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没入体験の心地よさ

体験型エンターテイメントは面白い

体験型エンターテイメントと聞いて何を思い浮かぶかと言われたら、リアル脱出ゲームにイマーシブシアターが例に挙げられると思います。
類型には○○体験や、スポーツ観戦も体験型のエンターテイメントに入るのかなって思ってます。
物を買うだけではなく体験を買い、自分の中になかった価値観を蓄積していくというものが体験型エンターテイメントに分類されるものじゃないかなって個人的に解釈してます。
最近の流行というか、体験に対して価値を見出す人が増えてきているように思います。
それは物価高によって物の価値が上がったことによる本当にモノでお金を消費していいのか?という心理が働いたのか、それとも自分だけの宝物を探すためかなのか現在における価値観の変化もありこういった体験型エンターテイメントはより拡充を見せたのがここ2,3年かなと思ってます。

元々舞台観劇が好きで通っていた時期がありましたが、コロナで全てが吹っ飛び意気消沈していた時に出会ったのがバスケ観戦。(出会ったというか再会したというか、再びバスケ熱が盛り上がったというか)
加えて出会ったのがホテル丸々一棟を使ってのイマーシブシアター「泊まれる演劇」です。
イマーシブシアターについてはUSJのホテルアルバートを経て興味を持ったっていう感じです。
個人的にはホテルアルバート以外のものを知りたいという理由で検索していたら出会ったのがこの泊まれる演劇でした。(京都でやってる、めっちゃいいじゃん!という軽い動機で抽選応募してみました)
実際のホテルにチェックインし、夜にかけてその世界観を体験し、そしてその余韻に浸りながらホテルに泊まり、翌朝、昨晩に起こった不思議な出来事を思い出しながらホテルを後にする。
摩訶不思議な体験に私は虜となってしまい友人とともにほぼ毎回参加しています。
今回のnoteはそんな私が過去体験してきた没入体験についてほんの少しだけ語ろうかと思います(バスケの話題はないです)

沢山の情報量は時に良し、時に悪し

イマーシブシアターの面白いところは一人一人体験できるものが違うということ。
ということは膨大な情報が一つの演目にあり、その中の一部を体験するということです。なので参加者同士の情報共有が結構重要なファクターになるんですが、その情報共有って難しい所があるんですよね。
初対面の人と話すのって難しいじゃないですか!
私、人見知りなのに!
話聞きたいのに聞けない~~!
あ、その話私知ってるけど……話しかけていいのかな?
ってなってます
ある一部の人しか知らない結構重要なことって全員にいきわたるのにタイムラグが結構あって時々ストーリーに対して置いてけぼりを食らうこともあるのです。もちろん最低限の補完はされるので全くわからなかったというのはないのですが、考察ばっかりに脳の容量を割いてしまい目の前のことに集中できなくなるということが私はありました。
もちろん考察も含めイマーシブシアターの醍醐味!っていうのは理解しつつも、情報量が莫大になると脳内パンクするよなぁとは思いました。
特に題材が自分の世界観から離れたものほど常識や設定を飲み込むのに時間がかかり新たな情報を受け入れるのが若干時間がかかるなと思いました。
膨大な情報を飲み込むことは心地よくも、時に難しい……

とある深紅のホテルのクロージングパーティー

とあるホテルのクロージングパーティーに招待されたのはもう何年前のことだろうか。
初めて訪れたのにどことなく懐かしい感覚に心が揺り動かされ、一人一人の話を聞くたびにそうだ、ここではあんなことがあって、この人がこうなってという思い出がどんどんと脳内によみがえっていった。
摩訶不思議な出来事はなかったけれど、人々の思い出が詰まったホテルには愛とやさしさとほんの少しの寂しさに溢れていました。

私が初めて体験したホテルアネモネでの没入体験はとても印象的でした。
リアリティのある空間、少しのサスペンス、そして衝撃的な真実。最初はこれは謎解きか?という気持ちで臨んでいましたが、終わるころにはこれは素敵な観劇体験だったとなりました。
リアル脱出ゲームのように自分たちの行動により出れるか出れないかが決まるものではなく、一つのドラマを多角的な視点により感情を移入しやすくなるというのがイマーシブシアターなんだなと思いました。
マルチエンディングを望むのならば泊まれる演劇のような長時間でなおかつホテルに泊まるというコンセプトととは相反するのかなと今なら思います。
一人一人が辿る道がどんどんと集約され最後には一つの終わりを迎える。
そんな気持ちのよい空間に虜にされたのがモーテル・アネモネでした。

