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シェアサロン経営のはじめかた 【その2.】 競合を出し抜くためのコンセプトづくり。

2022年5月。

どんなシェアサロンにするのか?
私と上原のコンセプトづくりがスタートした。

とはいえ、シェアサロンを作ったことがないので、何から手をつけていいのかわからないことばかり。
そんな中、なんとなく見えていた方向性は

「上原が理想とするシェアサロンの中に答えがありそう」

ということ。

そこで「どんなサロンにしたいのか?」のイメージを彼女に聞いてみることに。

対話の中で見えてきた「理想とするシェアサロン」は以下のようなものだった。

私の思うシェアサロンは、いわば誰でも入れる雑多なサロンというイメージ。
1人でやるんでしょ?大変じゃん。
お客様掛け持ちできないんでしょ?売上伸ばせないじゃん。
新規のお客様来ないでしょ?集客なんて1人じゃできない。
基本給なくて、社会保険がなくて生活成り立つのかな。
そんな心配事だらけのフリーランス美容師。

あまり良いイメージがなかった。
私自身こだわりの強いサロンで働いてきた経歴もあり、いろんな美容師が混在するサロンってお客様はどう思うのか?
自分は働きやすいのか?
ごちゃごちゃした空間になってしまわないか?
そんな懸念もあります。

そんな中、明確に思うのが
私と同じく、育児と仕事の両立に悩んでいるママ。
生理や体調不良でフルタイムの仕事に負担を感じている女性。
結婚を機に仕事のペースを落としたいと思っている方。
わたし視点で思いつく、いろんな悩みを抱えている女性に対して
「もっと違う働き方があるよ」
と、背中を押せるようなサロンがあったら、私自身働いてみたいと思う。

だから私が創りたいのは「女性専用のシェアサロン」

「あとちょっとこうだったらいいのに」という細かな視点をサロン運営に取り入れることで、女性美容師に共感してもらえて、働きやすい空間を作っていくこと。
同世代の女性しかいないから、意見を交わしやすく、共感してもらいやすく、店内は常に綺麗で、使いやすい。
私と同じく、ママ美容師がいて、好きなことをしながら副業美容師をしている人、髪の毛やりながらネイルやまつ毛もできちゃうオールラウンダー美容師、もはや美容師ではなくスキンケアやメイクなどのアドバイザーさんまでいるような空間。

様々な働き方があって、それぞれの事情があって、自由にちょうどよく働く。
働き方が選べるようになった今、フリーランスの女性はどんなところで働きたいのか?
常にそんなことを思いながらサロンづくりをして、たくさんの美容関係者の方に働きやすいシェアサロンを提供したい。
女性の働き方を後押しする女性専用シェアサロン。

それがわたしの理想とするサロン。

「女性専用シェアサロン」
「働く女性美容師を応援するシェアサロン」

2010年半ばまでの美容業界では、青文字系や赤文字系に代表される大枠のジャンルは決まっていても、メンズ・レディースを完全に分けることはあまり行われてこなかった。
しかし、2010年半ば以降、得意分野を詳細に決めてマーケティングしているサロンが強い時代に移り変わっていく。

私の周りでもメンズ特化で全国的に突き抜けているfifthの木村くんや、脱白髪染めハイライトで支持を得ているまさやん。
特定のジェンダーやジャンルに絞ってマーケティング展開しているサロン(もしくは個人)が結果を出している状況を見てきた。

シェアサロンにおいて「男性専用」はニーズを想像できないが、「女性専用」、これは新しい価値を醸成できかもしれない。
すでにマーケットを拡大している大手との差別化も図れそうだ。

ブランド設計は上原の意向を全面的に取り入れ、彼女が理想とする世界観に対して、私が経営的ノウハウを差し込みカタチにしていく。
これをnuuにおける価値生成の核とする。

立ち上げ当初から2人の共通認識としてあったのは
「シェアサロンらしくないシェアサロンを創りたい」
ということ。

「らしくない」とは抽象的だが、言語化するなら、我々が運営するサロンは「思想が宿るものにしたい」という想い。
アシスタント時代から一緒に働いてきたので、
「オシャレじゃないと萌えない」「ダサい事はNG」
このクソめんどくさい感覚は前提条件として共有していた。

一方で、女性専用にすることによる集客面での不安もある。

男女兼用の方がたくさん利用希望者がきてくれそうだし、性別を絞る必要はなくないか?
そんな邪なことも考えたが、上原が実現したいシェアサロンの解像度を上げることを最優先として意思決定することにした。
(後述するが、結果的にこの意思決定がマーケティング上の優位性を獲得することになる)

上原との話し合いを重ね、nuuのコンセプトが明確になっていく。
そして私自身も彼女のアイデアに賭けようと思えた。





コンセプトが固まり、あとはオープンに向けての準備。
まずは利用するスタイリストを募らなくてはならない。

上原には自社内で同じ意向を抱えていそうな女性スタイリストに声をかけてヘッドハントするよう依頼。
その結果、2名のスタイリストからフリーになって働きたいと意思表示があった。

2人とも売上も実績もある社内の基幹人材。優秀な2人。
グループ内でのカニバリゼーションを許容する格好にはなるが、時代の流れを考えれば、早めに声をかけて次のキャリアを提示すべきだと判断した。
すでに退社が続いている状況に自ら拍車をかけることに懸念はあったが、中長期を考えるとむしろ最善であったと思う。

ハコは創業の地である代官山の店舗を改装してシェアサロン化し、法人はコロナ禍中にスタートしてあまり上手くいかずに休眠状態だった写真データ販売の会社(これが株式会社suns)があったのでこちらを利用。

内装は上原含む初期メンバー3人からアイデアを募り、女性視点を取り入れつつ「シェアサロンらしくない」デザインに転換。
閉塞感のないパーテーション、変形ミラー、大理石のセット台。
シンプルかつ、属性を超えて許容してもらえそうな空間を意識して設計した。

利用プランは他社のサービスを参考にしつつ、ママ向けをはじめとした様々なニーズを想定して作成。女性専用ならではの働き方を後押しできる多様なバリエーションを用意。

内装打ち合わせ、HPデザイン、SNS作成、会計周りの整備、各種契約、利用契約書の作成、保健所への検査申請…etc

出店時は毎度のことだが、悪路を走るランナーのようにいろんな事がトラブルと共にバタバタと過ぎ去っていく。

内装費用が予算を大きく超える、工期が間に合わない、工事中に他テナントからクレームが来る、保健所から構造で弾かれた。など。
砂利道を走っているとそういったことはつきものだ。

過去にも同様の事象が発生するたび私は内にも外にも感情を抑え合理的に処理するようにしてきた。

やれること、やれないこと。
押し切ること、諦めること。

新しいことを始めようとするということは、すなわちそんなことの連続である。
とはいえ、何度も同じ道を走ってきたのでさほど問題ではない。

やるべきことをこなして、2022年7月19日に女性専用サロンnuuは代官山の地でオープンした。


つづく


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