20220107_情熱に形を

サニがプリマジスタになってから1ヶ月とちょっと。
新年になって早々に、新たなイベントが開催されることになった。

「フレアエレメンツコーデフェス?」
「そうなのにな~」

珍しくぷにゃを抱えたになとプリズムストーンで出会うやすぐに
イベントのことを教えてくれた。
ぽぽふはと言えば、いつものようにフードで眠っている。

「それってなんなの?」
「私もぷにゃから聞いたばかりで詳しくは知らないのにな~」
「そういう訳で我が説明しよう」

久しぶりに聞いたぷにゃの声。
最初はこのスライムのどこから声が出てるんだろうと思ったが、
たぶん声帯とかないんだろう、よく聞けば着けてるモノクルから
聞こえる気がする。
合成音声って訳でもなさそうだけど。よく分かんない。

「プリマジの基本についてはいつぞや教えたが覚えているかな?
 ワッチャを集めることで、コーデメイツを呼び寄せ、
 気に入ってもらってコーデをもらうと」

プリマジでコーデがもらえるところの話だ。
最初にぷにゃに教えてもらった、気がする。
あの子たちバックダンサーもしてくれるしかわいいよね。

「普通のコーデはそのコーデメイツたちが管理している訳だが、
 特別な力を持つコーデは特別な精霊たちが管理しているのじゃ」

精霊。こういう単語がくると魔法だなーって感じる。
コーデメイツやタントちゃんが精霊ってのは教わったけど。

「特別な力を持つコーデ?」

ここがよく分からない。

「ふむ、そこからか。
 あー、細かくはマナマナの原理の話からになるが、ふむ。
 マナマナはエレメンツに作用して様々な現象を起こすのだが」

おっと難しい話かな。もっと割愛してくれていいよ。

「そのエレメンツの力の象徴とされているのがエレメンツコーデじゃ。
 普通のコーデに比べ、そうじゃのう語弊はあるが、
 ワッチャをより集めやすいコーデとでも思っておけばよい」

あら分かりやすい結論。

「オメガの連中はフェスと称した儀式でエレメンツを解放しようと
 いうつもりなのだろうが。
 最終的にコーデとエレメンツの力は、儀式の功労者に結びつく。
 要は勝てばすごいコーデが手に入るぞ、ということじゃ」
「内容は分からないけど目的はシンプルだ」
「それをゲットしたら、夢に近づくのにな?」
「あぁ、そうじゃ。たまには我もマジになるぞ」
「おぉ、ぷにゃがやる気なのにな~」

普段はになのプリマジにあまり協力的でない気がするぷにゃだが
こういう情報収集などを見るに、やるときはやってくれる性格のようだ。
にな的には十分信頼してるんだろう。
私としては、ぽぽふくらいの軽さと協力加減でも満足満足。

「まぁ世話にはなっている故、サニにも情報を提供したが。
 フェスは個人戦。ライバルとして、それぞれ頑張るように」
「は~いなのにな~
 という訳で、これからしばらくライバルとして振る舞うのにな~」

喋り方はこう間抜けているが、になのプリマジスタとしての実力は
彼女を先輩として見てきた中で知っている。

「よし、こっちだって負けないよぽぽふ!」

言ってはみたが、返事がない。まぁ寝てるよね。

「では本戦で」
「お互い頑張るのにな~」
「うん!」

そして二人は帰っていった。
珍しく本気といった様子だったし、こちらとしても本気で頑張ろう。
やるからには、負けたくない。

………………
…………
……

になの信条は、世界をもっと楽しくできるプリマジ。
今回のフェスは、きっと世界を楽しくできる。
だから、本当はサニと一緒に楽しめるようなイベントだったら
良かったとは思いつつ、今回のフェスに沿った努力をしようと
そう思ってくれるだろう。

サニに対してはちょっと先輩風を吹かせているものの
にな自身プリマジスタ歴数ヶ月の新人だ。
我が説明をぼかしているのもあって
まだまだ分からないことも多いだろう。
何か察しているところもあるかもしれないが。
それでも、楽しむために振る舞う。それがになだ。

なに、最終的な目的は同じだ。
になの努力にはこちらも全力で報いよう。
そのための準備も、うむ、なんとか間に合わせよう。

さあ、つまらない世界を面白くしようじゃないか。

………………
…………
……

フェスの当日はすぐに来た。
特訓、というほどのことができたかは分からないけど。
ぽぽふと共にいつもよりはいろいろと頑張れた気がする。

「あ、久しぶりのサニちゃんなのにな~」

そういって抱き着いてきたにな。

「おはよ、でも一週間くらいじゃないかな」
「久しぶりなものは久しぶりなのにな~」
「調子はどう?」
「ふふふ、ばっちりなのにな~」

相変わらず楽しそうな顔をする。
こちらは、ちょっと緊張してたんだけど。
いい感じにほぐれたかもしれない。

「こっちだってばっちりだよ、負けないからね」
「望むところなのにな~」

フェスは順番にみんながステージを披露して、
最後に集まったワッチャで勝者を決めるというものだ。
ただ運営曰く、コーデの解放に至らなければ
勝者なしというパターンもあるかもしれないとか。
最低限集めなきゃいけないワッチャがある、みたいなことだろうか。

ステージも、いつもの会場に比べて装飾が多いように感じる。
それに、普段はすれ違うだけのプリマジスタが多いのだが
今日はみな順番待ちで控室に詰め込まれている。
この空気感は、なんというか、独特でちょっと苦手かもしれない。
思ったよりバチバチしてるなぁ。

「思ったよりばちばちな空気なのになぁ」
「あ、同じこと思ってた」
「以心伝心なのにな~」

にながいてくれるのは、そういう意味でもありがたい。
みんなはパートナーと話しているが、ぽぽふはやはり眠っている。
これでもさっきまでは頑張って起きてくれていたし、
無理はさせられない。本番までは休んでもらいたい。

「それじゃ、になはそろそろ出番なのにな~」
「結構早いんだね、頑張ってね!」
「もちろんなのにな~」

つい応援してしまった。
わざわざ会わないようにしていたというのに、
直前でこれではライバル失格だろうか。
でもそうしたくなったのだから許してほしい。
になのステージを楽しみたい気持ちも湧いてきて、
ステージ見るため客席に向かうことにした。

………………
…………
……

そのあとはなんていうか、ふわふわしてるうちに過ぎていった。
になのステージは素晴らしかった。
みんなを笑顔にしたいという気持ちが、
たくさん伝わってきた。
になは本来、ダンスとか、運動自体そこまで得意じゃないんだと思う。
それでも精一杯踊り、歌い、楽しさを伝えてきた。
笑顔になれた。今日のステージで、なによりも。

私のステージは、まぁ、いつもよりは良かっただろう。
うん。結局は、それだけだ。

これから結果発表が始まる。
見るまでもないが、行かなくちゃ。
友人を全力で称えよう。
だから、今の気持ちはどうか、まだ漏れないで。

………………
…………
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