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ゴビ砂漠への入り口は天国だった。

ウランバートル滞在2日目の朝。気持ちが高ぶっているのか5時台に目が覚める。昨夜の残りで朝食をすませ、キッチンの片付けやパッキングをして7時半に宿を後にした。

ウランバートル到着後宿まで送ってくれたおじさん曰く、流しのタクシーは簡単に拾えるよということだったが、前日に歩き回った印象としてタクシーの数は少なそう。宿の場所は市街から少し離れていることもあり、しばらく待ってもタクシーが通りかからない恐れがありそうだ。万一長時間タクシーが見つからなかった場合を想定して、早めに移動を開始することにした。

向かう先は5kmほど離れたFlower Hotelという日系ホテル。ツアーで来た参加者たちは昨夜からこのホテルに泊っていて、レースの受付や説明会はホテルの会議室で行われるのだ。せっかく初めて訪れるモンゴルでツアー客と一緒に日系ホテルに滞在するなんてツマンナイ。ということで飛行機と宿は自前で手配することにしたが、この後ツアー参加者の話を聞いた後、この選択肢がますます正しかったことを知る。

タクシーがつかまるかどうか不安な気持ちを抱え、重いスーツケース(前日に購入したお土産の酒がすでに3lを超えていた)をかかえて通りに出た途端、ものの10秒もしないうちに近くをたむろしているおっさん達から「こっちに来い」という手招きが。白タクかぁと躊躇していてもいいからこっちに来いとのこと。

俺の車に乗れとトランクにスーツケースを積み込もうとするので、昨夜のおじさんがモンゴル語で書いてくれたホテル名を見せて「いくらで行くのか書いてくれ」とペンとノートを出す。書かれたお値段は日本円にして400円くらい。集合時間まで余裕があるし、まあ大丈夫かなと乗り込んだ。

Google Mapと見比べながら道をチェックするこちらの警戒心をものともせずにブイブイとナビも無い車を走らせる運転手さん。程なくしてFlower Hotelに到着した。「疑ってごめんね」と通じるはずもない日本語でお礼を言い、ホテルマンにスーツケースを下ろしてもらいフロントへ。

そこはなんというか、その昔北朝鮮の平壌を訪れたときを思い出させる古い建物だった。どちらも社会主義ロシアの影響を強く受けた国なのだから似ているのも不思議はないか。

ホテルのロビーでレーススタッフに話を聞き、レースのチェックイン開始が1時間遅れて9時になったことを知る。ホテルのロビーの隅でスーツケースを広げレースで支給された専用バッグにレースの装備を詰め込んだ。中身が軽くなったスーツケースは、レース後に戻るまでホテルに預けるのだ。荷造りが終わっても時間はたっぷりあるので、コーヒーでも買うかと散歩に出ることにした。

ホテルの周辺は閑静といえば聞こえはいいが、徒歩などでのアクセスが悪い坂の上の奥まった立地で、街歩きにはあまりむかない。少し歩き回ったが何も見つからないので(コーヒーは買えた)、再びホテルに戻る。ちょうどその頃、レナさんがロビーに降りてくると連絡が入る。

レナさんはサハラマラソン6回出場という砂漠レースの猛者で、今回のゴビマラソンも共通の知人(大会関係者)からエントリー費の免除という有難い(ハメられたとも言う)待遇で一緒に参加することになった。5年前のサハラマラソンでも同じテントメイトで気心が知れているので、そういう知り合いと同じ大会に出られるのはとても心強いのだ。

ロビーで再会を祝し、レースチェックインが開始するまでに昨夜飛行機の到着からの話を聞く。なんと、空港から市街への大渋滞に巻き込まれ、通常なら30分もかからない道のりに2時間かかり、ホテルに着いたのが22時を回っていたとか。夕飯も食べておらず、SIMカードも調達できず、さらには予約したシングルルームにバスルーム(風呂/シャワー)がなかったと立腹していた。そりゃ怒るわなぁ...

そうこうするうちに他のレース参加者が続々とロビーに姿をあらわした。レースの受付が始まったようだ。受付会場のホテルの会議室では、レース用のバッグと参加同意書を持った参加者たちが列をなした。といっても、大会受付に並んだ参加者名は20名ほど。想像よりも少ないぞ。

装備チェックの順番が回ってきたので、バッグをあけて装備リストと照らし合わせた。チェックはとても緩く、重量チェックを忘れて後でやり直すとか、メディカルチェック(血圧測るだけ)をしないで完了(あとで気づいて自分で測りに行った)したりとかそれはもう牧歌的な雰囲気。しかも、スタッフは全員日本人か日本語のわかる現地スタッフばかり。これからモンゴルのレースに出るという実感がわかないまま全員の装備チェックが完了し、レースの説明会が始まった。

説明会ではまず主催の挨拶、レース開催の背景などの説明があり、続いて一番気になっていたコースの説明に。ポイントとしては、500mごとにこういう標識(バリースと発音してたが、なんのことだかよくわからず)が立っているので、そこに書かれた方位と自分が持ってるコンパスとを合わせて走ってね、ということ。なんだかよくわからず不安が募る。

その後はレース参加者の自己紹介タイム。日本勢は自分も含めてサハラマラソン経験者がやけに多く全体雰囲気を持って行ってしまった感じ。このレースはリピーターも多いようで、なによりも最後に通訳を交えてスピーチした若いモンゴル人女性(その後の聞き取りで、過去の大会のチャンピョンでモンゴルの長距離界の選手だと聞く)の力のこもったスピーチが心に残った。

説明会終了後は支給された唐揚げ弁当!を食し、その後はバスに乗り込んでいざゴビ砂漠へと出発。

なんとも可愛らしいバスの内装。

並走するスタッフカーも、これまた可愛い。

いよいよ水洗トイレとも暖かいシャワーとも電波ともおさらばの一週間が始まる。DNAに刷り込まれた野生の感覚が研ぎ澄まされてくる予感

...

と思ったら、早速ウランバートルの交通渋滞に突入。さっぱり動かず、このメンツなら走った方が早いのでは、という状況がしばらく続いたが、ようやく都市部を抜けると徐々に風景がのどかになっていった。家畜を載せたトラックにも遭遇。

この後さらに進むと家畜が道を塞いだり、車にはねられた家畜を見かけたりとワイルドな環境に。

にわか雨の後にかかった虹が美しかった。

ようやく目的地のバヤンゴビに到着。最初4時間と聞いていた移動時間は休憩も含めると6時間ほどになり、 到着は18時を回っていた。

いよいよ風呂無しトイレ無しの生活の始まりだーと意気込んでバスを降りたら、なんと普通に水洗トイレにシャワーまであるという。あてがわれたゲルにはベッドもタオルまで備え付き。電気もつくしコンセントまでさせるという。

夕飯はレストラン専用ゲルでビュッフェスタイル。しかも200円くらいで瓶ビールまで手に入る。

明日のレース初日はここでもう一泊するそうで、お風呂もビールもあるんだとか。サハラマラソンのノリで来たら、ここはもう天国じゃないかと。

結局お風呂は面倒なんで入らず、ご飯が終わったら早々と休むことに。ゲルの外ではゴビ砂漠観光に来ている韓国人の若者グループが、楽しそうに語り合っている声が。羨ましいけど少しうるさいなあとウトウトしていたら、突然どんがらがっしゃんと雷が落ち凄まじい豪雨に。宴会はお開きに。ゲルの中でポタポタと音がするけど、電気をつけるのが面倒で気にせず夢の中へ。

さて、明日からはいよいよレースが始まりだ。

#グレートモンゴリアデザートマラソン2019 #ゴビ砂漠

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