数存在する。以上のことを踏まえた際、筆者が日々の株式市場を見てきた感覚として iDeCo による金融商品購入日付近は比較的株価が堅調なのではないかと言う仮説を立てた。地域住民、学生等への生涯学習や投資教育の観点も踏まえこれまでの日本の投資促進に関する経緯や長期・積み立て投資におけるリスク低減効果についても述べている。

「貯蓄から投資へ」のキャッチフレーズは25年以上も前になる1996 年 11 月に当時の橋本龍太郎内閣総理大臣が指示した金融システム改革いわゆる日本版の「金融ビッグバン」において示されたものでもある。にも関わらず、現金預金の割合は増加している。

iDeCo による国内株式購入における株価への影響
国内株式は概ね 10%強で推移していることから掛け金全体における日本株への拠出割合は概ね
国内株式は概ね 10%強で推移していることから掛け金全体における日本株への拠出割合は概ね 10%強と推測できる.iDeCo は長期の運用を前提とした仕組みであることから頻繁に運用商品の変更
10%強と推測できる。iDeCo は長期の運用を前提とした仕組みであることから、頻繁に運用商品の変更または購入金額の配分変更は行われない。
したがって、iDeCo の資産全体における資産割合は概ね変更、または購入金額の配分変更は行われない。したがって、iDeCo の資産全体における資産割合は、 加入者全体の運用商品を購入する拠出金割合と近い割合となる。




6月1日
個人の資産運用における金融リテラシーのジレンマ

山 下 忠 康
https://nanzan-u.repo.nii.ac.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=4424&item_no=1&attribute_id=22&file_no=1


選択理由・目的

研究の視点を変えるため

岸田内閣は「資産所得倍増プラン」において、NISA や iDeCo の制度変更とともに、金融リテラシーを向上させることで、「貯蓄から投資へ」の流れを実現しようとしている。
個人の金融リテラシーの向上が「貯蓄から投資へ」の流れの実現に寄与するのかという問題意識はきわめて重要である。
しかし、金融リテラシーの向上だけで「貯蓄から投資へ」の流れを生み出すことができるのか疑問である。そこで今回の論文を見る。


資産所得倍増プランを推進している内閣官房も、「貯蓄から投資へ」の流れを実現しようとしている。この流れが実現できれば個人(家計)の金融資産所得の拡大と,GX、DX、イノベーションスタートアップへの成長資金の供給拡大により、成長と分配(資産所得)の好循環が実現できると想定している 
資産所得倍増プランの 7 本柱

1家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせる NISA の抜本的拡充や恒久化
2加入可能年齢の引上げなど iDeCo 制度の改革
3消費者に対して中立的で信頼できるアドバイスの提供を促すための仕組みの創設
4雇用者に対する資産形成の強化
5安定的な資産形成の重要性を浸透させていくための金融経済教育の充実
6世界に開かれた国際金融センターの実現
7顧客本位の業務運営の確保

資産所得というと、金融資産が生み出す所得だけでなく、たとえば、所有不動産を賃貸することで得られる 不動産所得などを想起するかもしれない。しかし、資産所得倍増プランにおける資産所得とは、 金融資産所得に限定されることに留意しなければならない。
また、内閣官房により、次のような目標も示されている。1 NISA(一般・つみたて)の総口座 数を現在の 1700 万口座から,5 年間で,3400 万口座に倍増させる,2 NISA 買付額を現在の 28 兆円から5 年間で,56 兆円に倍増させる3その後,家計による投資額(株式・投資信託・債券等の合計残高)の倍増を目指す(時期は明示されていない)4これらの目標の達成を通じて中間層を中心とする層の安定的な資産形成を実現するため,長期的な目標としては資産運用収入 そのものの倍増も見据えて政策対応を図る。つまり、資産所得倍増プランにおいて、政府は、金融資産所得(資産運用収入)を倍増する時期について明示していない。

日本の現金・預金の構成比が高く、株式等や投資信託の構成比が低い理由 として、「日本人の金融リテラシーが低いから」という言説があるが、これは妥当な考え方であろうか。また、米国の現金・預金の構成比が低く、株式等や投資信託の構成 比が高い理由として、「米国人の金融リテラシーが高いから」というのは妥当であろうか。  日本と米国の金融リテラシーの差異が僅かであるにもかかわらず、金融資産構成に これだけの格差があることは、金融リテラシーだけでは説明ができない。



総括

つまり、個人の金融リテラシーが向上すれば,預貯金偏重の資産運用が是正され、株 式や投資信託などのリスク性資産への資産配分が高まるという好循環への期待に依存 している「資産所得倍増プラン」は興味深い実験といえる。

金融リテラシーに内在する負の側面として

知識に加えて経験も豊富になれば、金融機関はさらにリスク の高い金融商品を勧誘できるようになる。つまり、金融リテラシーの向上が独り歩き して、次から次へと循環的に顧客が希望しない金融商品を勧誘する事態が想定できる。

投資を日本人がしないのは国民性なのか?
国民性が保守的だからではなくて日本全体が真剣に国の経済を考える必要がある。
日本の政府がやってる金融改革におかしなところはないか?

春学期の間は広く、金融リテラシーと投資に関する論文を読む。





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