二重情報処理理論② 副題:精緻化見込みモデル(理論)が主

二重情報処理理論について① 副題:二重情報処理理論が主。|北野竜允 (note.com) の続きです。

前回では、文字量の都合から①では二重情報処理理論について説明しました。
二重情報処理理論には、簡便評価反応と詳細評価反応があって、代替的な関係ではなく、並行的関係であり、対象に対する評価として、先に簡便評価反応が来て、調べる能力と時間がある場合において、詳細評価反応をし、対象に対する評価を修正するんでしたね。
そして、この二つは様々な事柄に対して適宜、理論が適用されていましたね。

今回の流れとしては、精緻化見込みモデル(理論)についてのフレームを示して、次にそれぞれの簡便評価反応と詳細評価反応に当たるところを見ていき、次にその二つの概念の関係を見ていくという流れです。

では、精緻化見込みモデル(理論)について見ていきましょう。

ー精緻化見込みモデル(理論)についてー
・精緻化見込みモデル(ELM:Elaboration Likelihood Model)というのは、ざっくりと言えば、二重情報処理理論の一つです。
 精緻化見込みモデルでは、情報処理は、情報処理に関する「動機づけ」の程度と「処理能力」によると考え、その度合いによって中心ルートと周辺ルートのそれぞれのルートを辿って、態度が形成されると考えます。
 また、情報処理における情報精査の程度は議論の関連情報についてまったく思考を働かせないというところから、あらゆる議論を検討するというところまでの連続的なものですから、一つの情報に対して、常に中心ルートあるいは周辺ルートを辿るわけではありません。
 つまりは、代替関係ではなく、並行的な関係です。

●中心ルート
 中心ルートを辿るのは、「「動機づけ(意欲)」と「調査する能力」と「時間」」が「ある」ときです。
「「「動機付け」と「調査する能力」と「時間」」が「ある」ので、「関連情報の精査が起こる可能性が高い」です。
そのため、消費者はメッセージの議論を入念に検討して処理します。
 中心ルートでは、メッセージ精査の過程で認知反応が関係します。
認知反応は、コミュニケーションに接した時に、そのメッセージ内容に関して生じる「支持」「反論」「中立」などの考えのことです。
 「情報精査が行われる中心ルートにおける説得」では、「「議論の質の高低」が重要な役割を果たします」。
質の低いメッセージが精査されれば「反論」が産出されやすくなります。
質の高い議論が精査されれば「支持」が産出されやすくなります。
 「中心ルートにおける態度変容」は、受け手が、「中心となる情報を入念に熟慮することで起こります。」
「引き起こされた態度変容は、「持続的」で、「行動予測的」と仮定される。」
 中心ルートを辿るからといって、「それが客観的なバイアスのかからない情報処理を意味するわけではない。」

●周辺ルート
 「「動機づけ」と「調べる能力」と「時間」」が「ない」時には、「周辺ルートを辿ります。」
この場合では、「「情報精査の可能性は低く」、「メッセージに付随する判断の手掛かりを処理し」、「メッセージの議論を処理せず」」に「態度を形成」してしまいます。
その手掛かりは、例えば「専門家が言っているのであれば、間違いない」「メッセージの送り手が身体的に魅力的な人だった」「メッセージの送り手は専門家だった」と、単純な特徴を手掛かりにして推論(考察)すること(認知)で起こります
 「手掛かりが発見されない」ときには、「初めの態度が保持」されたり、あるいは、「態度未形成の場合にはそのままの状態にとどまる」と見られる。
したがって、周辺的ルートでは、「手掛かりの種類」が「態度変化に重要な役割」を果たす。

ー中心ルートについてー

●特徴
・情報処理の動機が強い、または*2、調べる能力がある、または、時間があるときに辿る。
・関連情報の精査が起こる可能性が高い。
・精査の過程は認知反応が関係する。
 認知反応は、コミュニケーションの内容に対して「支持」「反論」「中立」などの反応のこと。
 質の高いコミュニケーションならば、精査されたときに、「支持」が形成されやすい。
 質の低いコミュニケーションならば、精査されたときに、「反論」が形成されやすい。

●態度変容
・態度変容は、コミュニケーションの受け手が、中心となる情報を入念に熟慮することで起きる。
 起きた態度変容は、持続的(変化がない)で、行動予測的(一貫性がある)と仮定される。
・中心ルートではブランド特性*1に関連するメッセージがブランドに対する態度に影響力を持つ。

●関与度(動機と能力)
・関与度(動機と能力)の高い情報(主情報)に対しては中心ルートによる情報処理(本質的情報内容の詳細化)が起こる。
 関与度が高いと中心ルートによる情報処理(ブランド特性の詳細な検討)を行う。
・商品関心度の高い消費者は中心ルートによる情報処理をして、表現形式(手掛かり)よりもブランド特性を入念に検討する傾向があるため、
 商品関与度が高い消費者は中心ルートによる情報処理をするので、商品に「ふさわしいタレント」が効果的である。

