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負け犬アオーン
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「私の人生こんなもんですよ」
短期バイト先で出会ったおばさんはため息みたいに呟いた。
めちゃくちゃ前のことなのに、なんか、全てを思い出せる。
ただただプラスチックの箱に寿司を詰めていく仕事をしながら、私は聞こえなかったふりをして手を動かし続けた。
私は年末だけの短期バイトだけど、おばさんは来月も、もしかしたら来年も、一日8時間くらい寿司を詰めてるんだろう。
そう思ったら何も言えなかった。
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お昼休憩が終わるたびにタバコの匂いをさせて戻ってくるおばさん。
私たちの時給より高いお寿司のパックは飛ぶように売れた。
繰り返し流れる店のテーマソングは明るくて、スピーカーは私たちの方を向いていなかった。
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私の人生もこんなもんかな。
日々の繰り返しの中で、休日はイオンモールで、楽しみは寝る前のハイボールで。
そんなもんかな。
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このゲームの攻略法はわかったし、もうつまんないし、飽きたし、結末はどうやらクソっぽい。
なのにまだゲームの電源を切れずにいるのは、別のルートがあるってどこかで信じちゃってるから。
そんでもってそのルートを見つけ出して、攻略したいから。
みんなはこのゲームを辞め始めてる。
中古で二百円のクソゲーム。
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私はこの狭い部屋でいつまでゲームしていられるかな。
私に向けられたスピーカーからは今日もバラードがかかってる。
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