回転寿司とおじいさん

午後、小腹が空いて、ふらりと商店街の回転寿司に立ち寄った。
大食漢の私は、回転寿司に入ると、ついつい食べ過ぎてしまう。それも夢中になって。

食事時ではない店内に、お客さんは少なかった。
夢中で食べていると、近くのテーブルで、おじいさんが店員さんにお会計をお願いしていた。

お会計は、100円のお皿が5枚。550円。
私が注文するお皿も、100円皿の率は高いが、ついつい高いお皿も取ってしまうものだ。
おじいさんのテーブルは、きっちり100円皿のみが5枚、つつましく重ねられていた。
控えめに言って、「控えめ」ではないかと思った。

実は私、このおじいさんのことを街で何度も見かけていた。おじいさんは、髪は無造作で、顎髭も長く伸ばしているという風貌。正直、あまりこぎれいな服装ではない。一度、会えば、覚えやすい。

大変恐縮ながら、ホームレスの方かと思っていた。
でも今日、店内で私の近くにいたおじいさんは、全く不快なにおいはしなかった。
また、大きな荷物も持っておらず、手ぶらだった。
佇まいもきちんとしていた。
ホームレスというわけではないのだろう。
失礼なことを思ってしまっていたな。

おじいさんがお店を出た後、程なくして私もお店を出たら、今度はコンビニの前で遭遇。
でもおじいさん、お店の外から店内を眺めるばかりで、お店に入ろうとしない。
ずっとそうしていた。

それにしても、おじいさん、550円とは言え、回転寿司を食べるお金があるなら、どうしてカミソリで顎髭を剃らないのかな。もしかしてファッション?髪もできれば、綺麗に整えたらいいのにな、とか勝手にいろいろ思う。

最近、このおじいさんに限らず、お年寄りを見かけると、自分の父と重ね合わせてしまう(母は亡くなっています)。

うちの父も、年金暮らしで、つつましく暮らしていて、今日も食事は吉野家の牛丼だったと言ってたけれど、もう薄くなった髪を、わざわざ美容院で切っている。あまり回転寿司に行く習慣はないようだけど、行けば、相応に自分が食べたいものを食べるだろう。

もし仮に、おじいさんがうちの父だったら...
と思うと、娘として、ちょっと切ないかな。
年はきっと、父よりおじいさんの方が若いはずだ。
見かけるようになったのは最近なので、もしかしたらのもしかしたらで、コロナの影響で失業したということもありうるかも。もちろん聞けないけれど。

どんな事情があるにせよ、おじいさん、と見られるような歳まで、きっと真面目に生きてきた方だと思う。
回転寿司くらい、せめて140円のお皿も注文してほしいの。
そうではない世の中が、今日は無性に理不尽な気がした。

私は政治や経済にも多少は関心があって、足許ではコロナ対策とかも気になるけど、中長期的には、安心して年を取れる社会、というのを自分は求めているような気がしている。それが、働き盛りの世代や、もっと若い世代が、安心してチャレンジできる社会にもつながるような気がするから。

おじいさん、次に回転寿司で会う時は、100円以外のお皿を注文してくれていたらうれしい。


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