(再録)虹色の音楽祭
2008年、琉球新報の「落ち穂」で連載していた頃に書いた文章。
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七月最後の日曜日、東京都新宿区の区民ホールで、「プレリュード」という名の音楽祭が開催された。参加したのは、合唱団が三団体、吹奏楽団が四団体、弦楽団が一団体で、出演者数約200人、観客は約370人だった。
一見、どこにでもよくあるアマチュアの音楽祭だが、この音楽祭には、一つ大きな特徴がある。それは、参加団体がすべて、ゲイのみ、あるいはゲイを中心とした性的少数者で構成されているという点だ(一部、性的少数者ではない人が数人程度参加している団もある)。
この音楽祭は、「東京レズビアン&ゲイパレード(昨年、東京プライドパレードと改名)」の事前イベントとして二年間に始まった。今年は、パレードが中止となったため、単独での開催であったが、性的少数者のコミュニティを活性化し、力づけるという目的に変わりはない。
どの団体も日頃から練習をおこない、定期演奏会を開いており、古い団は、結成17年にもなる。この音楽祭は、東京およびその近辺で継続的に活動している団体だけに参加が呼びかけられているが、他の大都市にも同様な団体がいくつもある。
このような話を初めて知る人の中には、「どうして、音楽をするのに、ゲイや性的少数者だけで集まるの?」という疑問を抱くかもしれない。そのような疑問を抱いたなら、日々の生活のあらゆる場面で、いかに、異性愛であること、出生時の性別と性自認が一致していることが前提となっているかに気づいて欲しい。そんな社会で、自分を「ごまかしている」と感じる当事者は少なくない。しかし、このような団体でなら、そういう思いを抱かずに、自分のやりたい音楽を思う存分楽しむことができるのだ。
だからこそ、この音楽祭の演奏は、元気をもらえるものばかりだ。そして何より質が高い。特に、最後の合同演奏、フルオーケストラと合唱によるハレルヤは、晴れやかで、自信に満ちた迫力あるすばらしいものだった。その演奏から、「今の自分でよかった」と歌い奏でる思いを受け取ったのは僕だけではないだろう。
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