藍色の時を置いてきた旅

次に訪れたのは時間を忘れ、いやどこかに置いてきた旅でした。時間のわかるもの(時計、スマホ等)を受付に預け、どっぷりとその世界観に浸ります。
藍色に染まったそのホテルは今自分がどこにいるのか、だれと出会っているのか、いつなのか、そんなこともわからずただふわふわと漂う思念のようになった気がしました。
自分はいるようでいない、数多な時間を超えて出会ったのは今という奇跡。
今を生きる事、未来を生きる事、過去を生きたこと、これらを区切りながら見ることでより今の自分を愛そうと思いました。
ゆらゆらと漂いながら時間を旅する経験はここでしかできない特別な一夜でした。

インパクトのあるキャラクターが実は!?っていうものもあり、どんでん返しのどんでん返し、そして、終わった後に感じる心地よいけだるさ。
幾人の人生を見てきたかのようなその心地よいけだるさがまた更に没入感を演出していました。
前回のアネモネよりも情報量が多く、さらに情報をつなげる事にも苦労した演目でしたが結構わかりやすい伏線?キーワード?もありその人の人生を想像するのはできたのかなって思ってます。
ただあの人は?この人は?あの部屋は?という謎は結構残ったままで若干もっと体験したなぁと思わせるものでした(ただ泊まれる演劇、1期間中に複数行くほどの余裕がないのが私の懐事情、悲しい)
パンフレットなどで振り返ることができるとはいえ、この人ともっと話したかったな~~という思いもまた大きく出てきます。


この部屋のインパクトは凄かった

星降るホテルの最後の日

おとぎ話の中に潜り込み、摩訶不思議な世界のホテルで過ごす最後の時間。
たぶんたくさんの物語がそこにあったはずなのに、私が覗き見ることができたのはたった一部。ふわふわとした物語の中で私が出会ったのは一体何か。

この日私はめちゃくちゃに急いでいました。
新しい職場、新しい仕事に追われせっかくのVIPなのにチェックインが間に合うかどうかの瀬戸際でずっと心が落ち着かなかったのを覚えています。
せっかく楽しみにしていたのにあまり記憶に残っていないというのが悲しい限り。
これは内容云々ではなく自分の精神状態が引き起こしたものなので誰も責められないなと思ってます。
先ほども述べましたが、情報量の多さが売りでもあるんですがやはりその情報を咀嚼する時間がないと折角の素敵な出会いを見ることなく過去に思いをはせてしまうという難点があったりするんですよね。
泊まれる演劇は半年に一回、1年に2回しか公演がないので自分の中でおさらいする時間があってもいいのかなって思ったり、ラジバンダリ~
自分の中で最後のオチがいまだに思い出せないのがつらい。

不思議な力が集う学び舎

先日訪れたとある学園の創立パーティー。「ぶるぅむ」という見えざる力を持つ子供たちを保護・育成し世の中のために排出をする学園なのだが……
時に奇怪なうわさが流れ、それが生徒たちの心の中に好奇心と恐怖がふわりふわりと漂い始めていた。
招待された私たちは今まで闇のベールに包まれた学園の中をあるき、授業を受け、そして……
一夜で体験するにはドラマティックすぎるストーリーをいま、その時、面前で、体験するのだ。

最新作なのでネタバレはまだNGということで(※執筆中はまだ公演中だったので)そこまで多くは語れないですが、充実し、心がいろんな意味で忙しくなる体験になりました。
今までの泊まれる演劇での反省点やら新しい取り組みやらそして変わらぬ信条やらを垣間見えたような最新作でした。
やはり公演開始にはほぼソールドアウトなので行きたい方はぜひ先行抽選で応募するといいと思います。
数カ月先のホテルの予約はたまらないものがあると思いますよ。
公演を重ねるごとに長期公演となる泊まれる演劇ですが、キャストさんの体のケアも気を付けていただければ幸いです。

ホテルの廊下から扉一枚で別世界へ

泊まれる演劇の見どころの一つはセット美術だと思ってます。
ホテルの室内を全くの別の空間にするその技術には毎回驚かされています。
ホテルアネモネでは常連宿泊客の部屋なのでまだホテルの部屋の様相を残しているのですが、藍色飯店からはもう別世界です。
あるときは悲しみが集まる墓地、あるときは旅立ちの列車の中、あるときは待ち続ける子供の部屋、あるときはさわやか体育会系の部室、そして誰もが立ち入りをためらうような真っ暗闇の部屋など
それらすべてにストーリーがあり、その中でキャラクターが何を感じどんな行動をし、次につなげるのか。ホテルの一室という限られた空間で表現できるものとしてはこれ以上ないのでしょうか。
泊まれる演劇はこうして扉一枚という境界をうまく利用しているところに非現実感を演出しているのではと思います。
部屋の中の装飾がすごいのに比べて廊下は質素です。しいて言えばライティングや音楽での演出にとどめているのかなと。

