見出し画像

「阿部チェリーの新しい目標」

アイシー少年は、キャンディ弾を撃ったんだ。

弟のおでこ目がけて正確に。

撃たれた弟のモーリスは、一瞬ふらっとして倒れそうになった。

その瞬間、俺は素早くモーリスを抱きしめて走ったんだ。

しっかり眠ってた。


周りのワンダーピープルの大人達が、追いかけて来たけどよ、訓練されてるタイプの大人じゃなかったから、すぐに振り切れたよ。


アイシー少年も俺について来てた。

その時、非常ベルが鳴ったんだ。


そしたら、わんさか出て来たよ。ワンダーピープルの訓練されてるタイプの奴等が。

俺は、アイシー少年にモーリスを預けて言ったんだ。ここは何とかする。


弟をしっかり抱きしめて逃げろ!


アイシー少年は、泣きながら弟のモーリスを抱きしめて走って行った。


そして、俺は覚悟を決めたんだ。


アイシー少年と弟のモーリスの為に、ここで力尽きようってな。


ひたすらに、ただひたすらに。

ブーメランを投げ続けた。


ワンダーピープルの一般の人達や子供達は、非常ベルによって、教会に避難していたから、心おきなくブーメランを投げまくったよ。


でも、すぐに限界が来たよ。


もう、身体のどこにも力が入らなかった。


仕方ない、ここまでだ。


俺は、最後の力でブーメランをひと振りして倒れてしまったんだ。

なんか気持ち良かったよ。


自分の実力を出し尽くしたし、アイシー少年と弟のモーリスは逃げ切れたしな。


そしたら、ワンダーピープルの奴等も、どこかへ消えて行ったんだ。


俺が、もう動けないのを確認してよ。

ただ、心残りだった。

あの子供達は、本当にここに居ていいのか。

本当なら、親が居て、温かいご飯があってテーブルを家族で囲んだりしている年頃なのに。

多分、何らかの悲しい出来事で、親も居なくて兄弟とも離ればなれで、ここに居るんだ。


ここの大人達は、優しそうな人達だった。


ここに居れば、温かいご飯や、みんなと過ごす平和な時間もあるんだろう。

ここから先は

1,062字

¥ 100