SHELL and JOINT

平林監督、noteへの投稿も全く無く、本名なのか、実在するのかも分からない人間にレビューを書くキッカケをくださってありがとう。

1000字と聞いて何もピンとこない自分を馬鹿と思うかラッキーと思うかは別として、今から書くレビューが長くなりそうな予感はするので先に結果から言おうと思う。

SHELLandJOINT、見てよかった。平林監督、制作チーム、俳優陣の皆さん本当にありがとう。

いつも映画を見終わったあと、僕の中では、①面白かった。②つまんなかった。(自分には合わなかった)③観てよかった。と、ざっくり3つに分けているのだが、この映画は圧倒的に③だった。

①は単純にストーリーが面白かった。アクションシーンが気持ちよかった。登場人物がカッコよかった。とかで、例えるなら旅行に行って誰もが行くような有名な観光地やご飯屋さんに行って、楽しい!!とか、美味しい!!とか思う感覚に似ていて、劇映画の大半はこれに入る気がする。ただ、少しくらい面白くなくても、自分が選んで観たことで多少のフィルターという魔法のスパイスがふりかけられて、面白かったと思い込む場合もありますが。

②は、期待して行ったはいいものの、その期待を超えることがなかったもの。期待しすぎていたり、自分には似合わないだろうと恥ずかしくなったりする感覚。個人的には原作ありきのラブストーリーや、ディズニー映画に多い気がしています。展開が予測できて、且つキレイすぎる。人間と同じで、性格めっちゃ良くて、勉強もできて、スポーツも万能だし、女子にもモテモテ。素晴らしいんですけど、完璧すぎて近寄りがたいんです。嫉妬も含みます。それよりも、ちょっとダークな部分あった方が好きになるんですよね。あくまでも、個人的に。です。、、僕だいぶひねくれてますね。

③もまた例えるんだろ?と思われているのを想像しながら、その期待に応えるべく例えますが、旅行に行って①で上げたような有名な観光地に行き、少し時間が余ったから、テキトーに知らべて行ったご飯屋さんがめっちゃボリューミーだったとか、たまたま現地で知り合った人に教えてもらった居酒屋に行って、その土地の名産品ではないけど、料理が美味しくて、大将が親切な人で、そんな店に来るお客さんたちもやっぱり良い人で、料理だけじゃなくて人の温かみにも触れることができて、ネットやガイドブックには決して載ることはないけど、どんな有名な観光地たちよりも結局そこに行ったことがその旅行の1番の思い出になってるじゃんみたいなアレです。ちゃんと伝わってますかね?

ちなみに③の内訳には、歴史映画(史実を基にした)やドキュメンタリー、ノンフィクションなどのように、自分がどう思うかに関わらず、その事実を知れたというだけで意味のある作品もあれば、作品としては面白いと感じない、つまり②に仕分けされるものの、自分が好きな俳優が出演しており、その人の芝居を見れただけで良かったなどという作品もあります。

前置きだけで1000字行ってしまったことに驚きつつ、やっと本題であるSHELLandJOINTについて書いていきます。


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この映画には一貫したストーリーがありません。ただ、映画の予告にもあるように「生と死と性」というのがこの作品のテーマなのだろうというのは分かる気はします。

一貫したストーリーは無いと言いましたが、この映画には多くのストーリーがあります。そして、それらは決して交わりません。無理やりこじつければ交わらせることも可能なのかもしれませんが、監督がそう言っているので無駄な考察はせずに、このまま進みます。

基本的にカメラは固定されていて、長回しです。僕が今まで見てきた映画に長回しが無かったわけではありませんが、ほとんどのシーンにおいてその手法を使っているモノは見たことが無かったので驚きました。観る側からすると、長回しが多ければ展開が遅く、飽きてしまいます。ただ、この映画はカメラ固定の長回しでも飽きずに観ていられるんです。これは本当に不思議な感覚でした。そこについてド素人並みに考えると、3つの要因があるんじゃないかという結論にたどり着きました。順番に書いていきます。

a 画面の構図が美しい

b セリフ、音楽、間が絶妙

c シーン毎に抑揚がある

この3つです。


まずaについて。

もうそのままです。構図が美しいんです。美しいというか気持ち良いというか。カプセルホテルのシーンは部屋がキレイに並んでいて、それをこれ以上無いくらい美しい構図で映しています。カメラの位置があれ以上に上でも、下でも(右と左は割愛します)ズレていたら、この気持ちよさは無いんじゃないかと思います。美術館でキレイな絵画を見たら立ち止まってしまうように、作中の美しい構図に見とれてしまいます。また、奥行きのあるシーンが多く、奥から何かが出てきたり、出てこなかったりするので、画面に吸い込まれるような感覚に陥ることができます。監督が、構図を決めるのに、左目を瞑りすぎて筋肉がおかしくなったと言われるのもこの美しい構図を見れば頷けます。それを見た僕は、画面に集中しすぎて、両瞼が疲れて目の前が突然真っ暗になりました。あ、決して寝たわけはありませんので。