真夜中の飯テロ

泊まれる演劇の醍醐味の一つであるのがフードとドリンク。
特にフードはこんなの夜中に食べちゃだめぇええええ!!っていうようなものがありつつもそんなの今日は特別だからいいじゃんという頭の中の悪魔が勝ちだいたいすべて食べてます。
軽食系からがっつりご飯系、甘いものからしょっぱいもの、私は揚げ物系に弱いです。
チーズ、ポテト、タルタル、おいしい……

まよなかの真夜中の美味しいやつ

もちろん朝ごはんも最高においしいです。ちなみに公演後はやはり歩き回ったり頭を使ったりとしていていい感じにおなか減ってます。とても良き時間を過ごせますよ。


ムーンリットアカデミーでの朝ごはん!ラジオを添えて(MCマーベラス)


ホテルだからこそできる少人数が一晩同じ場所にいることで生まれる縁、そしてその縁はホテルをチェックアウトすることで少しだけ薄くなってしまう。
でもまたこの泊まれる演劇で出会える可能性があると思わせる何かがあるんですよね。たった一瞬の縁なのか、それともまだつながることのできる縁なのか、それを探すのもまた一つの楽しみにしてもいいのかも?

HOTEL,SHE KYOTOとOSAKAの雰囲気の良さ

泊まれる演劇の舞台となる京都と大阪にあるHOTEL,SHEはとても良い雰囲気のホテルであるとともに普通に泊まるだけでも1万円近く料金が発生するという素敵なホテルです。
京都も大阪も観光地へのアクセスも程よく、駅からも遠くなくホテルとしてのポテンシャルありありなんですよ。
泊まれる演劇で宿泊者数を制限して運営するよりもきっと普通のホテルとして運営したらもっと事業的には儲かるとおもうのです。それでも私たちに極上のエンターテイメントを提供してくれることに私は感謝しないといけません。本当にありがとうございます。

特にKYOTOはアイスパーラーがあり、そのアイスがおいしいことおいしいこと……なんど真夜中の誘惑に負けたことか……
お酒との相性もバツグン、公演限定でのフレーバーもあり、もう!!最高!

そして各部屋にあるレコードプレーヤーがさらに素敵空間を演出します。テレビをつけずにレコードを流すのもまた一興ですよね。
公演中は全くスマホを見ないしデジタル機器にもほとんど触れません。人と人の縁をしみじみと感じた夜にはSNSに夢中になるのではなくレコードを聴きながらゆっくりと眠りにつくというのもまた素晴らしい体験ではないでしょうか。
夢でもしかしたら出会えるのかも、知れませんね。
どこからが現実でどこからが夢で、そんな曖昧な境目を揺蕩う日があってもいいんじゃないでしょうか。

「最高級」のイマーシブ体験

泊まれる演劇は正直安くはないですが、ホテル1泊分と3時間を超える演劇と考えるとそんなに高くもない?となります。
お手軽に体験をしたいという人たちにとっては手の届きにくい価格かもしれせんが、たった2カ月間しかない、一生に一度の出会い、と考えると私は対価に値すると思っています。
もしイマーシブシアターに興味はあるけれど高いお金を払うのはなぁと思う方はテーマパークのイマーシブシアターから始められるのもいいかと思います。
東京のお台場に新しくできたイマーシブシアターのテーマパークとかなら結構お手軽かなとおもいます。

でも、やはり最高級のイマーシブ体験は泊まれる演劇であると今の私は胸を張って言えると思います。
いつかこの最高級品をたくさんの人に味わっていただければ嬉しいなと思います。

また次もその次も

泊まれる演劇の次回作ももう情報解禁されてます。
次は不思議の国のアリスがモチーフ、いや女王様?とそんな不思議なワンダーランドがまたあの素敵なホテルに広がると思います。
どんなストーリーになるのか、どんな人と出会えるのか、今から期待で胸が膨らんでいます。


もちろん私は行きます。赤い服は持っていないのでこの日のためにちょっと頑張って見繕うかなと思います。
また素敵な出会いがあることを願って!!





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