見出し画像

持ちつ持たれつ持たれつつ

三角関数、ベルヌーイの定理、微分積分、フレミングの法則。いかにも難しそうな響きだ。

学生時代、数学や化学などのいわゆる理数系が本当に苦手だった。教科書を開くだけで、軽く目眩がしてくるほど苦手意識を持っていた。実際、成績も相当悪かった。いつも放課後に補修を受けていた。赤点を取らないためだけに必死で食らいついたけど、どう頑張っても眠たくなる。きっと、脳みそがショートしていたんだと思う。

それに対して、国語や社会などの文系は授業が楽しかった。そもそも眠たくならない。この話聞いたことあるぞ! とか、この作者見たことある! のように、いつもワクワクしながら授業を受けることができていた。当然、成績も良かった。特に、国語だけは何故か分からないけど、毎回クラスの中でもトップレベルだった。

どんなに頑張っても理数系の点数が上がらない僕に、当時の先生は言った。

「高校卒業すれば、二度と勉強しなくていいから今頑張っとけ」と。

あまりにも自信満々に先生が言うものだから、僕は何の疑い持たずにその言葉を信じた。そのおかげ? なのかは分からないけど、少しは成績が上がった。

高校最後の学期末試験が終わった時は、すごい解放感だった。「これで、苦手な勉強をしなくていいんだ……」それは感動に似た気持ちだった。清々しい気持ちで卒業した。

ただ、僕はバリバリ理数系の会社に入社した。

もう一生使わないと思っていた数学の知識を毎日のように使う。先輩に「ちょっと、ここが分からないんですけど……」と聞くと「三角関数使えば分かるよ!」と満面の笑みで返される。いや、そのナントカ関数が分からないんだ!!! 周りの同期は「あ、三角関数使えば楽勝じゃん〜」的な感じでやってたけど、僕の頭の中にはいつも「???」で埋め尽くされていた。

新入社員の時はそうだとしても、さすがに今は覚えただろと思う人もいるだろう。僕だってそう思う。

でも、まだ分からない。 

後輩に「三角関数って何だったっけ?」と聞くことにも慣れてきた、11年目の春。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?