ー周辺ルートについてー
●特徴
・情報処理の動機が低い、または*2、調べる能力がない、または、時間がないときに辿る。
・情報精査の可能性は低く、コミュニケーションに付随(装飾)する判断を「手掛かり」にし、コミュニケーションの内容は処理しない。(=「何を言うよりも誰が言ったか」)
 例えば、「専門家が言っているのであれば、間違いない」「メッセージの送り手が身体的に魅力的な人だった」「メッセージの送り手は専門家だった」であり、こうした単純な特徴を手掛かりにして推論(考察)をする。
・ブランド特性とは直接に関係しないの表現要素が効果を持つ

●態度変容
・周辺ルートでは、メッセージに連合(付随、装飾、表現要素)した「手掛かり」に基づいた態度変化が起こる。
・周辺ルートでは、「手掛かりの種類」が「態度変化に重要な役割」を果たす。
・「手掛かりが発見されないとき」には、「初めの態度が保持」されたり、あるいは、「態度未形成の場合にはそのままの状態にとどまる」と見られる。

●関与度(動機と能力)
・関与度の低い情報(副情報)に対しては周辺情報処理(経験則*3heuristicsによる判断)が用いられる。
・商品関心度の低い消費者は周辺ルートによる情報処理をして、ブランド特性よりも周辺的な表現形式を重視しがちである。
・関与度が低いと周辺ルートによる情報処理(ブランド特性以外の手掛かりによる簡便評価反応による判断)が行われる。
・関心度が低い消費者は周辺ルートによる情報処理をするので、(ふさわしさよりも)「好意の持てるタレント」が効果的である。

ー中心ルートと周辺ルートの関係ー
●態度及び態度変容(態度変化)
・周辺ルートでは、手掛かりの種類が態度変化に重要な役割を果たす。
中心ルートでは、コミュニケーションに関連して消費者がもともと持っていた知識が情報処理の間に何度も参照(反省、かえりみる)されるなど、周辺ルートよりも努力が必要になる。
結果、中心ルートで形成された態度や変容した態度は、周辺ルートによるものより、持続性(一定)を持ち、現実の行動との一貫性(行動予測的)を持ち、反対の説得に対して抵抗力がある。
つまり、中心ルートで形成された態度や変容した態度は変化しづらく、一貫性があるということ。
●関与度
・コミュニケーションの消費者に処理の動機と能力がある場合は、中心ルートで処理される。
コミュニケーションの消費者に処理の動機と能力がない場合は、周辺ルートで処理される。
●ブランド特性と表現要素
・中心ルートでは、ブランド特性によるメッセージがブランドに対する態度に影響力を持つ。
周辺ルートでは、ブランド特性とは直接に関係しないメッセージに付随する表現要素が効果を持つ。
●メディア理論
・「精緻化見込み理論」や「ヒューリスティック理論」などの「二重情報処理理論(Dual Proccessing Theory)」系統の諸研究では、コミュニケーションの受け手は、テーマ(主題)への関心度が低い場合は詳細な情報処理をせず、過去の経験に依存した簡便な情報処理を行うとしている。この簡便法(簡便評価反応、周辺ルート)には、メッセージ情報(タレントなど)やメディア情報(送り手の著名度(有名度、出稿量(文章量)など)の手掛かりが利用されるとしている。
●商品関心度
・商品関心度の高い消費者は、中心ルートによる情報処理をして、表現形式(表現の仕方)よりもブランド特性を入念に検討する傾向がある。
商品関心度の低い消費者は、周辺ルートによる情報処理をして、ブランド特性よりも周辺的な表現形式(表現の仕方)を重視しがちである。
●有効なタレント
・精緻化見込み理論によると、タレント起用の適否(有効性)は、消費者の関与度(処理する動機とその能力)によって異なるとされている。
商品関与度が高い消費者は中心ルートによる情報処理をするので、商品に「ふさわしいタレント」が効果的である。
関心度が低い消費者は周辺ルートによる情報処理をするので、(ふさわしさよりも)「好意の持てるタレント」が効果的であるとされている。
●段階的説得*4
・精緻化見込みモデルで、事前に関与度を操作しておくことで、事後の情報処理方法を変えることができる。

*1ブランド特性
ブランドの特性のこと。
*2または
記号論理学では、「V」という記号で表される。意味は、二つあるいは複数の命題に対して、それを満たすあるいは一部を満たすという意味であり、真理表で示すと二つの命題A、Bに対して
A  l  B  l AVB
真 l 真 l   真
真 l 偽 l   真
偽 l 真 l   真
偽 l 偽 l   偽
で表現される。
真というのは、命題が正しいということである。
偽というのは、命題が正しくないということである。
真理表は、命題の真偽を示した表である。
*3経験則
過去に学習した知識や経験のことである。
*4段階的説得
「段階的説得とは、目的とする説得を容易にするために、(直接に説得するよりも)事前にある働きかけを行って受け手の心理状態を変えておき、その後で本来の説得を行うこと」と定義できる。

最後に、以上の事柄は、『広告心理 電通 2007』及び『メディア・オーディエンスの社会心理学 改訂版 新曜社 2021』を参考にして作成されたことを改めて強調しておく。


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