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XVIV. ポプリ_pourri

麗しい薔薇の花束 
喉までもが潤う馥郁とした薫り
開ききった後の花から零れ落ちる花弁が
いつしかテーブルの上に積もる
ビロードの瑞々しい花びらは水分を失い
闇と光のコントラストを弱めるが
淡い色を残した花弁を鼻に近付けると、開花直後とは異なる独特の甘い香りがする.

花の少ない冬の時期
せめて香りだけでも、と思えば
積もった花びらを寄せ集め、香気を閉じ込めておこうと企てる.

香りが持続的に放たれるよう、散る前の香り豊かな花の蕾や
香気や精油の豊かなハーブ、木の実、スパイスを集めて混ぜ、
十分寝かせておいたものがポプリ賦香が語源pot pourriは「腐った鍋」
熟成が必要
その点、茶葉の扱いにも近い.
酸化によりフレッシュな植物にはない成分が生じる.

フィレンツェのエルボステリア(欧州版の漢方薬局 植物療法の薬局)には自家製ポプリが売られていた。毎年、その年に収穫したハーブ類から作られるので、その年ごとの出来になるが、代々その家に受け継がれる秘伝のレシピがある.

香水に限らず、欧州では古くから賦香が生活の中にあった
天然の植物から作られた数種類のポプリを嗅いでみると
古くからある幾つかの典型的な香水の香りがポプリの香りに一致することに気が付く.
スパイシー系に分類されるような香水のハートノートは、
ポプリに起源があるようにも思える.
日本では、伊達男、気障、大人の男性、といったシンボルとなる
ある種典型的男性用香水の調香は、
欧州では懐かしさを含む家庭の包容力に繋がる香りなのかもしれない。
Santa Maria Novellaはポプリとともにその名ごとポプリとした香水を販売している.
ユニセックスだがラストノートの温かさは、ファッションとしての自己主張というよりも家庭の安らぎに近い.

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