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「それはミカちゃん」第1話 リュックサック

女の子だったら、ミカ。

上から読んでも下から読んでも、カミデミカ。

お父さんは、小さい頃、よくそう言っていた。


今は、実家を縦横無尽に掃除してくれるルンバに、ミカちゃんと名づけている。


上の兄ふたりが男の子だったので、久しぶりにお母さんの妊娠が分かった時、両親とも女の子が産まれて来ると確信したそうだ。


男の子用の兄のお下がりじゃなく、赤ちゃん用から幼児用まで全て、女の子用を買い揃えていたらしい。


僕が僕を記憶しているのは、2歳の終わりくらいからだ。

保育所で使う、コップやスプーン、お弁当箱は全てキャンディキャンディだった。

ピンク色に包まれた、その食器類を僕は違和感なく使っていた。周りの男の子達がブルーや、ホワイトの食器類で、そこには決まってヒーロー達がポーズを取っている物だったのをよく覚えている。


ピアノも、その頃から始め、髪の毛もたまに括っていたりしていた幼児期だった。

小学3年生の頃に、お母さんの口紅を塗って学校に行ったり、顔の産毛を綺麗に剃ったりしていたのを、たまに帰ってくるお父さんは、興味津々に僕を見ていた。

しかし、ラグビースクールや、ソフトボールチームに入る事によって、僕は逞しい男の子になって行った。


ミカちゃんな部分は、その頃にあっさり消えてしまった。


と言うわけでは無く、ミカちゃんは確実に僕の中で存在している。

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