(再録)甲虫の「同性愛」行動

ホームページに書いていた日記(2008年11月5日)。今も、全く同じ考え。
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準備が大変だった研究会の発表もようやく終わり、一つの山は越えた感じ。でも、来月まで、講演やらフォーラムでの発表やらがあって、まだまだホッとはできなそう。まぁ、しかし、そうやって招いてもらえるということは、必要とされているということだし、自分の考えを人に伝えるいい機会なんだよね。感謝感謝。

ところで、ネットでニュースチェックをしていたら、「甲虫の同性愛行為」についてのニュース記事を発見。これ、すごくおかしい。この記事によると、コクヌストモドキという甲虫には「同性愛行為」が見られることが以前からわかっていたのだが、「その理由については、進化の観点から見て説明のつかない謎として残されていた。進化の理論に基づけば、オスはメスとの生殖行為にエネルギーを集中するはずだからだ 」という。

だいたい、ここでいうところの、「生殖行為にエネルギーを集中するはず」という前提が間違っていると考えればシンプルな現象なのではないかと思うのだが…。「生殖」と僕らが見なしている行動は、本当に、そのように合目的なものとしておこなわれているのか? いろんな行動の一部が、結果として、生殖になるだけではないのか? もちろん、生殖につながる行為があったものが残っていくのだろうが、それは目的としてあるのではなく、あくまで結果に過ぎないのではないか。

結局、この「同性愛行為」と呼ばれているものも、いかに「生殖」に貢献しうるのか、という視点で分析されている。そして、次のような「理由」が発見されている。あるオスの甲虫が別のオスの甲虫の体に精液をかける→精液をかけられたオスがメスと交尾をする→メスは、最初の精液をかけたオスの精液で受精する(必ずなのか、そういうケースがあるのか、このニュースからは不明)→結果として、最初にオスに精液をかけたオスは、直接交尾しなくても受精させることができる。

いやはや…では、かけられた側が精液をかけられることの意味は?(笑) さらにおもしろいのは、他の動物等でもみられる同性愛行為を含めてのいろいろな仮説。「メスとの交尾の前にできるだけ練習を積んでおくため、劣化した古い精子を事前に排出しておくため、ほかのオスに対して社会的に優位であることを誇示するため」。

最初の二つは特に笑える。練習って…(笑)。また、劣化した古い精子を排出しておくって…じゃあ、必ず「異性愛行為」の前にはそれがおこなわれるのかいな。また、その行為が「優位を誇示する」という役割を果たすことがあるとするなら、どうして「異性愛行為」にその役割がないと言えるのか? 「異性愛行為」は生殖を「目的」としてあって、それは疑う余地がなく、そうではない「同性愛行為」は理由をさがさないと納得できない、というところから始まっている以上、これからも「謎」のままであり続けるのだろう。

こういう仮説と検証を大真面目にやっているなんて、なんだかパロディー漫画か何かを見てる気分。

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