分娩の保険適用 現行制度での課題

 さて、あと勢いで分娩費用を保険適用にした場合に、現行制度で課題となると思われる点、を挙げてみるね。

1)助産院廃止
 助産院と助産師は保険診療ができないので、自費でやるしか無い。妊婦さんが保険適用を選んだら助産院は成り立たなくなります。
 これについては流石に助産師会が手をこまねいているとは思えないので、何らかの形で助産院が保険診療できるようにすると思っています。 柔道整復師のように医師の同意書があれば助産院でも保険診療が可能というシステム・・・は絶対やらない気がするけど。。。

2)3割負担
 保険診療は当然ですが3割が自己負担になります。保険適用になった場合、保険請求分が60万円なら18万が自己負担です。個人的にはこの部分には地方自治体の助成が追加されるのではないかと思ってますが、誰か情報ないですかあ?
 出産一時金は保険適用と同時に廃止だろうと思います。単純に、保険適用の7割+一時金も一緒に支出、は保険側の財政に大きな負担になるからです。現在の一時金分(今は50万円)をそのまま保険適用の7割部分にスライドさせるなら保険側も(渋々でも)OKするんじゃないかなと。

3)高額療養制度
 自己負担分が大きい場合は高額療養制度があります(縮小されそうだけど)。高額療養制度を使った上で、圧縮した自己負担分を自治体からの給付金で賄う、というのはありそう。 ただ、高額療養制度は収入で負担上限が分けられるので、もう出産の時点で所得による差が生じることになりますね。その後もご存じのように所得制限がついて回るので、うっかり稼ぐと産むときから所得による不利益を感じることになるかもしれません。。。

4)個室
 個室料金については選定療養費の仕組みがあります。ただ、保険で運用する場合、個室病床数は施設の全病床数の50%以下、というルールがあるので、例えば全室個室で産科オンリーでやっている施設は、半分が個室料金を設定できないことになります。これはウチは改装時に厚生局から指導されたので間違いないです。大きい病院は他の病棟の多床室を使って相殺できるでしょうけど。
 そしてこの個室料金(差額ベッド代と同じ)は患者の同意が無ければ請求できません。しばしば話題になりますが、病院都合での個室使用では個室分の特別料金は患者の同意無しに請求できないので、これも経営に影響してくると思います。

5)妊婦健診  妊婦健診も保険診療となった場合、特に超音波の扱いがどうなるか、あるいはNIPTや超音波胎児スクリーニングも保険診療になるのか、この辺はまだ全然アナウンスが無くて分かりません。保険診療で妊婦健診をした場合、原則として自費診療は同時に出来ません(混合診療の禁止)ので、これまで施設独自に追加していた検査なども出来なくなる可能性があります。
 また、現在超音波検査の助成は3回ぐらいが自治体の助成対象ですが、同様に妊娠中の超音波検査は3回程度となれば、毎回超音波を見てもらえる!というのは出来なくなる可能性があります。まあ、海外では毎回超音波を見てる国は少ないので(ていうか日本以外では知らない)、ある意味世界標準に近づくとも言えますが・・・。
 保険適用になれば妊婦健診も3割負担は必要になりますので、支払が必要になる可能性も。ここも自治体が出す形になるかなあと思いますが。。。

6)医療費の増大  当然ですが、これまで自費だったものが保険適用になれば、その分医療費は増加します。個人的には医療費増加は避けたいから分娩の保険適用はしないかな、とかつては思っていたぐらいです(むしろ産科型の混合診療を他科に拡大していくんじゃないかと思ってました)。
 医療費が増加すればまたそれをどこかか誰かが負担しなくてはなりません。それが国民各自のさらなる負担増に繋がる可能性があります。 まあ、少子化がドンドン進行すれば総額はそれほど大きくならずに済むかもしれませんが、それどこが少子化対策なんですかね・・・

 ざっと挙げてみました。まだまだ他にもありそうですが、「こんな所はどうなるの?」があったらまた教えて下さい。

7)無痛分娩
 結構話題なので追加。
 おそらく通常の分娩費用には含まれないと思います。そもそも無痛分娩に対応する人員が足りなさすぎて分娩費に入っても対応できないですが・・・。
 で、SNSでも話題になったのですが、無痛分娩については
 1,選定療養費
 2、先進医療
のどちらかの枠組みを利用して設定するのでは、という意見でした。どちらも自己負担なので保険ではカバーされませんけども・・・

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