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ホームシック

出張に行くとき、出来れば良い宿に泊まりたい。仕事で疲れた体を休めるために、心地よい空間で眠りたい。

旅行と違って、目的地を自ら決めることは出来ない。予め決まった目的地の周辺で宿を探す。

宿泊費は会社から支給されるが、上限があるため高い宿は避けなければならない。なるべく支給額ギリギリで、部屋も綺麗で、ご飯も美味しそうなところが良い。温泉なんかがあれば、なお良い。

今日は急遽出張になり、宿を探す暇もなかったから、会社の事務員さんに手配を依頼した。

仕事が終わり、予約してくれた宿に向かう。Googleマップに目的地を入力し、ナビに言われるがままハンドルを切る。外はもう真っ暗で、飲食店もほとんどが閉店していた。

仕方なくコンビニで夕飯を購入する。

ようやく、宿に到着。古めのビジネスホテル、といった感じで、なぜかホテルの入り口には178センチある僕と同じサイズ感のテディベアが置かれていた。

フロントに行くと、誰も居ない。フロントのテーブルの上に「ボタンを押してください」と書かれていたので、ボタンを押した。

寝癖のついた、やる気のなさそうな中年の男性が現れ、チェックインの手続きを済ませる。値段は3450円と、ビジネスホテルにしては安い。

鍵をもらい、部屋に向かう。鍵を開け、中に入ると、10mほどの廊下がある。奥に進むともう一つの扉。それを開けると、20畳くらいはある和室だった。

1人にしては広すぎるだろと思いつつ、部屋を見回す。隅の方に、ちょこんと布団が敷かれている。何故か枕は5つも並べられていて、硬さが違うのかと触ってみたが、全て同じものだった。

部屋の壁は全体的に黄ばみがすごい。フロントで喫煙可と言っていたから、ヤニが不着しているのだろう。

エアコンは業務用だろうか、天井埋め込み式の大きなエアコンがある。真っ白なエアコンと黄ばんだ壁紙ミスマッチだ。

とりあえずシャワーを浴びようと思い、部屋の一番奥にあるシャワールームへ向かう。蛇口をひねるが、水しか出ない。必要最小限の水で、震えながら体を洗う。

だだっ広い部屋で、1人寂しく夕食をとる。1人は嫌いじゃないけど、こんなに広いと何故か寂しくなる。

夕食後、歯を磨こうと、シャワールームに置いてあった歯ブラシを使った。これが、タワシかと思うほど硬く、歯茎が削れていってるんではないかと心配になった。

この時点で、時刻は深夜1時を回っていた。少し作業をしようとパソコンを取り出して取り掛かる。

外からはカラスの鳴き声。不気味な予感がしてくる。

とても集中できる環境ではなかったため、寝ることにした。

電気を消そうとするけど、部屋の至る所にスイッチがあり、どれがどれのスイッチか分からない。

布団に潜って、noteを書いている今も廊下の電気は点きっぱなしだ。

やっぱり、宿選びは大切だ。
人に頼らずに、ちゃんと自分で予約しよう。

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