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貰う方からあげる方へ……

子供の頃は正月が楽しみで仕方なかった。

その理由は、おせち料理でも、バラエティ特番でも、久しぶりの親戚に会えることでもない。

お年玉だ。

毎年、12月頃からノートに自分が欲しいものをすべて書き出し、その金額を調べていく。そして、去年のお年玉の実績を考慮しながら、優先順位をつける。貰う金額が期待はずれだと、冬休み中は凹んで立ち直れないから、実績値よりも低めに設定しておくのがポイントだった。


そして、正月当日。祖母の家に親戚一同が集まる。総勢で20人ほどの大宴会だ。僕は、おせち料理なんか全く興味はない。それほど親しくもない親戚のおじさんに、この日だけは笑顔ですり寄る。

「はい、お年玉」

ポチ袋を渡されると、厚みを確認する。ペラペラだと少しガッカリする。我ながら生意気なガキだ。

全ての親戚にお年玉をもらい終わったら、すぐに別室に向かい、集計を始める。〇〇おじさんは3,000円。△△おばさんは1000円……。ポチ袋を開けるたびに一喜一憂するのが忙しい。ペラペラの袋にいれてある、□□兄ちゃんの金額には期待してなかったのに、まさかの1万円!! みたいなサプライズもあったりする。


そうして、家に帰った後は買い物に走る。毎年、それが楽しみだった。


そんな僕も、貰う側からあげる側になり、正月が楽しみではなくなった。自分がもらうときはワクワクしていたのに、あげる側になると楽しみがなくなるとは……。我ながら、ケチなおっさんだ。


親戚の数(未成年のみ)は、10人以上居て、全員にお年玉をあげると、財布が寂しくなってしまう。でも、きっと僕にくれていた皆も同じ思いだったんだろうなあ、と思いながらポチ袋にお金を詰める。

数年前、親戚一同(大人のみ)で話し合い、お年玉の額を統一することで閣議決定された。小学生未満は1000円、小学生から中学生は2000円、高校生からは3000円というものだ。僕にとってはありがたい。

僕が子供の時じゃなくてよかった……と胸を撫で下ろした。

そんな自分に少し後ろめたさを感じつつも、今年も規定額キッチリをいれたポチ袋を親戚のちびっこたちに配る。

「ありがとう!!!」

無邪気な笑顔を見ると、幸せな気持ちになる。


いつか、サプライズで規定額×1000円くらいあげたいな。


なんて思いながら、ハイボールを食らう午前4時……。

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