あと気持ちいいのが、海辺のシーンで女の人がブイに付着したフジツボをカリカリするシーンです。あれだけで2時間見れます。なんなら、酒のつまみにもなりそうです。酒のつまみついでに、もうひとつだけ言わせてください。親子が亀の手を調理するシーン。あの、夏の終わり感、親子の距離感、どことなく漂う悲壮感。もっと続いてほしいと思いました。亀の手は全然美味しそうでは無かったですけど、剥く音は最高ですね。


次にbです。

これだけ長く間をとって言うセリフそれかよ!!とか。あ、そこは即答するのね。。のように、見る側が想像する「間」を裏切ってくれるので面白いです。そのセリフに押し付け感があると”伝えようとしてる感”がヒシヒシと伝わってきて鼓膜がむず痒くなります。「今からいいこと言うよ!」と言われたあとに、いくら名言を言われても響かないように。でも、平林監督のセリフには押し付け感が全く感じられません。これが笑えるシーンだとすると、ドッカーーーンみたいな大爆笑は全然ないんですけど、終始ニヤニヤしながら観ている感じです。笑いの平熱が高いです。

話している内容は「生と死と性」についてが多く、重くなりがちなテーマなんですけど、直接的に「生きるとは!」とか「死ぬとは!」ではなく、自然な会話の中でそれらに関わる部分を切り取っているのでスッと入ってきます。監督の哲学が炸裂しています。

音楽に関して言うと、この映画は音楽(BGM)抜きでは成立しないんじゃないかと思うくらいの存在感です。これだけ多くのシーンがあって、しかもそのシーンは交わらないものばかり。シーンの切り替わりってすごく難しいと思うんです。長回しをしていて、見る側はすごく引き込まれて集中しているのに、パッと次のシーンに切り替わったら、熱が冷めてしまいかねません。でも大丈夫です。音楽がすべて解決してくれます。最後の方は、「あー、この音が流れてきたから、そろそろ場面転換するな。」なんてことも思い始めます。セリフや間は裏切られっぱなしですが、ここに関しては期待通りなのでそこのバランスが良いんですよね。

それと、このシーンはなんだ?真剣なシーンなのか、それとも笑うシーンなのか?のような疑問が生じるとします。でも大丈夫です。音楽がすべて解決してくれます。すいません、ふざけすぎました。次、行きます。


最後にcです。

もう何度も言いましたが復習のためにもう一度。この映画はかなり多くのシーンがあります。正直、「生と死と性」には全く関係のないであろうシーンもたくさんあります。ただ、ずっと重いシーンが続くとつまんなくなりますし、セリフのないシーンばかりだと飽きてきます。そこを、上手いことバランス良く配置しています。セリフの少ないシーンがきたと思えば、セリフの多いシーンが来て、重めなシーンが続けば、ティッシュくらい軽いシーンが来たりします。遊園地でずっとジェットコースターには乗れないし、お化け屋敷だけの遊園地なんて絶対イヤです。でもジェットコースター乗ったあとに、お化け屋敷に行って、たまにはにメリーゴーランドに乗ったりしつつ、ゲームセンターにも行ってみようかな、みたいな。これ、監督がもう言ってた気がするぞ。。


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つらつらと書いてきましたけど、こんなに長いレビューを書ける事がこの映画の面白さを物語っていると感じています。考える余白がたくさんある映画なんだと思います。

結末が曖昧な感じで終わったり、謎解きがメインの映画はそこを考察することはよくありますけど、「SHELLandJOINT」の考察は100人いれば100人とも違うんだろうなと思います。そこがこの映画の醍醐味な気もします。

とにかく、この映画は観て良かったと思いましたし、何よりも平林監督の長編映画がまた観たいと思います。

まさか、この企画に応募して当選すると思ってなかったから、少しビビりながら書きましたけど、すごく楽しかったです。1度観て2度楽しめました。

1000字って意外と簡単じゃんと思いながら、終わりにします。


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