令和5年3月場所11日目雑感

11日目、遂に翠富士に土がついた。大栄翔は2敗を守ったが、2敗は大栄翔1人。そして3敗で豊昇龍、霧馬山、若元春、琴ノ若、遠藤、千代翔馬が追う展開となった。

■力の差を見せた若元春
翠富士に力を出させず、巧い相撲で若元春が翠富士を押し倒した。翠富士は立ち合いで劣勢になり、肩透かしを見せるが不発。それが引いた形のようにもなり、そのまま若元春に攻め込まれた。若元春が役力士としての力の差を見せたようにも感じる一番だったし、若元春がここでここまで10連勝と好調の力士を止められるだけの力士になっていたとも感じる一番だった。翠富士の肩透かしはどの力士も計算に入れて戦っているだろう。だが、食ってしまう。そこに翠富士の凄さがあるわけだが、それを決められなかったこと。これが明日以降の相撲に影響しないことを期待したい。もちろん、得意手であるのだから、たとえ敗れても決められるときはそれで決めにかかりに行きはするだろうが。

■攻めきれなかった高安と余裕があったか大栄翔
高安が攻め込んだが、土俵際で粘れた大栄翔が反撃に転じ、高安を押し出した。高安の攻める威力が場所前半に比べると落ちているようにも感じられた。強い高安なら、土俵際で踏ん張る大栄翔をそのまま一気に持っていけたのではないかと感じる取組。大栄翔は下がるも、土俵がどこまであるかをしっかりと認識して、攻め込まれるも焦ることなく反撃に転じられたようにも思えた。反撃に転じてからは、大栄翔の良い攻めだ。狙い通りに高安を狙って突いていく。これで2敗を守り、翠富士が敗れたため再び1差。チャンスが再度訪れてきた。

■勿体なかった琴ノ若と遠藤
琴ノ若は土俵際で北勝富士に引き落とされた。ちょっと安易に攻めすぎたか。なにかもう少し落ち着いていてれば、簡単に土俵際で落とされることもなかったようにも感じるのだが。それにしても北勝富士、4連敗7連勝だ。4日目を終えたときに北勝富士に衰えを感じて残念といったことを書いたが、まだ一番良いときの北勝富士らしさは感じられないものの、これは撤回せねばならない。遠藤は立ち合い合わなかったのか、それとも中途半端な横に動く立ち合いをしようとしたのか、なにかしっくりしない取組になってしまった。結果的には立ち合いから逃げるような立ち合いになってしまい、そのまま豊昇龍につかまりぶん投げられた。これも勿体ない一番と感じたし、感情としては私自身の遠藤の好きではない部分が見えた相撲だった。巧いのだが、何か時折、言い方は悪いがせこいことをしようとするところ。それが垣間見えたように感じたのだが。それで遠藤のペースにはまればまだいいのだが、やはりそれで敗れると何しているんだか、になってしまう。やはり勿体ない。

■3敗の役力士は役目を果たしている
4敗力士にもチャンスはあるだろうが、3敗までが優勝圏内と言ってよいようには思う。そこに2敗の大栄翔、3敗の霧馬山、豊昇龍、若元春、琴ノ若と5人の役力士が含まれている。横綱・大関がいないのだから、役力士がある程度勝って当然ともいえる中、7人中5人がこの圏内。大関未満の力士たちなのだから、これは大健闘だろう。毎場所、このような条件下なら12勝出来ているというのであれば、彼らは大関になれている。関脇、小結の力士としては十分に役目を果たしていると言えよう。翠富士との対戦が残されている力士も当然いるし、翠富士はこの力士たちとの対戦が組まれていくだろう(12日目の対戦相手が若隆景になったのはまるで理解できないが)。役力士同士の対戦も組まれていく。ここからが本当に優勝争いが激しくなっていくところか。

■地力があって星を伸ばす力士と調子の良さ、勢いにのって星を伸ばす力士
地力があるから勝てる。調子よくて勢いに乗っているから勝てる。どちらもあるだろう。今場所で言えば、役力士はほぼ前者に該当し、翠富士は後者に該当しよう。強い相撲を取ってはいるが、まだ翠富士の地力が役力士のレベルに相当しているとは思えない。連勝はしているが、この日の若元春、10日目の翔猿以外での番付最上位の対戦相手は4枚目の阿武咲だった。「だから勝てていた」と言いかえることも出来なくはない。平幕中下位の力士が中盤から終盤にかけて好調で、終盤上位と対戦し星を落としていくケースは珍しい話ではない。そしてそこでも勝てた力士が平幕優勝を掴んでいく。翠富士がどちらになるかわからないが、少なくとも上位勢とは違う相手と戦いながらの連勝だった。こうもなるとやはり優勝候補筆頭は大栄翔のようには感じているのだが、果たしてどうなるのだろうか。ここから、特に3敗以内の力士同士の対戦は目が離せない、そんな終盤戦になりそうだ。

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