令和5年3月場所9日目雑感
■翠富士9連勝、宇良ではまだ役不足だったか
翠富士が9連勝。誰がこの翠富士を止められるのか。ここは興味深くなってきた。
相当に充実していると言っていいだろうし、すでに波に乗っている。強い弱い関係なく、やりづらい相手といっていいだろう宇良でも、やはり翠富士を止めるのには役不足だったか。
翠富士といえば肩透かしのイメージが定着しているが、武器を持っているのは大きな強みだろう。特に相手が警戒していても決められることができる得意技は相手に警戒感を与える。だからこそ、それを恐れた相手が逆をつかれて攻め込まれる。この日の宇良も、何かそれを恐れて前に出る威力が不足していた。そんな印象を受ける。
■不調の玉鷲相手に自分の相撲を取り切った大栄翔
この日も大栄翔が非の付け所のない相撲で完勝。玉鷲は一方的に押し込んでくるタイプ。押しの質は違うが、前に押して、突いて出るという点については、同じタイプの力士。その両者でここまで好不調の差が大きければ大栄翔の一方的にな相撲になるのは結果論ではあるが必然といえるか。いよいよ10日目は豊昇龍戦。厄介ない相手だろうが、大栄翔が自分の立ち合いができるかどうか。勝負はここのだろう。そもそも大栄翔はツボにはまればだれにでも勝てるだけの突き押しを持っている。豊昇龍の動きに惑わされることなく、豊昇龍を狙い通り突けるか。楽しみな一番だ。
■予想以上に強かった琴ノ若
星も上がっているし力を蓄えてきているのが分かる琴ノ若だが、さすがに今場所の正代相手では苦しくなるのではないかと見ていたがそんなことはなかった。正代は琴ノ若を攻めきれず、土俵際で粘った琴ノ若が反撃に移ると一気に正代を土俵の外に押し倒した。正代の前に出る圧力が伝わり切れず押し切れなかったことが要因なのだろうが、琴ノ若の相手の力をもろに受けない、かわせるところ。この強みが生きた一番だ。
■優勝候補はかなり絞られていると言えるか
優勝ラインは案外、2敗以内で留まるかもしれない。3敗まで下がったとしても、現時点での3敗力士がここから6連勝できるかと問われれば、なかなか難しいようにも感じる。翠富士は10日目に小結の翔猿戦が組まれ、ここから役力士と対戦していくのだろうが、今の翠富士が崩れるようにも見えない。さすがにいくら大関以上不在とはいえ、全役力士に勝っていくとも思えないのだが、大栄翔も1敗でついているし、翠富士ー大栄翔の取組は残されている。役力士は役力士で地力の高い相手との対戦が組まれていく。そう考えると、たとえ優勝ラインが3敗まで下がったとしても、今の時点で2敗以内の力士から優勝は出るのではないか。そんな見方をしている。不気味なのは遠藤か。気づけば2敗でついている。
■関脇に求めても酷な部分はあるが
いくら大関以上が不在とはいえ、若隆景もかなり復調している。3関脇はやはり小結以下とは少し力が違うところを見せつけだしている。関脇力士に今場所の番付最上位者だからという理由で、横綱や大関のような働きを求めるのは酷だが、平幕優勝が出るにせよ、こことの対戦は求めたいし、3関脇はすべて相互に対戦していかねばならないだろう。漁夫の利が出ないような割の組み方をしていかねばならない。まだ割を組むという点でも5日残されている。3敗以内の平幕力士をどう直接対戦させていくか。好成績を残せる人を選抜する、脱落者を作っていき、絞り込んでいく必要はあろう。ただでさえ、翠富士、遠藤、高安と2敗以内がいるのだから。所詮、最高位が関脇なのだから、もう誰が誰と戦ってはいいじゃん。とはならないでほしい。関脇に求めるのは酷とはいえ、一番上にいる人たちが務められるものはあるはずだし、3関脇はやはり力は持っているのだから。