見出し画像

「阿部チェリーと誕生日」

早撃ちビリーは、凄かったよ。


あまりにも速いピストル捌きで、ことごとくワンダーピープルの奴等は、倒れていったんだ。

みんな、足の小指を撃たれてよ。


そうだ。

キャンディ弾だ。


それでも、キリがないくらいワンダーピープルの奴等は、何人も赤いヘリから降下して来たけどよ、ビリーの早撃ちは、ますます精度を上げて、キャンディ弾が雨のように降り注いだよ。

とても、甘い匂いがしたよ。


俺はアイシー少年を抱いて、落とし穴から抜け出して、ただ、ビリーの早撃ちを見てたよ。


ひと仕切り、ビリーは撃ち終わって、俺達の方に、歩み寄って来たよ。


阿部チェリーか?

アイシーをありがとうな。

アイシーは、大きくなったな。

そして、誕生日おめでとう!


ビリーは、長い髪を掻きながら、照れくさそうにアイシー少年を見てたよ。


アイシー少年も、同じだった。


照れくさそうな表情で、言ったよ。


僕、今日が誕生日なの?


ってな。


アイシー少年は、自分の誕生日が、いつなのか知らなかったんだ。


ビリーは、優しくアイシー少年を高く抱き上げて、大きな声で言ったんだ。


ハッピーバースデー!アイシー!

君は、本当に強い13歳だ!


その声は、辺り一面に響いたよ。何とも言えない力強い包容力のある声だったから、俺も何だか温かくて優しい気持ちになったんだ。

阿部チェリー、君には数えきれないくらい助けられた。サマー、真紀子ちゃん、アイシー。

そして、エリー。

あと、エリーの巻き添いになった、さきどり佐知子さんもだ。

本当にありがとうな。


ビリーは、そう言って、その場を去ろうとしたんだ。


どこに行く気だ?


俺は、咄嗟に聞いたよ。

ここから先は

828字

¥ 100