マニキュアがんばって塗ってる女の子

剥がれかかった夏っぽい色を除光液で一本ずつ落としていく。鼻をつんとつく匂いが部屋にみちていく。今年の夏に2人で出かけた男は5人、片手の指の数と同じ。片方は丁寧に色を落とせたのに、もう片方は少し力が入って雑になってしまった。イマイチな男の思い出を消し去りたい力のせいで。

さてこれから秋だけど何色にしようか。秋だから茶系というのも地味で芸がないし、いっそのこと真っ黒にしようか。ハロウィンに降り立つ魔女として降臨して魔法をかけまくってやる。私しか見えなくなるような魔法をね。そんなことを考えて塗り重ねたマニキュアはいつもより深い色をたたえたように見えた。秋が始まる。


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