20220316_スタイリッシュむらさき

「ミックスコーデコンテスト?」
「うん、サニちゃんも出たらいいのにな~」

 ある休み時間。
 になが持ってきたパンフレットには、ミックスコーデコンテスト開催とでかでかと書かれていた。

「へー、新しく始まる催しねぇ。なになに……」

 定期的に発表されるテーマに沿ってコーデを選び、
 その組み合わせやライブの良さで生じるワッチャを競うイベント。

「で、初回はスタイリッシュで紫なコーデ、と。
 紫色のコーデってそんなにあったっけ?」
「最近増えたのにな~」
「そうなんだ。うん、楽しそうだしやってみようかな」
「そうこなくっちゃなのにな~」

………
……

 という訳で、早速コンテスト当日。
 他のプリマジスタたちと直接競うイベントはフレアエレメンツフェス以来だろうか。
 あの時はになの熱意に負けてしまった。
 でも今日はテーマのある戦い、答えはまだ見つからなくても勝ちに行ける、行くんだ。

「あ、サニちゃんやっと来たのにな~」
「おはよーにな。そっちは予選早かったんだっけ、どうだった?」
「ふふふー、準決勝で待ってるのにな~」
「お、勝ったんだね。おめでと」
「サニちゃんも頑張るのにな~」

 になに見送られながら、私もプリマジの準備に向かった。
 思えばタントちゃんにちやほやされるこの空間ってなんなんだろ。
 そう思っているうちにメイクとコーデチェンジも終わり、
 予選を戦うプリマジスタたちと一緒にステージへと向かっていく。

 初めて見る娘もいれば、雑誌で見たことある娘もいるような。
 でも、私だって今やみつぼしプリマジスタだ。負けないぞ。

………
……

と、なんやかんやで。

「サニちゃんおめでとうなのにな~」

 予選を無事通過し、準決勝でになと競うことになった私であった。

「なんていうか、思ったより皆コーデよりもライブ重視なのかなって感じだね」
「でも残った子たちはコーデもライブもがちがちなのにな~」
「そうだねぇ。心なしか、髪も紫系の娘が多いような」
「元々紫やスタイリッシュなのが好きな人たちは気合い入ってるのにな~」

 両方の属性を持っているコーデをしっかり選んでる子もいれば、私たちのようにスタイリッシュさか色か、どちらかを中心にしたコーデで固めている子も多い。
 になと私とではコーデの評価は五分五分だろう。
 でもキャラとしてのスタイリッシュさなら私に分があるはず。
 今回は勝つぞー!

………
……

 で、なんやかんやで。

「いや~、負けちゃったのにな~」
「よしっ!」
「サニちゃんおめでとうなのにな~決勝も頑張るのにな~」

 勝利の余韻に浸ってはいるものの、まだ準決勝。
 せっかくになに勝ったんだ、目指すはこのまま優勝といきたい。
 決勝戦の相手を確認しようと他のステージに向かおうとしたところで。

「あなたがサニちゃん、だったよね?」

 急に呼びとめられる。

「えっ、そうですけど」

 振り返ると、そこには黒髪に紫色を差したポニーテールの女の子。
 私も大きな方だけど、この娘も同じくらいの身長だろうか。
 それに、はてどっかで見たような?

「あ、さっき準決勝で勝ってた娘なのにな~」

 あぁそうだそうだ。
 つまり、決勝で当たると。

「うん。私は斑咲(むらさき)」

 今回のテーマにして名前が強すぎない?

「サニちゃんのことは、フレアエレメンツフェスの時に見かけて気になってたんだ。
 決勝では負けないから、よろしくね」
「こちらこそよろしく。でも、あの時勝ったのはこっちのにななんだけど」
「えぇ分かってるわ。あのフェスの時に会場を熱くさせたのは、間違いなくになちゃんだった」

 改めて刺さないで欲しいんだけど。
 あの時の敗因は、自分でもわかってるつもり、ではあるけど。
 まだその先が見えていない

「でも私を熱くさせたのはサニちゃんのプリマジだった」

 まっすぐこちらを見据えてくる赤い瞳。
 力強いまなざしは、本当に私に向けられているのだろうか。

「直接競える場は次のフェスになるかと思ってたけど、こんなところで会えるとはね」
「そっか。うん、私だってここでは勝つぞって気持ちで来たんだから、負けないよ」

 挨拶というよりは宣戦布告って感じだけど、爽やかな力強さは心地よい。
 私たちは握手をして、それぞれに決勝の舞台へと向かった。

………
……

 で、結果はと言えば。

「負けたー!!」

 むらさきちゃんのライブはすごかった。
 コーデと本人のスタイリッシュさに加えて、ライブも力強くて。
 くぅ、勝ちたかったのになぁ。

「いい勝負だったよサニちゃん。ま、勝ったのは私だけどね!」
「つ、次は負けないから!」
「こっちだって。次こそフェスかな」

「おーいむらさきー、そろそろ帰るぞー」
「お、あさぎー今行くー!
 そんじゃお迎えも来たし私帰るね。サニちゃんもになちゃんもまたね」

 お父さんだろうか、呼ばれてむらさきは走っていく。
 軽く手を振りあっているうちに人ごみの向こうへ消えていった。

「嵐みたいな娘だったのにな」
「だねぇ。でも実力は確か。うぅ、ライバルが増えていく……」
「そういうものなのにな~日々これ精進なのにな~」

 私たちは精進を重ねる為、反省会をしようと併設のカフェへと向かった。
 次までには、きっと。私だけのプリマジを見つけたいな。

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