雪と指先

雪が降っていた。確かに寒いけれども空からではなく、隣でつり革を握っている人の親指と薬指に。白く細長い指先は親指から黒、パール、ゴールド、黒、パールと三色に彩られていて、黒い背景に雪の結晶が2つか3つ描かれていたのだ。
分厚いダウンに、飾り気のないマフラーで身を固めたその女性はとても寒がりのよう。でもネイリストには雪を指二本分オーダーしたのだ。雪が降ってほしいのか、雪に思い出があるのか、単に勧められるまま描いたのか、分からないまま電車はカタンコトンと朝の寒空を駆けていく。

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